被災地で奉仕活動/ローバースカウト部インタビュー

 1月1日に発生した令和6年能登半島地震から2カ月が経過した。今年度『一枚岩』をスローガンとして掲げる明大ローバースカウト部。3月11日から被災地に赴き、現地のボランティアとともに奉仕活動に参加している。

 現地でボランティアに取り組む辻楽久主将(法3=明大中野)、石橋優凛(文3=叡明)、松岡歩佳(文3=明大明治)のインタビューをお届けします。
(なお、この取材は3月27日に行われたものです)

――今回の活動に参加することになった経緯をお聞かせください。
辻:活動の理念として、ボーイスカウトにひもづいた奉仕活動を代々行っています。今回の能登地震は、地域貢献や社会貢献のようなボーイスカウトの面を強く持っているので、部の存在意義として何かできることがないかと考えた時に、ボランティアに参加しようという経緯になり、自分たちで企画をして今に至っています。

――現在の能登の様子はいかがですか。
辻:自分は昨日能登に到着したばかりなので完全に現場の状況を把握しているわけではないですが、実際に家が崩壊している様子を見ると胸が痛いです。街のいたるところで節水の標識などが置かれていたりして、3カ月経った今でも被害の跡が残っているなと感じました。
石橋:僕は3月18日からボランティアをしていますが、崩れていたり道路が隆起したりしている状況が目に止まります。僕たちがいる七尾市は、建物の崩壊した数がやや少ない方ですが、北上するとさらに建物の崩壊数が増えるので地域ごとの被害の大きさの違いを感じました。
松岡:思っていたより被災地という感じがしなかったというのが率直な感想です。旅行のキャンペーンの影響もあって復興が意外と進んでいるのかなと思いながら来ました。しかし、被災地の家の中は当時のままでした。『手もつけられないからボランティアをお願いしています』という方が多くいらっしゃって、現地でボランティアをしてみると全く被害宅まで復興の手が回っていないのが現状だと感じました。

――皆さんの1日の活動スケジュールをお聞かせください。
石橋:朝の8時半にボランティアセンターに行って、9時からオリエンテーションと活動のグループ分けに関する説明があります。お昼の休憩を挟みながら9時半から15時半頃まで活動して宿に帰り、夜の8時にミーティングをして就寝というスケジュールです。

――現地で一番大変な仕事とやりがいを感じる仕事をお聞かせください。
石橋:一番大変な作業は、倒壊した家から荷物や家財を出す作業です。普段は動かさない冷蔵庫や畳のような大きなものを運ぶので肉体労働で大変です。やりがいは、作業が終わった後にご依頼主の方から感謝の言葉をいただけることです。
松岡:大変なことは、自分は家が壊れたこともないし災害に遭ったこともないので、実際にそういう場を目の当たりにして当事者の方々への対応が難しいことです。やりがいは『女性の方に来てほしいです』と希望を出していた方がいらっしゃることです。ボランティアは力仕事が多いので、畳も一人で運べない私はこの活動をするにあたって悩む部分もありました。それでも、女性に来てほしい方がいることを初めて知って、来てよかったと思いました。
辻:大変なことは、ボランティアとして参加しているので地域センターの人たちから言われたことしかできないことです。現場でご依頼主の方と地域センターで要求が少し食い違ってしまったことがあったので、そこは難しいところだなと思いました。精神的には、やはり自分も被災した身ではないので、そこまで親身になって寄り添うことができなくて、もっと気持ちをわかってあげられたらなと思う面があることです。今日もご依頼主の方が涙ぐんでいる様子を見て胸が痛くなりました。やりがいは、作業が終わった時にご依頼主の方から『ありがとうございました』と言ってもらえることです。

――大学生として現地でボランティアをする中で、ご自身が大切にされていることをお聞かせください。
石橋:一つ目は、ご依頼主の気持ちに寄り添うことです。自分たちは被災の経験がまだないので、100パーセント気持ちを理解できるわけではないですが、できるだけ気持ちに寄り添って活動することは、ボランティアとして参加している僕たちが大事にするべきことだと思っています。 もう一つは安全管理です。活動をしている中で、僕たちがケガをしてしまうと、ご依頼主さんも申し訳ない気持ちになると思いますし、お互いにいい気持ちにはならないので気をつけています。
辻:家から出さないといけない家具を搬出して仮置き場まで運ぶことが僕たちの仕事ですが、その家具たちはこの後廃棄になるものです。しかし、捨てるからといって雑に扱うのではなく、その人の思い入れがある家具だと思うので丁寧に扱うようにしています。
松岡:その日の活動を振り返る時間を大切にしています。例えば、ボランティアの活動を通して現状を見ることはできても、当事者の方の気持ちまで理解することは、どうしても限界があると思います。奉仕をして温かい気持ちになったという思い出で終わらせるのではなくて、私たちが奉仕先から帰った後のご依頼主の方の生活も考えたりしています。奉仕した経験を基に、今まで及ばなかったところまで想像し、それを受け止めることができるような活動にすることを心がけています。

――現地の皆様との交流はいかがですか。
石橋:80人から140人ほどのボランティアの方が参加してくださっています。僕たちが着用しているアウターの背中に〝明治〟のロゴが入っているのですが、それを見て声を掛けてくださる方もいます。その方が明大のO Bだったり、駿河台キャンパス近辺の大学に通っていた方だったりするので休憩時間にお話をしたりしています。

――普段の活動内容をお聞かせください。
辻:今回のような長期奉仕もやりながら、土日のいずれかに定期的に活動することもあります。定期的な奉仕では、例えば東京マラソンやボーイスカウトとして活動しています。また自分たちの地区ごとにボーイスカウトの組織があるので、自分たちとは異なる組織のイベントを手伝いにいく1日単位の奉仕活動もあります。他には夏合宿と春合宿を行なっています。夏合宿は、10日間の長距離移動とキャンプ合宿です。昨年度は北海道の苫小牧から北上して小樽まで歩く移動キャンプを行いました。今年度の春合宿では四国に行って、野外で8日間のキャンプ生活をしました。夏合宿と春合宿のための準備合宿も何度かあります。そういうふうに1年間を通して、2カ月に一度は合宿を挟んで活動しています」

――明大ローバースカウト部の今年度の目標をお聞かせください。
辻:今年度のスローガンは『一枚岩』です。部の方針として一番改善したい点として、内部の風通しを主軸に考えています。体育会の中で活動内容も特殊な僕たちは、少人数の班で活動しています。そこで意見の対立があると、その先の活動に響いてしまう側面があって、みんなが意見を出し合うことを避ける雰囲気があるので、あまり良くないと思っていました。今年度からは匿名の目安箱をつくって、部に対する要望や改善点を入力してもらい、それに対して毎週ミーティングで対処していくようにして、内部の風通しを改善していこうと思っています。

――ありがとうございました。

[田上愛子]

(写真はローバースカウト部提供)