
(8)後藤香菜子
ローバースカウトとの出会い
後藤香菜子(法4)がローバースカウト部に入部したのは、当時の主将・山田健太郎氏(平19営卒)に誘われたからだった。「大学生活を何となく過ごすんじゃなくて、一つだけでも力を入れて勉強と両立できることをやってみないか」という熱い思いに、後藤は心を動かされた。
そして、後藤はローバースカウト部に入部する。しかし、入部してみると同期が6人いて1年生の女子は自分一人。入部してみての第一印象は「制服を着てるのが儀式っぽくてちょっと戸惑った」だった。
迎えた初めての夏合宿。このときは長距離を走破する活動を行った。だが途中で足をくじいてしまい、途中でリタイアを余儀なくされる。その年の秋に行われた100kmハイクも30~40km地点でリタイア。体力的にも男子とは差があり、活動についていくのも限界だった。「もう部活を辞めようと思った」。主将にもその思いを伝えた。しかし、主将、同じ女子の先輩、そして同期が引き止めてくれた。冬には同期に女子が5人入り、同期の雰囲気が変わり、女子部員も入って心強くなった。あっという間に波乱の1年が終わり、「何とかもう1年やってみよう」と思えるようになった。
2年生になると後輩もでき、見られているということでモチベーションを高く保つことができるようになった。そして初めて後輩を持って迎えた2年時の夏合宿。班別に行動する中で、後藤は班長を務めることになった。しかし、班員が考え方の違いからケンカをしてしまう。長距離を歩くときも無言のまま。1人はそのまま辞めてしまった。このことは苦い思い出となって、今でも後藤の胸に深く刻み込まれている。「人をまとめていくことの難しさを知った。このことは後に3年生で主将になったときいい経験になった」。
初の女性主将へ
ローバースカウト部は4年生の4月で活動を終えるため、2年生の秋に役職が決まる。その時、後藤は「部をまとめる人がいなかったし、もっと部の雰囲気を良くしていきたいと思い、主将に立候補しようと思っていた」という。そして迎えた2度目の100kmハイク。「女性でも体力的に通用することを証明し、絶対に完走を果たしたかった」と強い決意を持って挑んだ大会。しかし、またしても残り30km地点でリタイアしてしまった。
この1年間で体力的なトレーニングはしっかりやってきた。3年生もプログラムを組んでやってくれたのに、それに応えられなかった自分が情けなかった。残り30kmを我慢できなかったのは精神的に弱いからだとも感じ、ひどく落ち込んだ。しかし、ここで後藤は再び立ち上がる。逆にこの経験をバネにし、絶対に主将になろうと思えた。
その時、主将になりたかった部員はもう一人いた。その部員は男子で体力もある。「今までの主将は、体力的に俺が引っ張るというタイプが多くて彼の方が適任かもしれない」と弱気になったりもした。「でも、女性ではできないことはあるけれど、部のことを1年間考えてきて、部を好きな気持ちは誰にも負けない」という強い思いは、創部以来初の女性主将を誕生させることになった。
主将になってからの苦難
主将に就任して初めてやったことはその年のテーマを決めることだった。ローバースカウト部は学年ごとにカラーが違い、活動はアウトドアやボランティアなど大まかにしか決まっていない。そこで後藤はまずこの1年今の自分たちに何が足りなくて、何ができるかを考えた。
皆で悩み抜いた結果、年間テーマが「協力」に決まった。後藤自身、今までにリーダーというものになったことがなく、どういうリーダーになろうか悩んだ。そして考えた結果、「やっていなくて分からないなら、やってみてから考えよう」とまず行動に出るようにした。そして主将という立場からもう一度部の状況を見直してみると、「皆言いたい放題言うけれど、部活のことが好きでしっかり考えてくれている。ならば、悪いところはストップできるようにしようということだけに注意して、ワンマンで部を動かすよりも、みんなのことをまとめるようにしていきたい」と考え始めた。
しかし、全員の意見を聞き入れるのは無理がある。現実に実行できるプログラムは一つ。理想と現実のギャップだった。プログラムを決めるため、部員同士でしっかり話し合った。犠牲になる人はいるけれど、いやでも話し合いをしなければ、同期との和もできないし、コミュニケーションすらできない。
そして迎えた3年時の春合宿。最後の春合宿では、後輩が引退式を開いてくれた。「その時に後輩から本音で感謝の言葉をもらったのがうれしかった。3年生が少ない中でこの合宿が一番楽しかった」。というように、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
初の女性主将を終えて
「今、引退して振り返ってみると、みんなで部活に対して本気で取り組んでいた。みんなが一生懸命取り組んでいて毎日毎日が楽しかった。部活が生活の一部になって楽しいことも嫌なこともあったけど、充実していて好きだった。今振り返ってみると寂しい。就職活動をしている時もなにかむなしさ、寂しさを感じた。
後輩に対して伝えておきたいことは、部活を好きであってほしいということ。つらい、辞めたいということはあると思うけど、大学でこれだけを頑張ったといえるのは誇りになること。自分が積極的に動けば色んな大きなものが得られると思うから」。
ローバースカウト部初の女性主将という大役を終えた後藤。これからの自分の職業として、「チーム全員で役割を分担して作業をするというところが、部活と似ていて好き」という理由から、システムエンジニアという道を選んだ。活動を通して得た経験を生かし、後藤が社会へと羽ばたく。
◆後藤香菜子 ごとうかなこ 法4 新潟明訓高出 163cm
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