連載企画「合掌」 第6回 曽山直人
いかなるスポーツにおいても、賞をとるためには、そのスポーツにおいての才能と実力が要求される。もちろん努力も必要だが、前提として身体能力の高さとセンスは絶対というのが定説であろう。しかし、少林寺拳法部には、自らの努力で登り詰め、自らの力で定説を覆した男がいる。
曽山直人(農3)、彼は11月に行われた全日本大会(=インカレ)で、男子二段以上の部で見事、優秀賞(=2位)を獲得した。最難関部門であり、しかもこの部門では本学歴代の拳士でも敢闘賞(=入賞)が最高である。その中での優秀賞は快挙といえる。しかし、ただこの賞を取ったことがすごいのではない。曽山が取った、ということがすごいのだ。なぜなら、曽山は「高校の少林寺拳法部で、一番下手だった」からだ。「もともとスポーツ全般が苦手です。自分は運動神経がないと思います」。部で一番下手、だから大学では少林寺拳法部に入ろうとは全く思っていなかった。事実、大学でも少林寺拳法を続けようとしていた高校時代の同期の部員は、卒業後のために引退後も少林寺拳法を続け、段位(=二段)を取得していたが、曽山は取ろうともしなかった。だが大学に入り、もう一度少林寺拳法部に入ることになる。「もう少し頑張ってみようかな、続ければうまくなるかなって…」。淡い期待とともに、もう一度胴着に袖を通した。そして、その選択は間違っていなかったことが全日本大会で証明された。「あの時、辞めなくてよかった」。高校のとき、いくらあこがれても、どんなに手にしたいと思っても届かなかった賞を、自分の手でしっかりつかみ取った。
「曽山は誰よりも練習熱心で、努力家」(小澤・理工3)。高校時代からの付き合いで、全日本大会で組演武のパートナーはそう言う。誰よりも少林寺拳法が好き、だからこそうまくなりたい…。そのひたむきな心が曽山を支え、日本全国の中でも屈指と評価された演武を作り出したのだ。
「自分には才能がありません。言われたことを一回じゃできない。だから、自分は数をこなします」。連日、道場に通い続け、通えない日は自宅の自分の部屋で練習する。曽山は、昨年末からのオフシーズンにひとつの目標を掲げた。「一年間、毎日胴着を着る」。努力に次ぐ、努力。努力は自分に返ってくることを自ら証明した。曽山の挑戦はまだまだ終わらない。
◆曽山直人 そやまなおと 農3 川越東高出 166cm・68kg
◆主な個人成績
2004年11月 インカレ-男子二段の部 敢闘賞 曽山・有田(理工3)組
2005年5月 関東インカレ-男子二段の部 最優秀賞 曽山・小林(理工2)組
※学年は当時
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