
(最終回)「頑張り屋が手にした自信」――平屋徹
卓球一家に育つ
「今は自信があります」。スッキリとした表情で平屋はそう語った。明大卓球部の元主将の兄と、名門仙台育英高のエースだった弟を持つ平屋。両親共に卓球選手と、まさに卓球一家に育った。中学時代、高校時代と主将を務め、兄のいる明大卓球部へ。順調にここまで卓球人生を歩んできたように思えるが、決して楽な道ではなかった。しかしその我慢の冬がもうすぐ終わろうとしている。
試行錯誤の卓球
自身のことを「兄弟で一番実力がないのは分かっていた」と振り返る平屋。中学時代は意外にも個人での全国大会出場はない。高校でも卓球は続けたものの、なかなか結果は出なかった。「監督は何で何も言ってくれないんだろう」と思い、父親に相談したこともあった。しかしだからこそ、「どうやったら勝てるようになるのか」を自分で考えた。そして、試行錯誤の卓球がこのときから始まった。その大本となったのが中学時代に会った、昨年まで明大卓球部の監督を務めた平岡前監督だ。ボールが遅くてパワーがなくても勝てる卓球。平岡前監督から教わったことを自分なりに考え、そして模索していく中で迎えた高2の県大会。この大会でインターハイ代表に選ばれ、その後も全日本ジュニアでベスト16に輝くなど、一気に全国区の選手にはい上がった。
そうして高校時代輝かしい成績を残し明治入学を決めた平屋だが、大学に入っても自分の卓球はまだ固まっていなかった。平岡前監督に学んだ卓球を自分なりにアレンジし、古武術を取り入れるなど相変わらず試行錯誤の毎日。「今は勝てないかもしれない。だけど、今いろいろ試してるのはレベルアップするため。自分は伸びる要素がまだある」。
しかし、今年の1月。平屋の今後の卓球人生を左右する大きな出来事がおこった。「ラケットが握れない」。もともと首があまり丈夫ではなかったが、厳しい練習の疲れからか、ある日急に手がしびれてラケットを握ることさえもままならなくなってしまった。練習したくてもできない毎日。「なんでこうなっちゃったんだろう。練習はがんばってきたけど…もう卓球はできなくなるのかもしれない」。悪いイメージばかりが頭の中に浮かんでくる。
そんな今までの卓球人生の中で最悪ともいえる状況の中、平屋をもう一度奮い立たせたのは「周囲への感謝の気持ち」だった。苦しいとき支えてくれた両親や兄の存在、精神的にたくさんのものを教えてくれた中学時代の監督、「今までお世話になったすべての人に、自分が返せるのはやっぱり卓球」。落ちるとこまで落ちたら、もう上がるしかない。ケガの不安を抱えながらも平屋は福島合宿に臨んだ。「高校時代に活躍したやつが大学で落ちるのをたくさん見てきた。自分はそうはなりたくない」。そんな思いをぶつけるように、がむしゃらに練習した。そこで見えてきた一つの形。「今まで試行錯誤してきた自分の卓球のイメージが、ここにきてやっと固まってきた」。
ここから始まる
4月に行われた立川オープン。そこで平屋は全国学生選抜準優勝の瀬山(中大)を破る大金星を挙げる。ケガを乗り越え、自身を見つめ直すことでようやく見つけた自分の卓球。それが通用した瞬間だった。「落ちるとこまで落ちて、やっと今自信があります」。そう語る一皮剥けた平屋の笑顔。それは堂々として希望にあふれていた。「今はリーグ戦レギュラーじゃないけど、誰でも我慢の時期はある。自分は今がその時期」。今まで人一倍努力し、自分の可能性を信じてきた。このままでは終われない。平屋の卓球は今始まったばかりだ。
◆平屋徹 ひらやとおる 政経3 埼玉栄高出 172cm・73kg
<戦型>右・シェーク・フォア裏、バック裏・ドライブ型
・春季リーグ戦開幕!
「明日の主役」で紹介した選手たちも出場するかもしれない、春季リーグ戦が本日5月7日に開幕します。ぜひ会場に足を運んで、選手たちの勇姿を目に焼き付けよう!!
<会場>
代々木第二体育館 JR山手線「原宿駅」下車 徒歩10分
<日程>
5月7日 対筑波大 16:30~
5月8日 対大正大 16:00~
5月9日 対駒大 14:30~
5月12日 対専大 16:00~
5月13日 対中大 16:00~
5月14日 対埼玉工大 12:00~
5月15日 対早大 14:30~
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