最後の夏に有終の美/全日本大学ビーチバレー選手権
会場には容赦なく太陽の光が照り返し、選手たちを苦しめる。体感温度は40℃近い。砂浜のコートを裸足で駆け回る選手にとっては耐え難い苦しみともいえる。インドアバレーとは違い、砂浜に足をとられ、日照りで体力を奪われる、プレー以外の障害の多さが特徴とも言えるビーチバレー。砂上のデスマッチを制する者こそ王者の冠を手にできる者といえるのだ。明治は、ビーチバレー部というものはなく、普段はインドア。このぴあカップはビーチバレーを専門にやっている者の出場も許されているため、大学の実力とは違う、サバイバル戦が予想されていた。
佐野(裕)・松本組は関東ランク1位。その貫禄を、いつもと違う地である須磨海岸でも見せつけていた。砂浜とは思えぬほどのジャンプから繰り出されるスパイク、執念のレシーブ。どれをとっても完璧といえた。予想通りの決勝進出に「今年は優勝しかないと思う」(佐野(裕)主将)。余裕すら垣間見えた。臨む決勝。相手は、優勝候補ナンバーワンとの呼び声の高い福岡大。福岡大はビーチバレー専門のペアの構成。その実力はビーチバレー日本代表の西村(晃一氏・ビーチウインズ)のお墨付きを得るほど。ビーチバレー界の期待の星なのだ。そんな相手に明治は序盤からなかなか自分たちのプレーができず、ポイントを奪えない。リズムがうまくつかめないまま、1セット目を奪われてしまった。休憩を取る間、二人はお互いの方針を確かめ、次に望みをつなげた。そして、特設ステージの、熱気上がるコートに戻る。
彼らの攻撃は1セット目とは別物だった。佐野(裕)主将得意のスカイサーブ、本職はセッターとは思えぬほどの松本のキレのあるスパイク…。ビーチバレー界の期待の星を圧巻し続け、点差をどんどん離し、相手を翻弄。2セット目奪取に成功した。迎えた3セット目で、状況は一変。2セット目の攻撃は相手にうまく拾われ、逆にコートに落とされる。その繰り返しで、逆転しかけても相手に全部持っていかれ、あっさりと幕を閉じた。「やっぱ、相手のほうが上。ひとつひとつがうまい」(佐野(裕)主将)。彼らの夏は幕を閉じた。だが、熱戦に、会場の拍手は鳴り止まなかった。さらに、選手控えのブースにまで、ファンが松本に写真を頼みに殺到するという場面も。彼らにとって思い出深い大会となったはずだ。
「また、ビーチやるっしょ?」。どちらからともなく出る言葉。大学を卒業しても、ビーチバレーをする決意を固め、彼らは帰路に着いた。
関連記事
RELATED ENTRIES