
難境はねのけベスト4 新旧交代へ芽生えた自覚/全日本学生王座決定戦
全日本学生選手権(インカレ)、東京都学生リーグ戦では勝ち取れなかった全日本学生王座決定戦(王座)だが、推薦校として伊勢の大舞台に戻ってきた。昨年は1回戦で敗北を喫した明大。新たなメンバーを迎え挑んだ今大会は、万全とはいえない状況ながらも、全国のトップ校が集う中、準決勝まで勝ち進んだ。今年度最後となる大会での優勝はかなわず、悔しさをにじませる表情も見られたが、各々が課題克服に向け決意を新たにした。
◆11・23~24 第72回全日本学生王座決定戦(伊勢神宮弓道場)
▼男子団体
明大――ベスト4
1立4人16射を前後各3立、計8人96射と集中力が試されるトーナメント形式。伊勢神宮という場所も相まって、会場には独特な緊張感が走る。そんな全国の頂を決める大会は、若林優弥(農3=小笠)の1射から始まった。1回戦、東北大を相手に若林、増田皓太(理工3=富士宮西)が初立を4射皆中で魅せ弐の立に矢を託すも、落・小林樹生(理工4=国学院)は「前日練習で今までにないぐらい(弓道の)調子を崩してしまって、切り替えることができないまま試合に臨んでしまった」と思うような的中を出せず。主将・細川凌平(営4=秀岳館)も2立8射の的中率が5割を下回り、終立を長谷川智(法4=国学院)に委ねる。それでも皆中を出した若林を含む下級生の粘りで2回戦に駒を進めた。
続く信州大との一戦も、壱の大前・若林がチームをけん引した。「先週の試合ではあまり調子が良くなかったが、この1週間でやるべきポイントを三つに絞って、それだけをやるという意識で臨んだら、緊張した中でも自分の射ができた」(若林)と2連戦で華麗な皆中を披露し、都学十傑としての実力を結果で示した。北信越トップの信州大とは互角の戦いを繰り広げ、勝敗の行方は同中競射にもつれ込むも、前戦では苦戦を強いられた弐の立4人が底力を発揮。84中―82中で辛勝を収めた。試合終了直後、弐の落としてプレッシャーを背負った小林にチームメイトが駆け寄る場面も。そこには〝明大〟として一丸となって戦う勇士たちの姿があった。
準決勝では全国大学選抜で涙をのんだ強敵・国武大に挑んだ。ここで成長を見せたのは宮下雄琉(営1=坂戸西)。「集中力が足りないことを監督やOBの方から指摘されていたので、丁寧に引くことを意識した。今大会に向けては、抜く矢を1本までに抑えるという具体的な目標を立てて練習してきた」とインカレでの悔しさを糧に努力を重ねたルーキーが皆中賞を獲得した。また、2立目から細川が再度弓を握ると、鮮やかな最終矢を放ち、主将として堂々のラストを飾った。「弓道をやらせてくれた両親に感謝の気持ちを込めて弓を引かせていただいた」(細川)。しかし、79中―80中とあと1中及ばず、明大の戦いは幕を閉じた。
大会2日目には、各地区学連リーグ戦における個人成績上位者が東日本(東軍)と西日本(西軍)に分かれ競う、東西学生選抜対抗試合が行われ、明大から若林が選出。初出場ながら壱の大前という大役を見事にやってのけた。
大会当日は前日までの暖かさとは一転、真冬の気温となった。慣れない寒さと強風が選手たちの矢を乱し、練習通りにいかない焦りも見られた。そんな環境でも最後まで戦い抜いた明大弓道部。今年度最後となる大会を終え、下級生たちには新たな自覚と責任感が芽吹いていた。一人一人の結果が明暗を分ける小数精鋭チームの矢は来年度に向け、力強く放たれた。
[寺井和奏]
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