(2)「団体戦が大好き!」――林祐麻

1999.01.01
 明治に入り選手層の厚さに驚く選手は少なくない。高校までとは違う。そんな中、「自分は特に驚くことはなかった」とさらっと言う選手がいる。林祐麻だ。

一足早くの挫折

 「自分はみんなより一足早く、その驚きというか、自分とはセンスが違う選手がいるってことを経験したから」。地元長野を離れ、名門仙台育英高に入学。しかし林はここで才能の違いというものを見せ付けられた。先輩には今明治の柱として活躍している水野(営4)、小野主将(商4)。同期には北京五輪代表の岸川(スヴェンソン)、後輩には軽部(営2)。「才能が違った」。しかしその3年後、高校で一度挫折を味わった林が選んだ進路先は、大学卓球界の強豪・明治だった。他大であれば普通にレギュラーを取れる実力を持つ林が、挫折を味わってもなお明治を選んだ理由。それは明治が誇る「チーム力」にあった。

チーム力明治に

 「団体戦は好きか」という質問をぶつけてみた。「好きですね。おもしろいし、楽しい」。生き生きと団体戦への思いを語る林がそこにはいた。明治の魅力として練習環境が充実していることはもちろんだが、それ以上に明治の代名詞ともいえるようなものがある。伝統の「チーム力」だ。シングルスなら負けてしまうような相手にも団体戦だから勝つ。そしてそれはまさに今の林の卓球にもいえることだ。

 昨年12月に行われた関東学生チームカップ。林のいる明大Dは埼玉工大Aと当たった。勝たないと決勝には進むことができない勝負どころ。明治の1番手は林、そして相手は昨年の新人戦を制し、今では下級生ながら埼玉工大のエースとして活躍する胡(フウ)。大学での実績なら林はもちろん負けている。明大Dとすれば落としてもともとのところだった。しかしだからこそ林は燃えた。「自分がここを取ったら大きい」。チームのために、その思い一つで林はフルセットの末に胡(フウ)を破ったのだ。団体戦は1人の勝ち負けがチームの勝敗を左右する分、かかるプレッシャーは計り知れない。しかし林にしてみれば「期待されるのがうれしいし、なにより応援されるとがんばれる」と団体戦でのプレッシャーこそが強さの源だ。そんな林にとって「チーム力」の明治は選ぶべくして選んだ大学だった。

いつかは自分が

 5月7日に始まる春季リーグ戦。「できることはその場その場で違うと思うけど、リーグ戦には出られなくてもチームに貢献したい」と林は何よりもチームの優勝を願う。一方それでも「リーグ戦のあの盛り上がりはすごい。自分もいつかあの中で勝って、気持ちいい思いをしたい」。団体戦に対する特別な思いは隠せない。あこがれの舞台で活躍するために……。林は今日も練習に励む。

◆林祐麻 はやしゆうま 営3 仙台育英高出 166cm・62kg
<戦型>左・シェーク・フォア裏、バック裏・ドライブ型

☆もう1人の矯正左☆
 現在北京五輪代表に確定している水谷(政経1)が幼少期に左利きに矯正したことは知られているが、林のサウスポーも実は矯正。卓球を始めて1ヶ月ほどしてから両親の指導の下左利きに変えた。「ラケットを普通に振れるまでに3、4ヶ月はかかった」と左に慣れるまでには並々ならぬ努力があった。そんな林は青森大の選手から「隼みたいな球を打つ」と言われたそう。矯正左の選手にしかできない卓球がそこにはあるのかもしれない。