(26)静と熱の守護神・寺島悠介/日本学生選手権

 今年度、本学が惜しくも準決勝敗退に終わった秋季リーグ戦。そのリーグ戦中、藤井監督の選ぶ「今試合のMVP」に最も多く名前が挙がったのはGK寺島悠介。その寺島は見た目の冷静で穏やかな印象とは反対に、強い精神力と熱い思いを持っている。

 本学アイスホッケー部門には、GKが2人しかいない。それは浅利部門主将(政経4)と寺島だ。寺島は1年生ながらリーグ戦では開幕戦の対日大戦から先発GKを務め、チームを3戦連続の完封勝利に導く。そしてその後何度も明治のゴールを守りきった。初め「1年目だから浅利主将を盗み見ながら常に挑戦していきたい」という控えめな言葉が聞かれたこともあった。しかし、浅利主将がケガにより出場できない時やチームの調子が悪い時でも「中心となって危ない場面をよく守った」(藤井監督)。もはや浅利部門主将にも引けを取らない、チームの守備の要になっている。

 常にチャレンジ精神を持つ寺島は中学卒業時に一大決心をする。元実業団GKのコーチがいるアイスホッケーの名門・釧路江南高に入るため、高校浪人を決意。1年間かけてでも「強くなりたかった」――その強さへの執着で2006年のU-18世界選手権ではゲームベストプレイヤーに選ばれた。そして寺島は明治へ入学。日本代表などが多く輩出されるレベルの高い本学に入ってもなお「誰よりもうまくなりたい」と、常に上を目指す姿勢は今も消えていない。

 1月6日から開催されるインカレは、1年生の寺島にとって初めてのインカレ。リーグ戦で悔しい思いをした明治にとっては、名誉挽回すべく臨む試合であり今年度の締めくくりとなる。「(今年度)最後だから勝って終わりたいですね」。淡々と答えるその姿からは、冷静ながらも心の奥に燃える闘志が見えた。激しくなくも熱い守護神・寺島。インカレでもゴールを守り抜き、さらに明治を優勝へ近づけてくれるに違いない。

◆寺島悠介 てらしまゆうすけ 政経1 釧路江南高出 177cm・72kg

<明大アイスホッケー>

 今年も2008年1月6~9日にかけて北海道苫小牧で日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)が開催される。本学は前大会で決勝戦まで駒を進めたものの、東洋大に完敗して6連覇の夢が絶たれ、また秋も3位と振るわずに幕を閉じた。昨年の秋を最後に、タイトルをつかめずにいる明治。最後の大会であるインカレで彼らの逆襲劇を見ることが果たしてできるのであろうか。

 今回は旧ウェブで公開されていたコラムを紹介します。2年前、石岡元主将(平18年政経卒)率いる明治黄金世代といわれた世代の最後のインカレについて書かれたコラムです。

(2)黄金世代の最終戦

 石岡敏、鈴木雅仁、鬼頭俊行、外崎潤、阿部竜太、山本一貴。昨年卒業した彼らは黄金世代と呼ばれた。
1年生の頃からレギュラーとして活躍し、各大会で個人賞を受賞。そして彼らが入学してから4年生の最後のインカレまで3度の日本一に輝いていた。最後のインカレは4度目の日本一が懸かっていた。

 第1ピリオド開始10分。会場に流れる音楽と選手たちの歓喜の声の間から小さな金属音が聞こえた。9分36秒、9分52秒と立て続けに法大に2点奪われ、ゴール前を守っていた鬼頭がスティックをゴールポストに叩きつけたのだ。第1ピリオド、スコアは1-3。秋季リーグ戦4位の法大相手に2点ビハインドは私たちに大きな不安を抱かせた。
 最後の大会に、彼らが万全な状態で試合に臨むことができていなかった。石岡アイスホッケー部門主将は肩の脱臼のため秋季リーグ戦をほとんど欠場。また守備の要である外崎も秋季リーグ戦中盤で肋骨を骨折し、サポーターを巻いてのインカレ出場だった。

 「キャプテンが反則なんて何やっているんだ!ひっこめ、石岡!」。カメラを構える私の後ろから訛りのヤジが飛ぶ。迎えた第2ピリオド。リードしている法大がこのまま逃げ切るため守備を徹底。明治得意のカウンターを狙おうにも法大の選手が前に来ない。厚い守備を割ることができず、パスもつながらない。リードされ、焦り得点できない悪循環。いつもの明治の負けパターンだった。ベンチからもいつしか声援の声は小さくなり、聞こえるのは観客席からのヤジばかり。
 しかし第2ピリオド11分25秒。法大の反則で迎えたパワープレーの機会。ゴール右から伊藤(当時政経3)のシュートで反撃が始まる。続けて15分50秒。ゴール前のパックを今川(当時商1)が押し込み同点。
 同点で迎えた第3ピリオド。じわりじわりと獣が獲物を追い詰めるように明治が法大のゴールを狙う。13分36秒。秋季リーグは石岡の代行キャプテンを務め、リーグ戦・インカレと全試合出場した鈴木が得点。そして試合終了のホイッスルとともに彼らにとっての4度目最後の日本一が決定した。

 試合終了後、リンクの上には涙ぐむ彼らがいた。個々の力を持ちながらも、なかなかうまくいかなかった最後の1年。反則の多さや、怪我、そして同期間での衝突。いつも強気な彼らの涙が今大会の重要性を物語っていた。
 最上級生なのに反則が多く、怪我も多い。チームをまとめるどころか同期の仲が悪い。しかし誰よりも負けず嫌いで、誰よりも目立ちたがりだった黄金世代。彼らは強烈なインパクトと感動を残し卒業した。ムラサキと黄色のユニフォームを着た彼らが揃うことがないというのは残念であり、そして最後の試合がこのインカレ決勝戦でよかったと心から思う。
【アイスホッケー担当・森 祥子】

 それぞれの力は大学界でもトップクラスの彼らでもインカレに懸ける思いはとても大きかったのです。現在はそのほとんどが実業団で活躍している黄金世代の彼ら。彼らの話は卒業して2年経つ現在でも話されるほど。
 インカレの日が刻一刻と迫る現在。そして同時に、明治の選手たちの気持ちも王座奪還に向け励んでいます。メンバーは違っても、今年北海道の地で彼らの逆襲劇が見られることに期待しています。

<インカレ特集前後のページ>

1.畑中理/歴史~インカレ篇~
2.寺島悠介/黄金世代の最終戦
3.梁取慎也/秋季個人成績
4.江端勇人/才能溢れる男達が演出した2冠物語は終わりなく続く

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