
学生バレー引退インタビュー⑤ 岡本知也
今年度、春季関東大学1部リーグ戦(春リーグ)6位、東日本大学選手権(東日本インカレ)2位、秋リーグ2位、全日本大学選手権(全カレ)ベスト8を収めた明大。主将兼エースとしてチームの大黒柱を務めた岡本知也選手(政経4=五所川原工)に学生バレー引退インタビューを行った。
(この取材は12月26日に電話で行われました)
――引退した今の気持ちを教えてください。
「1年間主将を務めてきた中で、どの大会においても優勝することができなくて悔しい気持ちが一番です。今後もバレーボールをする機会をいただけるということで、次のステージで活躍してこれまで支えてくださった方に恩返しをしたいです」
――大学での4年間を振り返っていかがですか。
「自分たちが入学した頃はコロナでバレーができない、大学になかなか行けない状況があった中で、改めてバレーができる環境に感謝することができました。1、2年はあまり出場機会に恵まれることがない中で、工藤有史先輩(令6政経卒・現VC長野トライデンツ)がケガしたっていう状況もあって出場機会が多くなって。試合に出てプレーして改めてバレーが好きだなって思いましたし、4年間を通して結果に満足できたところはほとんどなかったんですけど、同期が一人も欠けることなく最後まで走り抜けることができたのは自分としてもうれしかったですし、バレーだけじゃなくて人間性も、先輩や後輩であったり、同級生、監督、コーチとの関わりの中で成長できたかなっていうふうに思います」
――同期の存在についてはいかがですか。
「一言で言うと暖かさがあって。苦しい時は同期に相談することも多くありましたし、自分が主将を務めてよく悩むことがあって。そういう時に同期が気遣って声掛けてくれたり、苦しい時だけじゃなくて楽しい時間、勝ってうれしい瞬間だったりとか。プライベートでも寮生活であったり、遊びに行ったりだとか、一緒に過ごした仲間っていうところもあって特別な存在だと思ってます」
――主将としての1年間を振り返っていかがですか。
「自分自身主将をやらせてほしいというところで、3年時に副将を務めた坂本(雄大・政経4=市立尼崎)だったり同期に後押ししてもらった部分も大きいですし。その中で昨年よりも高い成績を収められた大会があったのはうれしいです。目標としていた優勝に届かなかったのは心残りですが、それでも主将を務める中で同期や後輩の支えは非常に感じたと同時に感謝していますし、リーダーシップやコミュニケーションの部分では自分自身成長できた部分は多くあるかなって思いました」
――主将に立候補した理由を教えてください。
「自分が3年生の時の副将の工藤有史さんが後押ししてくれた部分も大きかったんですけど、何より自分自身がこのチームを勝たせたいというか、このチームで勝ちたいっていう気持ちが強く、自分が主将として勝ちたいっていう思いがあったなと思います」
――主将をやっていく上で大変だったことを教えてください。
「意見を出してくれる選手が多くいましたし、一人一人が各都道府県を代表するようなトップレベルの選手たちが集まってるので、それぞれ自分自身のやりたいバレーであったり思いがあって、それを自分にぶつけてくれるのは良かったんですけど、それに対して自分が悩む部分が多くあったところが苦労した部分です。試合に出る、コート内にいるメンバーは4年が少なく、自分1人の時期もあったので自分が引っ張らないとっていう思いが先行して空回りしてしまうこともありました」
――チームメートの意見に対して悩んでいたのは、岡本主将との考え方の違いがあったからなのでしょうか。
「去年の武田大周さん(令6政経卒・現東レアローズ静岡)がつくってくれたミドル中心の速いコンビバレーは軸にしたいところで。それに対してあれこれ言う人はいなかったんですけど、練習メニューを考えていく中でもっとチーム練習を増やした方がいいんじゃないかっていう意見が出て。基礎的なものを大事にしたい自分の思いがあってそういったメニューを組んでいたんですけど、プレーであったり試合勘っていうところを大事にしたい選手もいたので。そこの思いや過程に違いがあったかなって思います」
――どのように折り合いをつけていったのでしょうか。
「ミーティングを通してまず自分たちの課題であったり、強化するポイント、強みを改めて話したりして。その中で自分たちがどういう練習をしていくべきなのかを話したりだとか。一緒にご飯に行ったり話し合う場を設けることでそういった食い違いに対してアプローチしてたなって思います」
――練習メニューを考えるのは岡本主将の他に誰がいたんですか。
「基本的には選手たちで考えていくのは中心にあって。その中でも主将、副将であったりチームの幹部が中心となって考えてました。今年になってから監督とコーチが新しく代わって、メニューや練習内容のところで最初の方は結構意見を出していただいたところはあって、それに対してこれまでと違う練習スタイルになって納得いかない選手たちも出てきて。苦労はしましたが、その辺りは監督とコーチと幹部たちでミーティングの場を設けて話し合うことで、部員たちとスタッフたちの関わり方は良くなったのかなと思います」
