第5回  「故障からの復帰でチームに好影響~3年藤田の好走~

1999.01.01
 11月25日、1万m記録挑戦競技会。この日、藤田秀之(文3)は29分53秒54の自己ベストをマークした。長く故障に苦しんでいた藤田の自己ベスト更新は、藤田にとってはもちろん喜ばしいことだが、チームにとっても良い刺激をもたらした。

 藤田は1年時、箱根駅伝の16人のエントリーメンバーに選ばれた選手。しかし故障を引きずり続け、この3年間は目立った成績を収めていない。
 今年の夏、Aチームの合宿地・北海道に、藤田の姿はなかった。Aチームに入れなかった選手たちは夏合宿の間解散し、それぞれ実家に戻り練習を積むことになる。藤田も実家のある栃木へ。しかし、故障もあり、練習には身が入らなかったという。
 夏が終わって八幡山に再び選手が集まり、久々にチームに合流した藤田は驚いた。「(故障などで)合宿中走れない選手もいて(チーム状況がかんばしくなく)、自分も上がらないとまずい」。また、後輩達は合宿を経てさらに強くなり、意識も高まっていた。「3年として、このままでは終われない」。上級生としての自覚が、取り残されたという弱気な気持ちを抑えた。それからは開き直って練習を継続して積んできた。
 「(自己ベストを出した)実感はまだない。でも気持ちのどこかでは自信になった」。一気に約1分10秒もタイムを短縮。それでもゴール時に喜びを出さなかったのは、2位だった悔しさと、まだまだこれからという向上心があるから。

 「長く故障していた人がベストを出すと故障している他の人にいい意味で焦りが出てくる。自分もそうなので焦ります」(河口・文2)。故障すると本来の目標が見えなくなり、気持ちが切れやすくなる。脱出するには、“絶対に復帰する”という強固な精神力、“チームには自分がいなくては”という自覚が不可欠だ。河口をはじめ、故障に苦しんでいる選手、足踏みしている選手が今いる殻を破ることができれば、チームはさらに活性化するだろう。互いの活躍に刺激され、向上していく。これこそチームの理想のあり方といえる。

 「1万mでいい記録が出てきて、上の選手の間にも(“頑張らないと”という気持ちに)火がついた」(安田・情コミ1)。箱根駅伝まであと1カ月を切り、一丸となって「箱根シード権」という目標に挑もうという姿勢がチームに表れてきた。