無邪気な楽天家――明欄(めいらん)

2013.09.18
 常勝軍団の名を欲しいままにする、明大馬術部。その栄光は部員の日々の努力に加え、鍛えられた馬によって支えられています。個性派ぞろいの馬ばかりですが、実力は折り紙つきです。そんな馬たちを一緒に生活する部員たちの印象や思い出を交えながら紹介していきます。第3回の今回は明欄です

 「楽天家」。物事を明るく良い方に考え、くよくよ心配しない気楽な人のこと。人を馬に変えれば、まさに明欄にぴったりな言葉だ。明欄は何でも楽しみ、遊びだと思ってしまう。人間を怖がることはまったくない。人が手を伸ばし触ろうとすると、すかさず噛もうとする。それは敵意や悪気があっての行動ではなく、ただ遊んで欲しいだけ。それを飽きるまで何度も繰り返す。明欄にとっては人に怒られているときも、怒られているとは思っておらず、自分と遊んでくれているのだと思うのだから筋金入りの楽天家だ。

 明欄は人を乗せて走ったり、障害をとんだりすることも楽しくてしょうがない。「馬のそういう気持ちは本当に大切」と山内(商4)は言う。しかし、明欄は調教をただ楽しんでいるだけではない。教えたことはしっかり覚える。何でも楽しんでしまい、やってほしいことはやってくれる明欄は乗用馬として素晴らしい馬だ。「本当にいい馬に乗らせてもらっている」山内は愛馬の実力を評価している。山内と明欄の信頼関係を証明するこんなエピソードがある。ある大会で、明欄には珍しく失権してしまった。次の大会まではわずか1カ月しか間がなかった。同じ失敗を犯すことは絶対に許されない。常勝明治にいる以上山内はその1カ月で結果を出さなければいけなかった。そこで明欄にハードなトレーニングをさせた。「明欄なら乗り越えてくれると信じての行動だった」(山内)。次の大会で山内と明欄は見事に優勝。明欄を信頼したからこその結果だった。

 優勝経験もあり、大きい大会で何度も上位に食い込む明欄だが、現在はあまり調子が良くない。集中力が足りないという欠点も改善中である。しかし、山内の信頼とそれに答える明欄の心があればその壁も越えられることだろう。楽天家は山内を背に日々練習に励む。大きなタイトルを勝ち取るために。