王者奪還の壁~国士大~

1999.01.01

王者奪還の壁

 「打倒・国士舘」。寮の食堂にあるホワイトボートには昨年、ライバル国士大に対する部員の熱き思いが書かれていた。毎年、各年の目標を記すというこのホワイトボード。部員たちは毎朝毎夜その紙を見ることで、今までの苦い思いを振り返って自分を奮い立たせていた。
 インカレ団体戦では最多優勝16回を誇る本学も、近年では優勝できていない。その一方で今年、国士大は3連覇を達成して不動の座を手にしている。6月の団体戦において本学は2年連続準決勝で国士大に敗退。しかしその結果は2戦とも同じ敗北とくくられるものの、年々その差は埋まりつつある。
一昨年の団体戦では0―5と惨敗。その戦いぶりは、古豪という威風すら感じられないほどの圧倒的な力の差を見せつけられた。しかし、新監督を迎え、新体制の昨年。また花本主将(営4)の改革が本学に変化をもたらした。専制的リーダーとして部を統一させ部員の意識改革に挑んだ花本主将。新しく朝練習を行うことで練習量を増やしたことに加え、ミーティングを行うことで部員の意識を統一。藤原監督の就任で甘えや妥協を求めない「王座奪還、強豪復活するための稽古」(藤原監督)で汗を流し続けた。そして迎えた昨年の団体戦。部員たちの心構えは明らかに成長していた。「団体戦優勝は自ずとできた目標。『今年の目標は』と誰に質問しても同じ答えになる」(花本主将)。全部員が自発的に頭を丸めるなど、かつての王者としてのプライドがそこにはあった。また、国士大でも団体戦2週間前には自主的に頭を丸める習慣があり、これにより両雄の気持ちの持ちようは近づいた。
 そして臨んだ今年の無差別団体戦。しかし結果は、0―4の敗退。ワールドグランプリ優勝の石井慧(国士大)選手を筆頭に重量級の豊富さが目立つ国士大に対し、明大は軽中量級の選手が多く、そこで足をとられる形となった。しかしその苦戦を強いられた中でも、81kg級花本主将と100kg超級の立山(国士大)の一戦は大きな意味があった。体重差は60kg。引き分けさえすれば大金星といえる戦いだったが、中盤に効果一つ奪いリードを見せる。その体重差を恐れもせず、ただ自分に与えられた試合に勝つことだけを考えて積極的に動いていた。最終的には、惜しくも指導を取られて引き分けとなってしまったが、明治の意地が垣間見えた戦いだった。
 残念ながら王座奪還の夢は今年へと持ち越しとなった。「次こそは、今の3年生を中心にぜひともインカレ団体戦で優勝してもらいたい」(花本主将)。今もなお続く厳しい稽古。毎日かいているその汗は国士大に勝つため。「皆の意見を取り組んで、来年は全員で戦って勝つ」(田中新主将・政経3)と語る顔つきには迷いない一筋の目を持っていた。
[徳山健二郎]

花本主将が一足先にライバル大学を制す

 花本主将は昨年の個人インカレで見事、学生王者の座を手に入れた。そこで彼は、チームより一足先に個人として、ライバル大学である国士大の選手を下した。花本主将のこれまでの真価が試された決勝戦。相手は国内のみならず、国際大会でも活躍を続ける81kg級期待のホープとされた加藤(国士大)であった。花本は加藤に対し過去に一度敗退を喫している。今回の個人インカレ優勝は学生王者の称号を手にしただけでなく、因縁の相手を下した大事な戦いだった。
 加藤が得意とする寝技を研究してきたことで、試合では一度たりとも寝技に持ち込ませることなく戦った花本主将。最後には残り10秒で駄目押しのポイントを奪い、最後まで逃げず、攻める姿勢を貫いた。
団体戦において、つねに選手たちの課題となっていたのは、最後までどん欲に攻め続けるという姿勢の不足であった。「優勝しか考えていない」(花本主将)という気持が勝利を導き、ライバル大を制した。そのことで、どん欲で屈託な精神をチーム全体に植えつけることが、国士大へ勝つための最重要条件ということが花本主将により証明されたといえる。ライバル大学を制した花本主将はすでに新たなライバルを見つけ駆け出している。団体優勝は果たせなかったものの、花本主将は4年生として、主将として有終の美を飾った戦いは部員たちの心に強く残ったはずだ。花本主将が背中で見せた、“どん欲に、最後まであきらめない姿勢”を部員、そして花本主将にも忘れずにいてほしい。

花本隆司 はなもとりゅうじ 営4 崇徳高出 178cm・81kg