
大会事後インタビュー 田渕海斗/FINA競泳ワールドカップ
国際水泳連盟(FINA)が主催するFINA競泳ワールドカップ(以下、W杯)は、オリンピックに次ぎ、世界水泳、世界短水路選手権と並んで競泳の世界三大会と称されている。今大会日本チームはドイツのベルリン大会、ギリシャのアテネ大会に参加した。田渕海斗(情コミ3=日大藤沢)は第2戦のアテネ大会において、男子400メートル個人メドレータイム決勝に出場。4分13秒30を記録し、2位と0.08秒差での接戦を制して優勝を果たした。田渕は8月のワールドユニバーシティゲームズ(以下、ユニバーシアード)で優勝を収めておきながら、日本学生選手権(以下、インカレ)、アジア競技大会(以下、アジア大会)では満足のいく結果が出ていなかった。その流れを断ち切るように、W杯で見事優勝を飾った田渕の試合後インタビューをお届けする。
(この取材は10月22日に行われたものです)
◆10・13~15 FINA競泳ワールドカップ(ギリシャ・アテネ)
▼男子400メートル個人メドレー
1位 田渕 4分13秒30
――先日のW杯優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます」
――会場となったベルリン、アテネはいかがでしたか。
「初めてのヨーロッパですごく新鮮でした。言葉ももちろん違いますし、ユーロだったり使ってる通貨も違って、水泳以外の部分で新鮮さがありました。もちろん派遣された試合ではあったんですけど、すごくリフレッシュというか、気分転換にもなる試合だったかなと思います」
――食事面ではいかがでしたか。
「食事はパスタやパンがメインで、小麦が結構多かったです。なので糖質が取りづらくて、そこがネックではあったかなと思います。糖質はお米が一番取りやすくて、もちろんお米はあったのですが、ピラフであったりとかでやや油があったり、タイ米みたいな細長いお米で味が合わないという感じはありました。僕はゼリーやカステラなどをしっかり持って行ってそこで糖質補給をしていました」
――海外での試合が続いていますが、日本で泳ぐときとの違いなどはありますか。
「アテネで特に感じたのは水がちょっとしょっぱかったかなということです。あと地理的に晴れやすいからだと思うんですけど、外プールがいっぱいありました。屋外の長水路が二つと、短水路が二つぐらいあったかなと思います。なので屋内の長水路、短水路を合わせると長水路が三つと短水路が三つぐらいあって、好条件というか、広いところで泳げた感じはします」
――コンディションはいかがでしたか。
「ユニバーシアードでそこそこの結果が出て、インカレ、アジア大会はあんまり良くなかったというところで、不安ももちろんありましたし、泳ぎ込めていないというのが事前に分かった上でのW杯でした。ベルリン大会に関しては移動面で、最初11時間くらい飛行機に乗ってちょっと休憩して、もう1回6時間乗りました。本当に丸1日かかったような気分でした。長い移動時間で体がすごく固まってしまいました。ベルリン大会では筋肉が結構固まっていた状態で泳ぐことになって、コンディション的にはあんまり良くなかったです」
――どういったケアをされましたか。
「アテネ大会では、ベルリンの最終日の男子400メートル個人メドレーの後にしっかりウエートトレーニングを挟みました。筋肉を1回枯らすという作業をして、そこからケアを入れる感じです。筋肉を固くした後に柔らかくするという作業を行った結果、アテネ大会では筋肉が柔らかい状態で臨めました。いわゆる『餅』を想像していただけると分かるんですけど、筋肉がもちもちした感じになれたので結構良かったかなと思います。もちもちしていたから速かったのかなっていうふうに思います」
――ユニバーシアード以降「客観的に見て泳ぎ込めていない」とブログでつづられていましたが、具体的にはどういうことですか。
「試合前には『テーパリング』って言って『ピーキング』とも言うんですけど、 少し練習量を落として調整をします。それはつまり強化ではないわけで、その期間は心臓をドクドクさせて、はあはあするような追い込みができません。そうすると試合前は追い込み期間が短くなります。なので試合があればあるほど調整期間が増えます。例えばユニバーシアード前に調整して、出場して、ちょっと強化したらまた調整をしなければいけないっていう感じでした。連戦が1カ月ごとに4大会あったわけですけど、そうなるとどうしても2週間ぐらいしか強化ができないということになっていました。練習が足りなかったとか追い込めなかったとかサボったとかというわけではなく、時間が足りなかったという言い方が適切なのかなと思います」
