連載企画「合掌」 第7回 山上真季
関東インカレ男女二段以上の部で最優秀賞。全日本インカレでは、敢闘賞に終ったものの、山上(営3)・小林(理工3)ペアに集まっていた周囲の期待は相当なものだった。そんな山上にとっての少林寺拳法。それは拳を強くするためのものではなく、心を鍛える武道だ。「格闘技は好きじゃないんですよ」。あっけらかんとした表情でそう語った。
そもそも、山上の少林寺拳法を始めようと思った動機というのは、強くなりたいと思ったからではない。その雰囲気からは想像できないが、もともとスポーツは得意ではない。自分のことを「文系」と言うように、中学生のときは美術部だった。そんな山上が少林寺拳法を始めた理由。それは今までの自分を「変えたい」からだった。「人の心を育ててくれる」。それこそ山上が考える少林寺拳法だ。少林寺拳法との出会いは高校時代までさかのぼる。それまでの山上は親にも、そして自分にも甘えていた。ピアノをやっていても、自分が嫌だと感じたらそこで止め、美術部時代も面倒くさいという理由から絵を描くことを途中で投げ出すのもしばしば。甘えていた。そんな山上を変えたのが高校時代の「少林寺拳法部入部」だった。雑務でも練習が大変でもとにかくやり通した。もう途中で投げ出すことはしたくなかった。 緊迫した会場に山上の気合のこもった声が響き渡る
そして大学で少林寺拳法部に入部したことが、山上をさらに変えていった。しかし、入部して1年たたないくらいまでは、少林寺拳法はさほど大きな意味のあるものではなかった。「何をやっているんだろう。高校時代の部活動をただ引きずっているだけじゃないのか」。1年の春、山上は退部を考えた。「春合宿を最後に辞めよう」。しかし、その春合宿が大きな転機となる。本学の春合宿は、四国にある少林寺拳法の本山で行われる。日本中から何十校と大学が集まってくる。山上は自分が今まで知りつくしたと思っていた少林寺拳法が、実はとても小さな世界でのものにすぎなかったことを思い知らされた。「自分はまだ高校と明治大学の少林寺拳法しか知らない。少林寺拳法をもっと知りたい。視野を広く持ちたい」。そこから山上の大学生活本当の少林寺拳法が始まった。
そして最高学年となった今、山上は「少林寺拳法部に入部したことで強くなった」と振り返る。熱くなれた。がむしゃらにもなれた。ひたむきさも教わった。そして、もう一つ大きく変わったことがある。今まで山上は目の前の問題に対して「自分がやらなくちゃ」と抱え込むことが多かった。しかし、それが現在ではなくなった。山上はそれを弱くなったのかもしれないと言うが、それは弱さではない。信頼できる唯一無二の仲間がいる証拠だ。
かけがえのない仲間を得、多くのことを学んできた山上だが、ただ一つやり残したことがある。それは全日本インカレ、男女二段以上の部で最優秀賞をとることだ。今年の全日本では涙の敢闘賞。以前までの山上ならもうそこで諦めていたかもしれない。しかし、途中で投げ出すという甘えた考えの彼女はもういない。今まで学んできたもの全てを最後この1年に懸ける。
◆山上真季 やまがみまき 営3 富士見丘高出 168cm
◆主な個人成績
2005年5月 関東インカレ―女子三人掛けの部
敢闘賞 山上・佐藤(農4)・清水(文3)組
2006年5月 関東インカレ―男女二段以上の部
最優秀賞 山上・小林(理工3)組
2006年11月 インカレ―男女二段以上の部
敢闘賞 山上・小林組
2006年11月 インカレ―女子単独有段の部 敢闘賞
※学年は当時
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