前期を終えて<石田勇人>(1)

前期を終えて<石田勇人>(1)
 春の集大成として臨んだ関西学大定期戦を終え、前期の練習も終えたグリフィンズ。昨年学生日本一に輝いた関西学大との試合を経て、この前期をどう感じたのだろうか。

一直線な歌舞伎者

 試合中、厳しい声が飛ぶ。その発声源を探してみると、石田勇人(政経4)にたどり着く。「おい、オフェンスしっかりやれよ!」。ディフェンスバックの石田がオフェンスのふがいなさに怒りを表していた。

「部内だとキレキャラだろうね。以前からがつがつ言うタイプだし、もとからそういう性格。とくにチームの雰囲気が悪いときにはガツンと言う。たぶん後輩からしたら嫌な先輩だと思うよ」。

 確かに石田の口から出てくる言葉は、丁寧なものとはいえない。「俺は口が悪いから」と本人も認めているところだ。しかし、その姿勢の奥には『本気の思い』が存在している。

 「試合に勝つために練習しにきているはずだし、全員が同じ目標をもって取り組んでいるはず。決して友達作りにきているわけじゃないから、甘えた気持ちをグラウンドに出してはいけないと思う。特に俺は中澤(平19政経卒)さんのようにプレーでは後輩に見せて引っ張っていけない。だからこそ、そういった口を出していく姿勢を見せていかないといけないと思うし、それが俺の役割だと思う」。

 嫌われるのは嫌じゃないの?――嫌われても構わない。自分の道を歩む。周りに流されない。「それは変人だから」と笑いながら答えた石田だったが、一貫した『本気の思い』を感じさせた。

4年目の心変わり

 そんな石田も4年目を迎え、心境の変化があった。

 「3年生の終わりごろは好きなようにやってもいいんじゃないかなと思ってた。でも実際始まってみると、チームを最優先に考えるようになった。先輩方には申し訳ないけど、いままで自分の活躍ばかりを考えてた。一本目になったならないで、いちいち一喜一憂しなくなったし、自分が2本目になってもそれはチームが試合に勝つためだから。最後にはやっぱり試合に勝ちたい気持ちがあって、客観的にチームを見れるようになった」。

 過去3年、自身のケガとの戦いで自分のことしか考えられなかった石田が、4年目を迎えてチームを見られるだけの余裕が芽生えた。「今年は怪我をせずベストの状態でプレーができている」と本人が言うように、自身の調子の良さが大きな要因だろう。それに加え、最上級生としての自覚が石田の気持ちを変えている。

 「後輩の目線に合わせて話をするようになった。人それぞれタイプがあるから。厳しく言われて奮い立つやつもいれば、厳しく言われると気持ちが萎えるやつもいる。そういったのを感じ取って4年生がチームを最高のコンディションに導かないといけないと思った。これは俺だけかもしれないけど、特にディフェンスバックってコミュニケーションを図ってやらないと守れないと思うから」。

◆石田勇人 いしだはやと 政経4 佼成学園高出 174cm・73kg