(2)寡黙な努力家・伊藤
~挫折を乗り越えて~
伊藤は入学当初、野球を中・高と続けていたこともあり野球サークルに入ろうと考えていたが、「想像していたものと違った」ため最終的には拳法部へ入部を決める。拳法を選んだ理由は、「武道系は、いざとなったとき身を守るため」。拳法は今まで体験したことがなく、伊藤にとっては未知の競技だった。
伊藤は拳法に対しストイックに取り組み、成長を日々実感していく。そして1年次の矢野杯で、伊藤の地道な努力が実った。カウンターが面白いほど相手に決まり、並み居る敵を倒して「級の部」で優勝を飾る。「自分の練習の成果が出てうれしかった」。矢野杯がきっかけで、伊藤は自分の最大の持ち味は素早い動きで相手に突き刺す「カウンター」だと意識するようになった。伊藤のカウンターの鋭さは今や同期も認めるほどだ。
個人タイトルを手に入れ、順調に成長を遂げていた伊藤だが、昇段試験に合格し、黒帯をつけるようになった2年の終わりごろに大きな壁にぶち当たってしまう。伊藤が上達したことで、黒田主将(営4)などのセレクション組もだんだん手加減をしなくなり、「レベルの差を実感した」。これがきっかけで気持ちが揺らぐこともあったが、拳法を辞めることはなかった。「手を抜かれなくなったということは相手も自分の実力を認めている」という自覚が芽生えた。そのことが伊藤の退部を踏みとどめ、何よりもプライベートでも仲の良く、ライバルでもあり励みにもなる同期の存在が、伊藤を精神的に強くした。
~縁の下の力持ち~
また伊藤はひたむきに練習に取り組む姿勢を買われ、監督から主務に指名された。主務の仕事はやることが多く、「金銭を扱うときはとても緊張する」と常に責任も伴う。最初は「主務をやらされるくらいなら辞める!」と主務に対してマイナスイメージを抱いていたが、次第に「大変だけど事務の仕事はやりがいがあるし、自分が部を支えていると実感できる」ことで忙しさも苦と思わなくなった。そんな伊藤に「要領よく仕事をこなしてくれているので頼もしい」(黒田主将)と部員たちは厚い信頼を寄せ、伊藤も「拳法部を裏から支えられるのは自分しかいない」と自信を持って自分の役割に臨んでいる。
伊藤は現在じん帯を痛め、調子は万全でない上、今季の団体メンバー入りは前期のみ。しかし「最後のインカレはメンバーの7人に選ばれて絶対に出る!」と気合は十分だ。加えて伊藤には一般入部でありながら、セレクション組にめげず4年間練習に励み続けた「根性」がある。今日も伊藤はインカレメンバーに入るために、黙々と練習に向かう。
◆伊藤大輝 いとうだいき 政経4 成城高出 179㎝・73㎏
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