番外編・初の快挙の主役たち!インカレまで走り切った3クルー

1999.01.01
○女子舵手なしペア

エースの成長と信頼でつかんだ勝利!/川野真由美(営4) 山口一穂(政経3)

 

 本学女子部で、最初に決勝レースへ臨んだ女子舵手なしペアクルー。「スタートは出られたけど、自分は冷静だった」(川野)とクルーに集中することで、出だし以降2位との差を縮められることなく、トップでゴールラインを切った。一本大きく強く――それだけを徹底的に意識しつかんだ勝利。彼女たちの圧倒的な勝利は、女子部の総合優勝に向かっていい流れを作りだした。

 粘って粘って、1250mあたりで一気に引き離す作戦だった。「後ろからの『ついていくから大丈夫!』っていう声で、こいつのために負けられないと思った」(川野)。「川野さんについていけば、優勝できるって確信してた」(山口)。この最高の結果を導いたのは、お互いの確固たる信頼関係だっただろう。
 
 今回インカレ最後の川野が相方に選んだのは、ここ3年間目立った成績を残すことができずにいた山口。それどころか角監督にも「問題児」と言われ、「(山口は)とりあえず過ごしてたし、勝ちにこだわっていなかった」(川野)。そんな中で、これまでお世話になった川野さんについていきたい!という山口からの強い申し出があった。「川野さんとなら優勝できます!」その言葉にやってみようとクルーを結成。岐阜での厳しい合宿などを経て、技術的にはもちろん、人間的にも成長してきた山口の様子は、川野にも伝わっていた。「前はすぐにキレたりしてたけれど・・・すごい努力もして、本当に変わった」(川野)。レースに向けて強くなっていった2人の信頼。それこそがクルーでの最高のパフォーマンスに繋がったに違いない。

 山口の成長を信じて「勝たせたい!」と強く願った川野と、自分を変えてくれた川野への感謝の気持ちでどんなにきつい時もついていった山口。2人で勝ち取った優勝によって、山口には「これからの明治を引っ張る自信がついた」とエースとしての自覚も芽生えた。クルー結成後、川野が伝えたいと話した『リーダーとしての姿』はしっかりと次の代へも引き継がれたようだ。
 

○女子シングルスカル
自分と、仲間と戦った2000m/中山友紀(文2)

 最後は早大の選手との一騎打ちになることは分かっていた。大会前に練習で行ったレースでは1度負けている相手。しかし、決勝の舞台でその相手をも見事なまでに振り切り、中山はシングルスカルの優勝を収めた。今大会の本学二つ目の優勝、女子の総合優勝をほぼ確実にした価値ある1位だった。
 
 「強い人は何に乗っても強い。このシングルスカルで勝って自信をつけたい」。予選を通過した後、中山はこう言って気を引き締めていた。勝っても負けても自分一人。自分との戦いといえるこの種目で試合に出場した経験が、中山にはあまりなかった。しかも、女子総合優勝を目標にしている以上、一人でその一角を担わなければならない。決勝レースの前日は、夜も寝られなかった。

 そんな中、中山にとって大きかったのが、同期の山本(文2)の存在だった。もともとシングルスカルは山本の得意種目。その山本がインカレには出場せず、不慣れなシングルを漕ぐことに決まったのは中山だったが、「山本はいつも自分のことみたいに応援してくれていた。ありがたかった」。だから、余計に勝ちたかった。

 言葉にしない方が確かに伝わることもある。中山のレースがそうだった。「有重(山本のこと)の分まで絶対勝つから」とは、中山はあえて言わなかった。それでも、中山が1位でゴールした直後から、中山の思いをすべて分かっていたように涙の止まらない山本がいた。艇を降りた中山としっかり抱き合った。
シングルスカル。しかし、中山のレースは一人きりではなかった。

○女子ダブルスカル

最後は笑顔の王様レース/井戸希恵(農4) 財津友美(政経4)

 明治初の総合優勝を決定付けたのは、やはりこのクルーだった。女子舵手なしペア、女子シングルスカルと本学の優勝が続く中、3番手のバトンを受けた彼女たち。否応なくプレッシャーが掛かるこの大一番を約束通りの王様レースで制し、明治に総合優勝をもたらした。

 「明日は楽しいレースがしたいですね」。準決勝を終え、決勝を翌日に控えた井戸はこう言った。4年間の大学生活の集大成、最も大事なレースと言っても過言ではないこのレースを前にして出たこのセリフはまさに自信の表れだろう。以前から何度も口にしていた、インカレでの王様レース。それは他の艇を寄せ付けない漕ぎで大差をつけてゴールすること、ずっと目標にしてきたことだった。彼女がその目標を目標にした時点で2人の優勝は決まっていたのかもしれない。
もう1人の優勝の立役者、財津も忘れてはいけない。井戸とは高校時代からのライバルで、明治に入ってからは4年間お互い助け合い、そして高め合ってきた。それだけに今大会に懸ける思いもひとしおだった。“井戸に勝つ”ということから、“井戸と勝つ”ということに変わった目標は長年の時を経て、ついに大輪の花を咲かせた。

 予選、準決勝と力をセーブしながらの圧勝、それは決勝の舞台でも同じだった。序盤から大きく他大をリードし、そこから1度も他大の艇を前に見ることなくゴール。彼女たちの喜びが爆発した瞬間だった。他の追随を許さないその展開は、まさに王様レース。完璧な内容で優勝をもぎ取った。

 「最高のレースでした」、レース後の2人は口をそろえて言った。大学生活の集大成をぶつけた今大会を完全燃焼で終えることができたようだ。井戸個人ではインカレ3連覇、井戸と財津のコンビで見てもダブルスカル連覇と輝かしい成績を残し、インカレを締めくくった。しかしこのレースがゴールではない。端艇部の、そして自分たちの未来へ新たな一歩を踏み出したのだ。

 笑顔と、うれし涙が交錯したインカレ最終日。優勝クルーは、1年間望み続けた表彰台のてっぺんで、最高の景色を目にしました。その光景を忘れずに胸に刻みつけ、彼女たちはまた新たなスタートを切ります。さらに速く、さらに上へ。次の舞台での彼女たちの活躍に大いに期待したいと思います。