戦い続けるおじいちゃん――明月

2013.09.18
 常勝軍団の名を欲しいままにする、明大馬術部。その栄光は部員の日々の努力に加え、鍛えられた馬によって支えられています。個性派ぞろいの馬ばかりですが、実力は折り紙つきです。そんな馬たちを一緒に生活する部員たちの印象や思い出を交えながら紹介していきます。第7回は明月です。

 「戦うおじいちゃん」――馬場馬術競技に欠かせない馬、明月を柘植(法3)はこう評価する。そんな明月の年齢は22歳。第4回で紹介した総合馬・明商(めいしょう)と並ぶ高齢馬だ。

馬場のエース

 「息切れしながら頑張っている」(柘植)と22という年齢が邪魔をし、体がついてこないこともある明月。しかし明月は長い間、馬場馬術競技でタイトルを獲得してきた経験豊富な馬だ。さらに試合になると「本気を出すところを知っている」と、長い経験が物を言い、試合において心強い存在だ。

 馬場馬術競技は決められた経路で馬を運動させ、いかに馬を従順させられるか、美しく運動させることができるかを競うもの。人馬一体となった技術と美しさを競う競技だ。常勝明治が得意とする馬場馬術において、勝負に強い明月はなくてはならないエースだ。コンビを組む柘植も「気持ちも若いし勝負ができる馬」と明月の実力を認めている。

 年齢的に劣る体力など、心配が尽きない明月だが、まだまだ勝つことのできる馬として必要とされている。

コンビ力

 そんな明月だが、柘植が乗り始めたころは近寄れないほど彼を警戒。明月はもともと人間が苦手。暴れて頭を前足で殴られた部員もいるほどだ。どんな馬でも臆病なところはあるが、明月はとくに人間に警戒心を強く持つ性格。しかし、練習を積むとともに、徐々にその警戒心は解けていく。今では「扱いやすくなったし、乗っても冷静になってきている」(柘植)と明月をコントロールできるまでになった。

 練習時も柘植は、その日の練習で決めた課題を明月とともに特訓。「これを頑張ろうと思ったところに明月は変化してくれる」と、明月と柘植のコンビは共に成長してきた。自身についてきてくれることもあってか、そんな明月を柘植は「かわいい」と愛情を注いでいる。また他の部員たちも「柘植さんとのコンビだと勝てる」と柘植と明月のコンビを高く評価している。

 「最近は調子もいいし勝ちにいける」(柘植)。未だにエースの座を保持し続ける明月の次なる舞台は関東インカレ。戦い続けるおじいちゃんとコンビを組む柘植が見せる馬場馬術ならではの優美ある歩様が、常勝軍団に勝利をもたらす。