――話し合いを軸にしてチーム運営を行っていましたか。
「自分自身『こういうチームにしたいからもっとこうしろ』っていうような、世間一般が思い描くようなリーダーシップは向いてないなって思ったので、自分の性格的なところもあって周りの意見を大事にしたくて、話し合いを重視して取り組みました」
――主将のやりがいや楽しさを感じた瞬間を教えてください。
「シンプルに勝てた時はうれしかったです。自分たちが考えたメニューで練習してきたことが試合で生きてきたり、目に見えるようになってうれしかったです。あとは自分自身の成長で、人間性は成長できたかなって思います」
――主将兼エースのプレッシャーはありましたか。
「キャプテンでエースっていう立ち位置としてやらせてもらったんですけど、これまでは後輩として試合に出ることが多くて、楽しんでやっていけばいいっていうのは強くあって。それは自分としてはプレーしやすい環境だったんですけど、4年になってからは楽しむっていうよりかは、自分自身が引っ張らないといけない、崩れてはいけないっていう思いが先行してしまって、なかなかいいプレーにつながらないことがありました。周りからも期待されていますし、監督からも厳しく言われることもあったんですけど、それでも同期に支えられたり、自分自身なんでバレーをやってきたのかを考えたりして、結果で恩返ししたい、バレーが好きだからっていう気持ちを思い出して、また原点に戻って練習に取り組んだり、試合をして克服することができました」
――武田前主将の存在は大きかったですか。
「武田大周さんは選手としてもキャプテンとしてもやっぱ尊敬できる人でしたし。勝ちたいっていう強い思いが前面に出てて、そういう姿を見て自分たちもついていけましたし。直接アドバイスをいただくとか相談することはなかったんですけど、そういった代々キャプテンをやってきた方々の姿を改めて思い返したりして、自分自身こういう主将になりたいなとか考えるようになりましたし、その時に先輩の姿があったことで、ブレずにやってこれたかなって思います」
――主将としてやり切れましたか。
「自分の意見を大事にするっていうところはできたかなって思うんですけど、それでも思いを伝えられないような、なかなか自分に(意見を)言ってくれないような選手であったり、自分の中で思いを留めてしまう選手たちもいたところが、本音としてはまだまだキャプテンとしてやり切れなかったっていうか、足りなかった部分ではあったのかなって思います。もう少し自分の思いをみんなに、もっと自分がどうしたいんだっていう意見を持たせられた方が、もっといい結果を残せたのかなって考えたりはします」
――東日本インカレと秋リーグで準優勝できた要因は何だと思いますか。
「個人のプレーのレベルが上がったことだと思います。これまでの明治はスタメンが固定化することが多くあったんですけど、今年の明治は監督も『誰が出ても強い明治をつくりたい』っていう思いを持っておられました。いろいろなメンバー構成を試したりして、秋リーグは特にスタメンが固定化されることはあまりなかったですし、その中でも勝ち切れる試合が多くあった、準優勝できたっていうところで今年の明治の強さは個人のレベルの高さ、個人のレベルが成長したことだなと思っています」
――秋リーグは同期とコートインする場面も見られましたが、振り返っていかがですか。
「自分としては心強い。何より一緒にバレーができてうれしい、楽しいっていうところがありました。これまで一緒にコートに立ってプレーする機会は少なかったので、4年間一緒にやってきたメンバーと試合に出て勝った時は本当にうれしかったですし、改めて最高の同期だなって思いました」
――4年間で最も印象に残っている試合を教えてください。
「3年生のときの全日本インカレ準々決勝、順大戦が一番印象に残っています。自分たちの代は1個上の大周さんたちの代と仲が良かったですし、お世話になった部分も多かったので、一緒にコートに立ちたい、勝たせてあげたいっていう思いは強くありました。春に工藤有史さんがケガして試合に出れないことも多くなった中で、自分が有史先輩の分も頑張らないといけないという強い思いのもとで練習してきて。大周さんも苦労して1年間やってきましたし『日本一になりたい』といつも口にしていたので(最後の大会である)全日本インカレには自分も強い気持ちで臨んだんですけど、結果としてはストレートで負けて、自分たちのやりたいことは全然できなかったですし。1個上の代とバレーができないって思った時に、非常に悲しい、悔しい気持ちが強くあったので、4年間を通してその試合が一番印象に残ったかなって思います」
――今年度の全日本インカレの準々決勝は昨年度よりも悔いなく終われましたか。
