(4)4年生女子紹介

1999.01.01
 インカレまで走る第4回は、4年生女子の紹介です。
「言いたいことが言えて、ただの仲良しじゃない」(川野)という4年生女子の4人。端艇部を明るく、しかししっかりと引っ張ってきた彼女たちの素顔に迫ります!

井戸希恵(農4)
女子ダブルスカルクルー

 この1年間、主務として端艇部の仕事をこなしてきた井戸。しかし、ボートでも手を抜くことなく練習を重ねてきた。長年付き合ってきたボートに乗る最後の夏、井戸は優勝だけを目指して漕ぐ。

○ゴールラインをスタートラインに○

 昨年の舵手つきペア、今年のダブルスカルと、インカレで2年連続井戸ともに漕ぐこととなった同期の財津(政経4)は、井戸のことを「追い込み上手」と評する。インカレに向けた厳しい練習中も、妥協せず、まじめにボートに打ち込む姿をそばで見てきた。「だからこそ信頼できて、レース中も付いていこうって思える」(財津)と手放しで褒める。

 とにかく、井戸はボートに対して手を抜くことがなかった。女子ボートの強豪・早大を倒したいという思いで明大端艇部に入り、一昨年、昨年とインカレで2度の優勝、さらにこの1年間は主務の仕事も務めた。選手業と、部の活動を取り仕切る主務の兼業は予想以上にハードだった。ここまで大変とは、と苦笑しつつも、井戸はきっぱりと言い切る。「それでも、ボートが手薄になることはなかったです」。

 そんな井戸の今年のインカレでの目標は、ずばり「王様レース」をすること。他大を圧倒する速さで漕ぎ、飛び抜けてゴールする。昨年のインカレで手応えをつかみ、今年も十分な練習を積んできた井戸だからこそ口にできる目標だ。「がぜんやる気。明治全体で笑って終わるために、自分にできることをします」。力強い言葉には、自信がこもっていた。

 卒業後は、幼稚園時代からの夢だった看護師になるため、専門学校に通うつもりだという井戸。ボートには、中学時代から乗ってきた。競技歴が今までの人生の半分。だから、まだボートから離れた自分を想像できないでいる。新しい生活、新しい自分。今までとこれからをつなぐためにも、井戸は本気で最後のインカレに臨む。「大げさだけど、インカレを未来までの架け橋にしたいんです」と笑いながら話した。「ボート人生のゴールであると同時に、これからの人生のスタートっていう感じで。そこで1位だと幸先もいい気がするし」。だから、優勝を狙う。「王様レース」をする。表彰台のてっぺんを、井戸は新しいスタートラインにするつもりだ。

◆井戸希恵 いどきえ 農4 岐阜県立加茂高出 163cm

河津純(文4)

 個性派揃いの端艇部では珍しくおとなしめの印象を受ける河津。しかし、内に秘めた思いは人並みではない。そんな河津の素顔に迫る。

○巻き返しを図るクールビューティー○

 ボートは始めたのは姉の影響だった。ボートを初めて明るくなっていく姉を見て、ボートに興味を持った河津。高校でボート部に入り、そこから彼女のボート人生がスタートする。あまり結果を出すことはできなかった高校時代、その無念を晴らすため明治への入学を決めた。

 同じ部の仲間、特に同期の女子3人は彼女の大学生活を語る上で欠かすことはできない。4人中3人が九州出身ということもあり、お互いの実家に泊まり合うほどの仲の4人。ストレス発散に食べ放題に行くなど、いつもばかばかりしていて女の子っぽくはなかったという。しかし、「同期には恵まれている。いつも4人一緒だった」、そう語る表情は暖かかった。同期を思う気持ちは誰にも負けない河津。毎日の辛い練習に挫けそうになった時も、「話し合える仲間がいたから乗り切れた」。そんなお互いを助け合える「一生の友人」ができたことが彼女の大学生活で得た1番大切なものなのかもしれない。

 そんな河津には、ボート人生でやり残したことがある。それは優勝を経験することだ。そして大学最後、つまり河津にとっては現役最後となる今夏のインカレでも、現段階では出場クルーに選ばれていない。しかし、「過去には1週間前での変更もある。今はそれを狙って頑張っている」と、まだまだ諦めてはいない。いつもはおとなしい河津も今回ばかりはそうはいかないようだ。彼女の姉も国体出場の夢を叶えるため就職内定後もボートに乗り続け、今年ついに出場を決めた。姉と同じように大会出場への闘志はまだ消えていない。「今年のメンバーなら優勝できる」と言った河津、その表彰台には彼女も上っているのだろうか。インカレに向けて巻き返しを図る彼女の夏はこれから始まる。

◆河津純 かわつじゅん 文4 日田高出 159cm

川野真由美(営4)
女子舵手なしペアクルー

 「優勝は前提」。インカレを目前にそう強気に話す川野は今まで私たちに見せていた底抜けに明るい顔とは違う、闘志みなぎる表情だった。最後のインカレでの優勝を通して、後輩たちに残したいものとは…。

