
三浦佳生 2年ぶりの四大陸へ/国際大会代表選手発表
三浦佳生(政経1=目黒日大)が、来年2月18日から23日にかけて韓国・ソウルで開催されるISU四大陸選手権(四大陸)代表に選出された。古傷にも悩まされた今季だったが、GPシリーズ(グランプリシリーズ)を始め、世界を相手に懸命に挑み続けた三浦。17歳8カ月にして史上最年少優勝を達成した2022年大会以来の四大陸への派遣となる。その名を大きく知らしめた大会で、再び真価を見せられるか。
FS(フリースケーティング)『進撃の巨人』で堂々の演技を披露した昨年度の全日本選手権(全日本)。4位に入り見事世界選手権への切符をつかむなど、多くの観客に鮮烈な印象を与えたシーズンとなった。そして迎えた今季はSP(ショートプログラム)『Conquest of Spaces』、FS『シェルブールの雨傘』とともに歩みを進めてきた。SPは宇宙への冒険をイメージし、独特な腕の動きなどをはさみつつクールに表現。FSは情感あふれるスケーティングで会場を包んできた。
7月中旬の初戦PRINCE ICE CUPでは、非公認ながら大台のFS200点超えを記録。「これを一つの自信にできれば」と振り返ったように、圧巻だったのはジャンプの精度。冒頭4回転ループ、4回転サルコー、4回転トーループを着氷し、演技後半には4回転ジャンプにコンビネーションを付け、これら全てに1点を超える加点を付ける。4回転ジャンプ3種4本の本格導入、定着を目指す三浦にとってこれ以上ないスタートを切っていた。だがそれ以降は、特にFSで4回転の難しさに直面する。トリプルアクセルを冒頭に組み込む昨シーズンまでの構成も常に視野に入れつつ、周囲の状況や自身のコンディションに応じて、大会ごとに直前まで構成を練ってきた。その後のGPシリーズを通して模索を続けるも、出だしの安定感は一つの課題となっている。
それでも今季ここまでに得られた経験は大きい。三浦のスケートは〝ランボルギーニ〟と称されるように速さと豪快さが目を引くが、今季は表現面の意識の高さも垣間見える。GPシリーズではSP振付師のブノワ・リショーさんも現地に駆けつけ、ともにブラッシュアップを重ねる。ステップシークエンス、プログラム途中のつなぎ、めりはりの付け方など細かい要素に目を向け続けてきた。その成果も実り、11月のNHK杯ではSPで念願の100点台に突入する。スピン、ステップ全てでレベル4を獲得する会心の演技を見せ、キスアンドクライでは驚きと喜びがあふれ出した。「(全日本までの大会を振り返って)PCS(演技構成点)でもかなりいい評価をもらえていてうれしい」と自身でも手応えを口にする。さらにFSでも、多様な解釈を残す映画について自分なりの感覚を言語化し、スケーティングに投影してきた。「自分の中でしっくりきているものがある」と話すように、3位入賞を果たしたGPシリーズアメリカ大会では、昨年度の全日本と同等のPCS85点台をマークした。
今シーズンはGPファイナル(グランプリファイナル)進出を逃したものの、全日本1週間前には「気持ちはすぐに切り替えられた。逆に調整に充てられた」と澄み切った表情を見せた。そして迎えた全日本では、SP、FSともにジャンプに精彩を欠き総合8位に終わる。しかし最後まで演じ切る集中力の高さとスケーティングで観客を魅了したことは間違いない。課題であるFS冒頭のジャンプで崩れかけるも、その世界観を4分間貫いた。中盤から最終盤にかけてのスピン、ステップで今季初めてレベル4をそろえ切ったことは成長の証といえる。スピン、ステップのそれぞれの点数は鍵山優真(中京大)選手に次ぐ2位の得点をたたき出した。
「ひとまず終えられてほっとしている。これからゆっくり休んで強くなって帰ってこられたら」と落ち着いた気持ちで全日本を後にした三浦。2年ぶりとなる四大陸への派遣が決まり、激動と変化の2024年を終えた。今後はいまだ完治に至っていないケガの治療を念頭に、2026年のミラノ五輪から逆算し、どのように状態を高めていくかが注目される。大学1年生にして日本フィギュア界の一線を担うプレッシャーは計り知れない。それでもこれまでの経験を糧に、若き彗星(すいせい)はさらなる飛躍を遂げてみせる。
[橋本太陽]
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