(2)矢島雅彦

1999.01.01
 道場で、一人黙々と練習を続ける人物がいる。矢島雅彦(文2)だ。大学拳法界の雄としてその名をとどろかせる明大拳法部で、矢島は一般入部生にも関わらず着実に結果を残している。彼が拳法と出会い、強さを手にした背景とは――。

努力で得た強さ

 大学でも部活に入りたいと思っていた矢島。さまざまな体育会を回り、たどり着いた場所が全国から集められた強豪選手と一般入部生が共に汗を流している拳法部だった。防具を身に付け、突きや蹴りを体験した後に見た練習試合は、矢島の期待をはるかに超えていた。「あの力強さや迫力が今でも忘れられない」。矢島が拳法にひきつけられた理由は、これだけではない。「拳法は団体戦でも試合のときは1対1で、1人の勝敗がチームの勝敗に大きく影響するスポーツ。だから1人が負けることが許されないんだ」。中高の部活は他人任せで不完全燃焼だった矢島にとって、自らの手で勝利を手にしなくてはならない拳法は、まさに自分がやりたいと思っていた競技だった。矢島はすぐに入部届を提出した。

 矢島には、入部当初から続けていることがある。それは休憩時間に突き10回、全体練習後に筋トレと、少しでも長く拳法の練習をすることだ。「たかが突き10本でも、少しでも勝利に近づけるなら」と人一倍努力を惜しまない。勝利への飽くなき執念が原動力となり、「どんどん成長が見込める有力株」(黒田前主将・営4)と認められた矢島は一般生で誰よりも早く団体メンバーの座を勝ち取った。

メイジで得た強さ

 その矢島でも、どうしても勝てない相手がいる。それはセレクション組の同期、尾川(政経2)と後山(営2)だ。一般組では一番の強さを誇る矢島だが、「練習では指導役、試合では常に勝つ存在」の2人には10本勝負で1本も奪えないことも多い。それでも「最後に1本だけ奪えたときは本当にうれしい」と自らの成長を実感する。後山は「(矢島は)どんどん強くなっていく。負けたくない」と矢島の強さに太鼓判を押す。矢島にとって尾川と後山は「拳法に対して本当に真剣で、その姿勢も、強さも学ぶ点はたくさんある」よき同期でありライバル。こうしたセレクション組と一般組が切磋琢磨しあう関係こそが、明治の強さを支えている。

 4年生が引退し、出場機会がさらに増えるだろう矢島は、今後の抱負を「姿勢で見せること」と話す。「戦力面や技術面は尾川と後山が引き受けてくれる。一般組は、拳法に対する真しな姿勢を後輩に示していく」。部活としての厳しい面、拳法への姿勢を自分たちが示し、後輩に伝えていきたいと語る矢島には一拳士としての揺るぎない意志がある。矢島は、明大拳法部を担う存在として、これからも日々精進していく。

◆矢島雅彦 やじままさひこ 文2 明大中野高出 172㎝・72㎏