○優勝から後輩に伝えたいこと○

 「最近後輩と乗って勝たせてあげられなかったから」。インカレへの意気込みを聞くと、自分のことよりも後輩への思いが次々に口をついて出てきた。昨年のインカレでも一緒に乗ったのは当時の1年生・中山(文2)だった。結果は2位と健闘したものの、川野は「決勝に出て満足じゃなくて、誰でも勝てる!っていうのをみんなに見せたい」とレースに懸ける思いなど、リーダーとしての姿勢を見せることにこだわっている。この明大端艇部の生活も残り1カ月を切った今でも、女子部の今後につながるレースをしたいと熱く語った。

 そんな川野もボートを始めたきっかけは軽い気持ちからだった。中学時代のバスケ部の先輩の「ボートいいよ!」との誘いと試乗会での爽快感。さらにバスケ部で厳しい練習をしてきた経験から、楽に漕げるように見えたボートを「やるしかない!」と思ったという。

 その先輩が早大へ進み、「別の大学で戦いたかった」と明治に進学したが、合宿所でのボート生活は想像以上にきつかった。入学した時に掲げた目標を達成することよりも、日々の生活をこなすのにいっぱいいっぱい。勝てない時期も続き理不尽なことも多くあって、辞めようと思ったこともあった。しかし、「自由になりたいけどやることがないとダメ人間になる」という性格からか、一日一日の練習、一つ一つの試合でメンタル面も鍛え上げられたのだろう。「ここでの楽しみ方もわかった」今、現在の明るさと強さを兼ね備えた姿があるに違いない。

 今回のインカレでは川野が「次のエースになる」と相方に選んだ山口(政経3)との舵手なしペアで出場する。「自分も勝ちたい。でも低いレベルの争いじゃなくて、トップの世界を見せたい。それがわかるのは優勝した時だけだと思うから」。この1年、昇り調子の女子を中心になって引っ張ってきた川野。最後のインカレでは、後輩たちにさらに高い世界も見せることができるか。川野の活躍に注目したい。

◆川野真由美 かわのまゆみ 営4 熊本学園大付高出 167cm

財津友美(政経4)
女子ダブルスカルクルー

 「癒やし担当」と評される財津。明大端艇部では、恵まれた仲間とともにボートに打ち込んできた。この夏、「ラストローイング」に懸ける思いとは。

○仲間とのラストローイング○

 財津にとって明大端艇部は、「家族がいっぱいいるみたいな」場所だった。練習、食事、休日、生活のほとんどすべてを合宿所で共に過ごした仲間とは、家族のように気兼ねなく、明るく接することができた。特に、同期に恵まれた。女子の4人組は休日もいつも一緒にいた。「しょうもないことで盛り上がれる4人なんです」と笑いながらも、財津はそんな仲間を誇らしげに語った。

 財津と、今年のインカレで同じダブルスカルに乗る井戸(農4)は、高校3年生のインターハイで同じレースに出場している。決勝だった。結果は、井戸のクルーが1位、財津のクルーが2位。「高校の終わりはなかなか良いレースができなくて、悔しかった」という財津。再び日本一を目指すためにも、明大端艇部に進んだ。すると、今度は井戸がチームメートに。インターハイで会話し、仲良くなっていた2人だったが、合宿所生活でさらに打ち解け、最後の大舞台となる今年のインカレでは二人三脚で優勝を目指すことになった。

 井戸は財津のことを、「練習中にきついことを言っても、気まずくならないのは財津のおかげ。大人の対応を取ってくれて助かっている」という。部員の中でも「癒やし担当」。雑学を紹介するテレビ番組を見ていると間違った雑学を披露したり、勝手に井戸の部屋に入って「本格的な落書き」を残して帰っていったりすることもある。「暇つぶしにさらっと紙に描いて置き去りにしていきます。上手いので保存してますけど」(井戸)。そんなおおらかな財津の性格が、4年間、端艇部になくてはならないものだったことは確かだ。

 卒業後は、ボートとは離れるつもりでいる。「ラストローイング」がこのインカレ、そして全日本選手権に懸かっている。今まで応援してくれた両親、「家族」のようだった仲間たち、明大で出会ったたくさんの人々へ思いを込めて、財津は漕ぐ。「感謝の気持ちを表すには優勝しかない。絶対やります」。「癒やし」と言われた財津は、ラストローイングへの決意を力強く言い切った。

◆財津友美 ざいつともみ 政経4 日田三隈高出 164cm

☆こぼれ話☆

 明大端艇部のインカレ出場クルーは8月の初めから、男子は宮城県、女子は岐阜県で集中合宿を行った。理由は、8月6日から10日まで戸田ボートコースで高校のインターハイが行われ、練習ができなかったため。明治以外の大学もほとんどが他の川や湖で練習したらしい。

 戸田では主に毎日早朝練習や夕方練習をしているが、合宿では昼間の日差しも強く、暑い時間帯のインカレレース対策のために、日中にも上艇練習を行った。
また通常の2倍ほどの練習量をこなし、出発前の選手たちが口をそろえて「相当過酷です。正直怖いです」(川野)というほどだった。さらに、誘惑の多い戸田と違い、周りに何もないらしく「雑念のない」(伊藤主将・政経4)環境でいいトレーニングができたに違いない。

 「(合宿は)自分たちの壁を破るため。これくらいしないと勝てない」(川野)とこの合宿に全身全霊で臨んだ端艇部。精神的にも肉体的にも強くなって帰ってきた端艇部は、残り10日、インカレまでの道のりを走り続ける!

★次回の「走る!」(8月20日予定)は、インカレ直前・選手たちの意気込みを伝えます!