史上3人目の最年少優勝! ルーキー・土屋泰、頂に立つ/総合選手権

2024.09.30

 年代別最強の拳士を決める国内最大規模の個人選手権、総合選手権が今年も開催。18歳以上の選手が参加する成年の部では、今年も明大から7人が出場し、初参戦の土屋泰生(文1=関西福祉科学大)が決勝まで進出する快進撃を見せる。その決勝では時間無制限の延長戦までもつれ込むが、自慢の左手で突きを決め、大会史上3人目となる最年少優勝を果たした。

◆9・15 総合選手権(Asueアリーナ大阪)
▼成年の部
土屋泰――1位
森川――ベスト8
山田健――ベスト8
井上――4回戦敗退
土屋賢――3回戦敗退
大谷――1回戦敗退
山田太――1回戦敗退

 「とりあえずほっとしている。みんな『多分絶対勝たれへん』って言ってきてたので、『どうや!』という感じだけど、小さな頃からの夢やったので(うれしい)」(土屋泰)。昨年度、総合選手権内で開催された全日本高校個人選手権で高校王者になってから1年。今度は日本王者になった土屋泰の快進撃の始まりは2回戦からだった。フランスのLAMBERT PIERRE(BACCARAT)を相手に開始21秒で胴突きを一本を取ると、わずか3秒後に再び胴突きを決めて3回戦進出。その後も益子龍愛(自衛隊第32普通科連隊)や森翔弥(自衛隊東千歳)といった段で同等以上の社会人相手にも、突きを軸に勝利を積み重ね、ベスト8まで駒を進めた。

 準決勝進出を懸けた舞台では山田健斗(文3=桜丘)との明大対決に臨んだ土屋泰。山田健が「お互い手の内を分かっていたので、いつも通りの動きだとバレちゃう」と語るように、最序盤はお互いに探り合いをしていたが、開始1分過ぎに土屋泰の胴突きが決まり一本を取る。山田健も蹴りで応戦するも、最後は土屋泰の胴蹴りで勝負が決した。準決勝では、森川征那(文4=三井)を準々決勝で下した橋本明廣(自衛隊第32普通科連隊)と対戦。「一番きつかった。つかまれたら終わり」(土屋泰)と厳しい戦いが予想されたが、先に一本を取ったのは得意の突きを決めた土屋泰だった。そのまま逃げ切り、といきたかったが、警戒していた相手の組み技を許して一本。試合は3分間で決着がつかずそのまま1分間の延長戦に。すると延長開始7秒、面突きが見事に決まり勝負あり。「(橋本の体が)大きくて(手足も)長くて、結構しんどかった」(土屋泰)。死闘を制し、決勝までのし上がった。

 ここまで5試合を戦った土屋泰は「調子はアップの時は微妙だったが、試合していくごとにだんだん良くなっていった」と試合を重ねるごとに勢いづいていた。その状態で臨んだ決勝。横井虎太朗(亀山会)との一戦は序盤から激しく動いた。足を出しながら様子をうかがっていた土屋泰は相手をつかみ、自身が上になりながら両者体ごと床に倒す。土屋泰は一本を決める絶好の好機だったが、ここから相手が体をひねり返して形勢逆転。何とか離れたかったが、膝蹴りを食らって一本を許した。それでも明大の仲間からの声援に「とてもうれしかった。試合中でも聞こえてきて、それが糧になった」と奮起。試合中盤過ぎに得意の突きが相手の面に刺さり一本。その後は相手の組みをかわしつつ反撃を狙うも制限時間に達した。

 ここからは勝負が決するまで時間無制限に。「つかまれたら負けると思っていたので、つかまれへんようにもう気合で、体力とスピードで勝るしかないなと思った」。土屋泰はすぐ突きを繰り出し、相手は即座に蹴りで返す。見合う時間が続き、今度は組み技を仕掛けて倒すも、決定打は打てず。その後はにらみ合い、延長から2分が経過しようとしていた刹那、土屋泰の左手が相手の面に。笛が吹かれた後、土屋泰は小さく左手を上げた。

 最年少となる18歳が大会を制するのは大会史上3人目の快挙。明大勢が制するのも3人目となったが「明大からの優勝とかは正直あまり興味ないが、最年少で優勝が身近にいたので、そこに負けずになれたのでよかった」。振り返ってみると、土屋泰が対戦した相手は全員社会人。優勝への道のりは並大抵ではなかったが「合宿で踏み際とか、自衛隊に対してどんな感じで戦うか、みたいなことを1番成長できたと思う」と合宿の成果を見せたと振り返った。4月に入部し、わずか半年弱で日本王者に輝いた土屋泰。拳法界の歴史に名を残した〝小さな巨人〟の快進撃は、どこまでも続きそうだ。

[北原慶也]

試合後のコメント
森川
――準々決勝では二本とも相手に倒されて打たれました。
 「組みが強いって分かっている状況で自分で行ったので、負け方としてはもう納得のいく負け方だったなって思います。また次は絶対勝つぞということで、今回負けて次の成長につながるなっていうことはやる気につながりました。それはよかったと思います」

――決勝で部員はどう応援していましたか。
 「自分の後輩っていうのもあって、みんな心からしっかり(土屋泰を)優勝させてあげたい。自分の応援、一人一人が声走って、優勝に一緒に喜びたいって多分思ってる子もたくさんいたと思うので。自分も選手のような感じで応援してたんじゃないかなというふうに思います」

――今後に向けてコメントをお願いします。
 「全部優勝を目指してることはもちろんですけど、(全日本)学生個人(選手権)は自分が圧倒的に連覇して、今回の(土屋泰の)優勝はなかったぞっていうような感じにしたいと思います」

山田健
――今日の調子はいかがでしたか。
 「最初はそんなに緊張しなくて、試合をやってみた感じ、1回目ちょっと体が硬くて、切り替えようと思って動きを変えてみました。2試合目から結構いい動きになって、なんとか上がることできました」

――うまくいった試合はありましたか。
 「明大のOBである先輩と戦ったんですけど、結構やりづらい相手で。なんとかさばいて攻撃できたので、それは1番今回のいい点だったのかなと思います」

――全日本学生個人選手権に向けてのコメントをお願いします。
 「もう優勝します。優勝するしかないです。今回後輩に負けたんで、土屋泰はまず絶対に倒すのと、あそこで決勝まで勝ち上がれたらなと思います」

土屋泰
――兄の土屋賢生(法3=関西福祉科学大)選手からはどんな言葉をかけられましたか。
 「『とりあえず落ち着いてジャブ動かして』みたいな、いつも2人でやってることをずっと教えてもらっていました」

――試合後「お兄ちゃんに会いたい」と言っていたと聞きました。
 「お兄ちゃんありきでずっと拳法勝ち続けてこられているので、いち早くお兄ちゃんと会って報告したいと思いました」

――今シーズン残りの大会に向けてコメントをお願いします。
 「井上キャプテン(晴陽主将・法4=三井)を日本一のキャプテンにして、グランドスラムの年にしたいと思っているので、その支えになれればと思います」