「悔いがないって言ったら嘘になりますし、自分としてもチームとしても本領発揮できなかったというか、やりたいプレーがあまり出せなかったのは悔しいなと思うんですけど、それでもしっかりできることはやってきましたし、東日本インカレと秋リーグで2位取って全カレこそはっていう思いで臨んでいたので悔しいですけど、主将としてやれることは全てやったのかなって思います」
――明大を選んだ理由を教えてください。
「高校2年の時に全国の選手が集まって合宿をすることがあって、坂本雄大、金田晃太朗(政経4=駿台学園)と同じチームになって、その2人が明治に行くっていうところで自分も一緒にやりたいなって思いました。自分自身、将来の夢がなくて。そういう中で大学を選ぶってなった時に幅広い選択肢を持てる大学に行きたいと思って明治大学を選びました」
――坂本選手、金田選手と一緒にバレーをやりたいと思った理由はありますか。
「プレーで言うと全国でもトップレベルの選手。同じ選手としても尊敬できる部分が多くありましたし、一緒に合宿していく中で話したりもして。会うのは初めてだったんですけど、一緒に話して楽しいなって思ったところに2人の魅力を感じて一緒にバレーしたいなって思いました」
――昨年度の全日本インカレの準々決勝後に3人でお話されている姿が印象的でしたが、お二方の存在は大きかったですか。
「試合終わった直後に3人で『俺らが頑張らないといけないんだ』っていう会話をしました。自分たちが引っ張っていくんだって話して。2人がいたからこそ頑張ってこれたかなと思います」
――人生で一番影響を受けた人を教えてください。
「弟ですかね。同じ時期に一緒にバレーを始めてやってきたんですけど、どのプレーにおいても弟には負けたくないなっていうところはありましたし。振り返ってみると、小学校、中学、高校で一緒にバレーをしてきて弟に対抗心を燃やす場面が多かったっていうところで、弟かなって思います」
――次期主将を務める近藤蘭丸選手(文3=東福岡)の印象を教えてください。
「彼はプレー面で言うとセッターっていうポジションで、チームの中心、司令塔として1、2年からスタメンとして試合に出る機会が多くありましたし、トップレベルのプレーをする選手っていうところで期待はしていますし、何より勝ちたいっていう思いは今年のチームを振り返ってみても彼は強いのかなって思っています。練習していく中でも結構意見は言ってくれますし、思いは伝えられる選手なので自分とは違うリーダーシップを取っていくところで期待してる部分は大きいです」
――次期副将を務める前嶋悠仁選手(法3=日本航空)と吉田竜也選手(政経2=駿台学園)の印象を教えてください。
「彼(前嶋)も強い思いでバレーしていますし、また蘭丸とは違った一面もあるので、話し合ってやってほしいなって思います。竜也は練習しててもあまり喋る方ではないんですけど、駿台出身っていうところでデータを活用したバレー、戦い方などの知識が豊富なので強みを出して、副将として上級生と下級生の架け橋というか、つながる役割っていうところもやってほしいなって思います」
――どのようなチームをつくってほしいですか。
「明治らしいっていうか、遊び心のあるプレーであったり観客を魅了するプレーっていうところは大事にしてほしい思いはあります。攻撃まで持っていくためのファーストボール、ファーストタッチのボールの精度は今年よりももっと高めてくれると思ってるので、明治らしいバレーに期待してます」
――将来の夢は4年間で見つかりましたか。
「バレーを続けたい気持ちはあって、まだ将来的にこうなりたいってところははっきりとは思い浮かんではないんですけど、バレーを通してこれまで支えてくださった方々に結果やプレーで恩返ししていきたいです。Vリーグっていう括りの中ではあるんですけど、トップレベルを目指してプレーしていくっていうところと、自分のプレーを見てバレーをしたいと思う人が現れてくれたらいいなって思います」
――内定先の富士通カワサキレッドスピリッツではどのような立ち位置の選手になりたいですか。
「明るく走り回ってプレーしていきたいところと、自分の得点後のパフォーマンスに注目してほしいなって思います」
――今後の目標を教えてください。
「まずはスタメンで活躍したいっていう思いがもちろんありますし、自分がスタメンでプレーして、Vリーグの東地区で優勝してファイナルで優勝できたらなって思います。自分が生きてきた中でほとんどがバレーだったので、これからもバレーに携わっていけたらなって思います」
――後輩や同期、ファンの方へメッセージをお願いします。
「これまでバレーを続けてこれたのは応援してくれる方々がいたからだと思っていますし、一緒にバレーしてきた先輩や後輩、同期、仲間がいて続けてこれたと思います。これからもそういった方々のおかげだと思ってプレーしていきたいと思います」
――ありがとうございました。
[七海千紗]
岡本選手の富士通カワサキレッドスピリッツ内定インタビューはこちら
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