優勝特集(3) エースのゆえん/水野裕哉

1999.01.01
 優勝に貢献した選手をクローズアップする秋季リーグ戦優勝特集。第3回は明治の押しも押されもせぬエース・水野裕哉(営3)に迫る。

 リーグ戦4日目、勝負の早大戦。1番水野対早大のエース・時吉との試合は取っては取られてのシーソーゲームだった。鋭いラリーの応酬が続き、そして最終セット。最後の1点を奪った瞬間、水野はボールを宙高く投げ上げ、体全体で喜びを爆発させた。この勝利が明治に勢いを与え、優勝を大きくたぐりよせた。

 「そこまでプレッシャーは感じていなかった」と、この熱戦をひょうひょうと振り返るその男こそ明治のエース・水野だ。秋季リーグ戦、5戦全勝を飾った水野は殊勲賞を受賞。だが本人にとっては「もらえるなら、もらっておこうという感じ」らしく、さらには「特に欲しいと思っていなかったって言ったらあれだけど」などと、無邪気な笑顔で聞いているこっちが驚くようなことをさらっと言う。しかし、裏を返せばそれだけ「チームの優勝」を思い、この秋季リーグ戦を戦ってきたということだ。
 「水野が勝たなくちゃ始まらない」(平岡監督)と監督から絶対の信頼を置かれている水野。主将からも「チームの絶対的エース」(平屋(慶)主将・営4)と信頼が厚い。しかし、そのエースとしての信頼は水野の技術や勝率だけが生んできたものではない。リーグ戦の最中、セット間でベンチに戻ってくる選手に声をかける水野の姿があった。負けている選手にはアドバイスをし、勝っている選手にもこうすればさらに良くなると声をかけてから送り出す。「無意識にやっちゃう」と特に何か考えがあってのことではないが、そこには「試合をやってる人に勝ってほしい」という強い思いがある。そして自身に対しても、「自分が勝つことでチームに勢いを与えたい」と、何においてもチームを第一に考えている。そんな水野は「チームで勝てたらうれしいし、盛り上がる。試合に出ていない選手から、勝ったら何かパフォーマンスしてって言われたりも(笑)。そんなチームだからリラックスして試合に臨めるし、何より応援は力になる」と団体戦の良さ、明治というチームの魅力を何とも楽しそうに語る。
 どんなに苦しい場面でも決してあきらめず、自分個人のことよりチームを思う。やはり水野こそ明治大学卓球部のエースだ。

◆水野裕哉 みずのゆうや 営3 仙台育英高出 160cm・58kg