(5)「3年目の春、私たちがチームを1部へ導く!」
入部まもなく1年生ながら2部リーグの試合にレギュラーとして出場。当時のチームは頼れる4年生3人が柱となり、チームは一体となっていた。秋には悲願の女子部初となる1部昇格を遂げ「4年生は試合を見ていても負ける気がしなかった」と、鈴木の目にチームをけん引する4年生の背中が焼き付いた。
先輩の背中を追いかけていた鈴木が、今年3年目の春を迎える。現在、コート上でチームを引っ張っているのは4年生ではなく3年生だ。鈴木の元気な姿がチームに勢いをもたらしている。「あっという間に3年間経った。時間的にも焦りを感じる」と語る表情には、張り詰めるものがあった。昨年の秋には2部降格という明治では今まで味わったことのない挫折を経験。「自分的には頑張ってきたつもりだったけど、2部落ちは本当に残念」。入替戦の初戦に出場し、負けた悔しさは鈴木の中に強く残った。
しかしそこでつぶれないのが鈴木の強さだ。自称・負けず嫌いな鈴木は一度負けたくらいではへこたれない。「練習をやらないで負けて悔しい思いをするのは恥ずかしい。練習をやって負けるなら、また次頑張れる」と日々の努力は怠らない。その努力が実り、リーグ戦後の新人戦では自身の個人記録では最高のベスト4と好成績を残した。「いいパターンがつくれてきている。スマッシュなどの強い球を単発で打って簡単に返されることが多かったけど、相手を動かして(ラリーを)つないで守りながら攻めるプレーができるようになった」。さまざまな経験を乗り越えた3年目、決してブレることのない自分のプレースタイルを確立した。
今季の目標は1部昇格、そしてインターハイで成績を残すこと。「1年生の時は勝ちたい気持ちがわからなくなったこともあった。でも今はチームに対しての責任も出てきて勝ちたいという気持ちが強い。上級生として縁の下の力持ちとなれるよう安定感を出したい」。
上級生としての自覚も芽生え始め、気持ちの面でも試合への準備は万全だ。
まずは春季リーグ戦、鈴木が安定感のあるプレーでチームに貢献できれば1部昇格の未来は近いはずだ。今度は1部の舞台で鈴木の元気印である笑顔が見たい。
◆鈴木希 すずきのぞみ 商 聖ウルスラ学院英智高出 155cm
高校時代は練習環境が悪く、体育館が使えないこともあった。それでも「楽しんでやる!」をモットーに、自主的な練習で技術を身に付けてきた。その結果、インターハイベスト16位という成績を残した。明治入学を2人そろって決めたのは「明治はみんな仲がいいし、強制ではない雰囲気に惹かれた」という理由から。入学当初は、「1日1試合の調整が難しい」(富永)と高校よりも大会期間が長いリーグ戦に戸惑うこともあった。しかし、2人は1年生とは思えない強さで急速に頭角を現していった。全試合に出場し2部では負け知らずの活躍を見せ、チームを勢い付けた。06年の女子部創部初となった1部昇格やインカレベスト3の大躍進は、このダブルスの活躍なしには実現することはなかっただろう。
「富永は試合中でも冷静だから頼りっぱなし」と秋山が言うと、「後衛の秋山がずっと動いて我慢してくれるから決められる」と富永は言う。お互いのことをお互いが認め合い尊敬し合っているからこそ生まれる信頼関係。試合中、相手に押されていても明るい雰囲気を保てる理由はここにある。「ミスをしても素直に謝ってくれる。本当にやりやすいし、楽しい。運命なんじゃないかと思う」(富永)。
そんな2人の理想のプレーは、パワーを使うだけの攻撃よりも、守って相手を振ることで甘くなった球をスマッシュで決める“守り型”だ。このプレーには相当な体力や筋力が必要となる。「体力は高校の時より落ちたかもしれない。でも技術でカバーできる。高校の時はできなかったけど、縄跳びは100回跳べるようになったし筋力はついた」(秋山)と、体力を補う技術面と筋力には以前より自信が出てきた。
3年目の春は、1年目と同じ2部スタートだ。秋山は笑顔で「勝ってチームに貢献したい。盛り上げます。1部に上がるぞ!」と言い切った。富永は「目標は1部昇格。でもその前に、2部で絶対勝てる保障はない。1年や2年の時は言い訳できたけど、そろそろそういう言い訳も言えない。できないとマイナスになる弱気な自分をちょっとは変えたい。そういう姿を後輩にも見せたい」と冷静に語った。それぞれの思いが向かう先は、ただ一つ、チームを1部へ上げるという目標だ。
2人の思いがチーム全員に伝わったとき、再び1部昇格へ返り咲くことができるはずだ。
◆秋山みづほ あきやまみづほ 文 越谷南高出 164cm
◆富永翔子 とみながしょうこ 法 越谷南高出 161cm
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