(2)ヨットの種類
しかし北京五輪セーリング競技出場を決めた、近藤主将(政経4)の姉・近藤愛選手と鎌田奈緒子選手(ともにアビームコンサルティング)のペアが「コンカマ」としてメディアに取り上げられ、ヨットレースにも注目が集まり始めている。
この機会に「コンカマ」を応援しようにも、ヨットレースのことを知らなければ観戦の面白みも半減。そこで五輪直前のこの時期に、ヨット競技を一から解説していく。
第2回では、ヨットの種類を紹介します。
スナイプと470
一口に「ヨット」といっても、その種類は多岐にわたる。1人乗りの簡素な作りのものから、エンジンやキャビンの付いた豪華なものまで、すべて「ヨット」だ。ここではその中でも、大学ヨットで使われる、スナイプ級と470級について説明する。
スナイプ級【写真1】は、1931年にアメリカで設計され、戦後日本に入ってきた。今では世界的にも大変ポピュラーとなったヨットだ。470級は、艇の長さが4・7mであることからその名が付いた。欧米人に比べて小柄な日本人に適した大きさのため、モントリオール五輪で取り入れられたときから、日本はこのクラスに力を入れている。
大きな違いは帆の枚数
この2種類の一番大きな違いは、セールの数だ。スナイプ級はメーンセールとジブセールの2枚のセールを持つ。470級はその2枚のほかに、風下に向かって走るときに張るスピンネーカー(スピン)という3枚目のセールが付いている。このスピンは、大学ごとに違う色のものを使っているため、大会では色とりどりのスピンを見ることができる【写真2】。
セールの枚数の違いから、戦略面にも違いが出てくる。セールの枚数が多い470級の方がスナイプ級よりも多く風を受けるため、スピードが出る。一方、「スナイプ級は、スピードにあまり差が生まれない」(田口・法4)。その分、チームレースがより重要となってくる。
もう一つ、目に見える違いがある。470級では、たくさんの風を受けるので艇のバランスを崩しやすい。そこで、トラピーズというワイヤを、クルーが装着するハーネスに引っ掛け、全体重を掛けて艇の傾きを抑えるのだ【写真3】。トラピーズを使うことで、効率よく艇のバランスを取ることができる。スナイプ級にはトラピーズが付いていない。その代わりに艇の縁に足を掛け、体を乗り出して傾きを抑える。
北京五輪は11種目
北京五輪のセーリング競技では、「コンカマ」が出場する470級(ダブルハンド男子・女子470)のほかにも、以下の艇種で競われる。
・ウインドサーフィン男子・女子RS‐X(ミストラル級)
いわゆるボードセーリング。ヨットではない。男女別で行われる。
・シングルハンド男子フィン(フィン級)
全長4・5m、1枚セールで1人乗りのヨット。男子のみ。
・シングルハンドオープンレーザー(レーザー級)
全長4・23m、1枚セールで1人乗りのヨット。男女の区別はない。
・シングルハンド女子レーザーラジアル(ラジアル級)
レーザー級と同じボートだが、セールの面積が小さい。1枚セールで1人乗り。女子のみ。
・ダブルハンドオープン49er(49er=フォーティーナイナー=級)
全長4・99m、2枚セールで2人乗りのヨット。男女の区別はない
・キールボート男子スター(スター級)
全長6・92m、2枚セールで2人乗りのキールボート。キールボートとは、ボートが大きいために、艇の横流れを防ぐセンターボードの代わりに、ボートにキールが付いたものを指す。男子のみ。
・キールボート女子イングリング(イングリング級)
全長6・3m、2枚セールで3人乗りのキールボート。女子のみ。
・マルチハルオープントルネード(トーネード級)
全長6・09m、2枚セールで2人乗りのヨット。カタラマン(双胴艇)といって、二つのボートを幅のある板でつないでいる。男女の区別はない。
★次回(8月4日予定)は、本学ヨット部の紹介です!本紙記者のヨット体験記も合わせて掲載します。
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