NO.20 田中政勝
快速ドリブラーが目指す先
早朝の八幡山グラウンドに、懸命にボールを追う田中の姿がある。絶対に田中は練習に手を抜かない。「100%の力で練習しないと、レベルアップできない。それに練習の時にふざけてる人がいたらやっぱり一緒に練習したくないって思う」と、サッカーに真剣に取り組む。その姿勢は周囲にも伝わっている。あのまじめ一筋な石井主将(営4)からも「まじめ」といわれるほどだ。2年生で集まるときも田中が中心。「集まろうっていう言い出しっぺは自分じゃないんですけどね。いつの間にか自分が中心になってる」。まじめなその姿は同期からの信頼を得、まとめ役をしっかりとこなしている。しかしその立場をおごることなく、謙虚さも忘れない。まじめで謙虚に練習へ向かうその先には、達成したい目標がある。
自分の武器・スピードに目覚めたのは小学校6年生の時、サイドハーフに抜てきされてからだ。「秘密特訓」と称して実家の前にあった坂を、練習がない日はひたすらダッシュ。武器に磨きをかけた。しかし進学した名門・国見高校では磨いた武器を発揮できず、部としても結果を残すことができなかった。その悔しさから、引退時に「同期と大学で見返そうって約束をした」。しかし田中はまだその約束を果たせずにいる。先日行われた早大戦では同期だった中川(早大)がスタメン出場し、自分は出場もできなかった。高校時代ライバルとして切磋琢磨した同期の活躍を見て、「本当に悔しい」と漏らし、唇を噛み締めた。
トップでレギュラーになって活躍する。ずっと持ち続けてきたその目標を達成するためには、越えなければならない高い壁がある。ポジション争いをしている、U-22日本代表にも選ばれた長友(政経3)の存在だ。長友のすごさは誰よりも自分がわかっている。だが「最初から負けてるなんて決めつけたくない」と力強く語った。スピードを生かした突破力だけは長友にも負けない自信がある。あの劇的(な)逆転勝利を収めた天皇杯予選・駒大戦も、途中出場ながらサイドを駆け上がり勝利に貢献した。しかし、試合後の田中は決して満足した顔ではなかった。「チームは勝てて良かった。でも自分としてはチャンスを生かせず、まだまだです」と課題を口にする。長友を越え、レギュラーを獲得したい。目標のための飽くなき向上心は、部内一といってもいいだろう。田中はその強い意志と謙虚な姿勢で、今も目標に向かって走り続ける。
◆田中政勝 たなかまさかつ 営2 国見高出 170㎝・65㎏
★DF 背番号・23
◎家族へ◎
試合会場にはよく選手の家族が応援に来ている。しかしそこに田中の家族の姿はない。それは実家が遠いからではなく、田中は応援してくれている家族には自分が活躍している姿を見せたいという思いがあるからだ。そんなご両親へは「今は見守っていてほしい。期待に応えるしかないって思ってる」。家族を試合に呼べるその日まで、田中は努力を惜しまない。
☆次回予告☆
※第21回は天皇杯1回戦で逆転の火蓋を切る1点目を決めたFW山本紘之選手(政経1)。「山本とはよくご飯を食べに行きますが、彼の一発芸は明治トップクラス。サッカーに対してはすごくひたむきで、がむしゃらなプレーはチームに活気を与えてくれる」(田中)。11月中旬掲載予定。
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