――連戦中、疲労を取り切った状態で臨めましたか。
「結果的には取れてはいなかったのかなと思います。心身共に疲労はしていたのですが、その中でできる限りのことはやりました。ですけど、もっと結果を求めていけたら良かったのかなとは思います」
――「心身共に」ということですが、精神的な部分でも苦労されましたか。
「ピークをどこに合わせるかというところは大変かなとは思いますし、僕は一つ一つしっかり集中していきたいなとは思っていました。なので一つ一つ大会が終わるごとにまた次があるという思考をしていました。そういった精神的な部分も含めて、オフがないことで疲れて、休養が取れなかったことが精神的な疲労というところにつながったと思います」
――明確なオフの期間は取れそうですか。
「W杯が終わって少し取ったかなというところです。少しリフレッシュできたので、また元に戻していこうと思います。心が疲れないようにということも意識しながら、アテネ最終日でそこそこの記録が出たので、それを崩したくはないなと思っています。なのであまりオフを取らずに、かつ心が疲れない程度で開始していけたらなという感じです」
――W杯400メートル個人メドレーでは4分13秒30でした。どのようなレースプランで臨みましたか。
「バタフライは体が立っているという感じで、泳ぎがハマっていない感じがしました。バタフライで前に出ることができないだろうなという予想があって、後半型にシフトしていくレースイメージを持って泳いでいて最後接戦になるだろうなと思っていました。最後まで集中を切らさず泳ごうというイメージを泳いでいました」
――英語での優勝インタビューはいかがでしたか。
「30%くらいで優勝できるかなと思っていたので、言う内容は考えてはいました。優勝できて、言いたいことは言えました」
――田渕選手の主戦場は男子400メートル個人メドレーだと思いますが、男子400メートル自由形などの種目は今後どのようにしていきたいなどはありますか。
「400メートル個人メドレーはやっぱり専門にするというのは変わらずですね。同じ400メートルという種目は400メートル自由形しかないので、そこは一緒に強化しなければならないなとは思っています。400メートル個人メドレーを速くなりたいなら、400自由形も早くならなければいけないと思っています。400メートル個人メドレーでしっかりパリを狙っていきたいなと思います」
――今後400メートル個人メドレーでの自己ベスト更新は視野に入っていますか。
「自己ベストを更新しなければやっぱパリには行けないとは思っていますし、今高校生で速い子がいて、実力的には4番手になっています。3月のパリ五輪選考会では4分9秒が必須になってくるなと考えています。自己ベストを出さなければ負けるし、出したら勝てるというところにはいるかなと思っています。勝ちたいという思いももちろんあるんですけど、今はまず自己ベストを更新することをしっかりと意識していきます」
――自己ベスト更新に向けて特に強化したい点はありますか。
「課題である最初の200メートルを2分1秒で入りたいというのは変わらず思っています。やっぱりバタフライをいい泳ぎで、楽に着いていくというところをやりたいなと思っていて、今やっているところです。そこを確実にやって、短所ばっかり見てもしょうがないので、長所である後半型いうところは忘れずにしっかり強化していきたいなと思います」
――五輪に懸ける思いをお聞かせください。
「オリンピックは本当にどの選手も人生を懸けて挑んでくると思うので、そこに負けずに食らいついていきたいなと思います。僕は東京オリンピックの選考会は5番で敗れ、世界水泳ブタベスト大会と福岡大会の選考会は3番という一番近いところで破れ→敗れています。そういった意味でも、周りの中では出場したいという思いは僕が一番強いのかなと思います。普段から応援してくれる方がたくさんいるので、その方々に恩返しをしたいなという気持ちです」
――大学でのラストシーズンとなります。今シーズンの意気込みをお願いします。
「3月が僕の中では一番大事な大会で、ピークをそこに持っていきたいです。今は3月しか考えていないのですが、でもそこを通過点として考えたいなとも思っています。3月だけでなくて、その先のパリでも結果を出していきたいです。プライドがあるので、インカレでも優勝してチームに勢いをつけたいです。目標としては、天皇杯を獲得して2連覇を飾ることです。3月も夏も、一喜一憂して終わるんじゃなくて、一つ一つの大会を通過点にしてどんどん強くなっていきたいです」
――ありがとうございました。
[橋本太陽]
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