
明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)②/明大スポーツ第539号特別インタビュー
今年度20周年を迎えるMSP。本記事では紙面に載せ切れなかった今年度の上演作品『お気に召すまま』で衣裳部チーフを務める秋葉里桜さん(営2)、デザイナーを務める野々山未祐さん(営2)のインタビューを掲載します。
(この取材は7月8日に行われたものです)
――MSPに所属することを決めた理由を教えてください。
秋葉(以下、秋)「演劇を見ることが元々好きだったので、大きいプロジェクトをやっているんだと知って、やってみようかなという軽い気持ちで始めました」
野々山(以下、野)「高校の体育祭で衣装を作ったことで、衣装に興味を持っていました。新歓のMSPのブースで、過去の公演で使っていたドレスは全部手作りしているという話を聞いて、そんなことをやれるんだと思って入りました」
――作品をつくるにあたって、どのような流れで衣裳部の作業が進んでいくのか教えてください。
秋「まずは演出と話をして、その後デザイナーと話をします。大まかなデザインを決めていくことが第一段階です。デザインを詰めていったら実際に型を作り、その型通りに布を取ってくっ付けて衣装の形にしていきます。サイズの調整や細かい装飾も付けていくのが大まかな流れなんですけど、衣裳部だけでは進められないこともたくさんあります。キャストさんが動きやすいとか動きにくいとか、演出さんが見た色合いの加減とか照明さんが見た時に舞台で色が飛ぶとか、そういうことをいろいろ考慮しながらやっていくので、他の部署さんとも関わって衣装ができていくという感じです」
――デザイナーさんは具体的にどのような仕事がありますか。
野「6月あたりから演出さんとプランミーティングという、どういう感じのコンセプトにするのかという話し合いが始まります。それを元にイメージを膨らませて、実際にデザイン画を描いていきます。そのデザイン画を元に演出さんと話をして修正を加えるということを繰り返してデザインの決定版を作ります。デザインの仕事が一通り終わったらパターンという衣装を作るもとになる型紙を作ります。(デザイン画はお一人で描くのでしょうか)そうです。でも同じ衣装の子や演出さんにアドバイスをもらってブラッシュアップしていく感じです」
――今回の作品『お気に召すまま』は喜劇ですが、衣装にはどのようなイメージを持たせたいですか。
野「喜劇なので明るくて楽しい雰囲気を大事にしたいと思いました。色味も明るいものを使っていたり、あとはコンセプトで『森の中』とか『自分らしく生きる』といった言葉を演出さんからいただいたので、そういうことも意識しながら舞台と合うように作っています。色は最も目に入る情報だと思うので色味を気にかけています」
――本番を迎えた後の衣装はどうなるのでしょうか。
野「持ち帰るキャストさんもいらっしゃいます」
秋「大掛かりなドレスやめったに作らない甲冑(かっちゅう)のようなものは今後の資料にもなりますし、使い回しもできるので保管することもあります。それ以外はキャストさんにプレゼントしています」
――今回のお芝居をつくるにあたってポイントはありますか。
秋「煮詰まってくるとやることもいっぱいありますし、大変にはなると思うんですけどお芝居とお話の力を借りて楽しく活動をして終われたらいいなというふうに思っています」
野「演出さんと話した大きなコンセプトというのが『自分らしく生きる』というものです。お芝居の場面転換によって衣装をチェンジしたりすることがあります。私が意識しているのは、自分らしさを最終的に出していく変化として衣装を表現できたらいいなと思います。デザイナーさんは毎年変わっているのですが、デザイナーさんによって衣装の特徴も現れています。これは私の願望ですが最終的に作った上で〝私の色〟も出しつつ、いい感じになってくれたらいいなと思いながら制作していきたいなと思っています」
――MSPのどのようなところが好きですか。
野「かなり大規模な学生演劇というのが特徴になってくると思います。学生の今しかないこの瞬間を注ぎ込んだ演劇というか、熱意が集まる場所はなかなかないんじゃないかなと思います。さらに学校側のバックアップで全力を注ぎ込める環境を用意していただいているからこそ、そういう場は本当に貴重だと思います。いわゆる青春を注ぎ込んだ、その場自体が魅力的です」
秋「他の演劇サークルも時々見にいったりしています。お芝居を好きな人たちばかりなので、多分熱量に関してはどこの演劇も変わらないと思います。規模の大きさがMSPの持ち味です。1000人くらい入るアカデミーコモンホールでやっていることもそうですし、美術さんもすごく大きなセットを作りますし、衣装も他の団体だと既製品を集めることが多いと思うのですが、一から作るオーダーメイドというとことを含めた規模感が魅力だと思います」
――お二人にとって演劇とはどのようなものですか。
秋「MSPに参加してから、他の方の舞台活動も見るようになったし、知り合いがいなくても興味を持って演劇を見ています。演劇を見たことによって、さらに別のことに興味を持てるので、世界が広がりまるで夢のような感じです」
野「演劇とはエンターテインメントで、誰でも楽しめるすごく敷居の低いものだと感じています。シェイクスピアはなかなか読んでみようとは思わないじゃないですか。難しい話が多いですが、実際に動いている人を見るだけで受け取り方も全然違うと思うので、映画やアニメや漫画みたいな手軽さで皆さんにも捉えてほしいと思います」
――公演を楽しみにしてくださっているお客様に向けてメッセージをお願いします。
秋「何着作るかはまだ分かりませんが、衣裳部一同頑張って衣装を作ります。お芝居や役者さんをメインに見る観客の方が多いと思いますが、衣装も役者さんの役作りに大いに関わっているので見てほしいなと思います」
野「今年は喜劇ということもあって、衣装の力でワクワクドキドキさせられるようなものをみんなで頑張って作っていくのでぜひご覧ください!」
――ありがとうございました。
[橘里多]
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