人生は波乱万丈――ウィローウィム
生まれた場所は馬術競技の本場・ドイツ。ワールドカップという世界的名馬を父に持ち将来、世界の馬術界を背負って立つ期待をかけられ誕生したのがウィローウィムだった。しかし現実は甘くはなかった。上位ランクの馬として登録を試みるも審査が通らず、なんと事は裁判にまで発展することに。結局ウィローウィム陣営の敗訴に終わり、低いランクでの登録を余儀なくされたことで価値が急落。血統的にはありえないような安値で日本へやって来ることとなったのだ。
買い取られた先は明大OBが経営する乗馬クラブ。ここまではウィローウィム自身に非は無く、大人しくしていればそれなりの生活が送れたかもしれない。だが今度は馬自体の悪癖が全開に。調教中、人が乗っているにもかかわらず突然発情し、牝馬に襲い掛かるという事件を起こすなど「もう誰の手にも負えなかったんじゃないでしょうか」(立田・政経2)とここでも持て余される存在に。
「強い、硬い、重い」
そんな時、引き取り手として名乗りをあげたのが本学。馬場用の馬が欲しかった本学と、大会出場が多い学生でなら疲れて大人しくなるのでは、という乗馬クラブ側の思惑が一致。譲渡後も名前を変えないという条件つきで明大馬術部の一員となったのだった。
この間に去勢も行われ以前に比べれば一応大人しくはなったものの、またも別の問題が。今度は「強い、硬い、重い」(斉藤圭・政経4)の三拍子そろった動かない馬として部員を困らせる。突然フリーズし、誰も動かすことができなくなったかと思えば、曳き馬の最中に勝手な方向に歩き始め、部員を引きずりまわすなど問題児ぶりを発揮。やられっぱなしではいられない部員のほうも「戦ったけど完敗だった」(山内・商4)と対抗の意志は見せるも、結局は「暴れたら殺されちゃうから逃げる」(斉藤圭)とどうしようもない様子だ。「怪獣みたい」(柘植・法3)、「ちょっと小回りがきくから小型の重戦車」(篠原・営3)と出てくる評価は強く、硬く、重いものばかり。
そんなウィローウィムも競技面ではずば抜けた能力を持つ馬。「不器用さがなければ日本にいる馬じゃない。ずる賢さも持っている」(斉藤圭)と潜在能力の高さは誰もが認めるもの。昨年、一昨年と全日本の馬場で連覇を果たしていることからもその能力の高さは明らかだ。
部では“いわお”と呼ばれ、なんだかんだで深い愛情を受けているウィローウィム。「首の後ろに硬い筋肉があって、医学書にも載っていない。“いわお筋”って呼んでいます」(篠原)とその存在はすでに神秘の領域へと突入。「明治が全日本インカレで勝つためには絶対に必要な馬」(篠原)という競技との激しすぎるギャップも愛嬌だろうか。波乱万丈の人(馬?)生を歩んできたウィローウィムは、今日も「強く、硬く、重く」なって部員との格闘を繰り広げている。
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