(女子)住吉、江川のワンツーフィニッシュ 華麗な演技で観客を魅了/東京選手権

 SP(ショートプログラム)から一夜明けた24日はFS(フリースケーティング)が行われた。シニア女子では明大勢が1、2位を獲得。優勝は住吉りをん(商2=駒場学園)でSP4位からの巻き返しに成功。2位が江川マリア(政経2=香椎)で9位に元榮愛子(商1=目黒日大)、12位に本田真凜(政経4=青森山田)、20位に堀見華那(商3=愛知みずほ大瑞穂)が入り、全員が全日本選手権(以下、全日本)予選会の東日本選手権(以下、東日本)への出場権を手にした。


9・22~24 東京選手権(ダイドードリンコアイスアリーナ)

 

 優勝を決めた住吉。序盤から力強くスピード感あふれる滑りを見せた。冒頭のダブルアクセルと3回転トーループの連続ジャンプを流れるような着氷で美しく成功させると、続く大技・4回転トーループは両足ながらも着氷させた。「6分間練習で降りた時や演技直前のトリプルトーの感触もすごく良くて今日はいけるかなという自信が少しあったけれど、後ろに体重が持っていかれてしまうという今までと同じ原因が出てしまった」と4回転の着氷には悔しさも見せた。その後ジャンプに乱れこそあったものの、後半には3回転サルコウからの3連続ジャンプや3回転フリップと3回転トーループの連続ジャンプでリカバリー。さらに見る者を引き込む明確なステップでレベル4を獲得した。そして長い手足を生かした美しいスピンを交え最後まで疾走感ある滑りを披露。「ジャンプのミスがあったけれどリカバリーや気持ちの切り替えというところで自分の成長が見られた」と収穫もあったとした上で「コレオ(コレオシークエンス)だけで練習する時よりも少し力強さに欠けてしまうところがあるので、GPS(グランプリシリーズ)に間に合うようにもっと体力強化をしていくことが必要」と控えるGPSに向けた意気込みを語った。

 

(写真:指先まで気を配る繊細な滑りを見せた江川)

 緩急をつけた演技で『O』を滑り切った江川は2位。柔らかい表情と美しい所作で滑り出しから会場の空気を江川のものにした。前半、江川の大きな得点源・ダブルアクセルからの3回転トーループ、ダブルトーループの3連続ジャンプや3回転ループを大きな加点付きで成功。後半にジャンプの乱れがあるも、最後まで曲に乗せた優雅な江川らしい滑りで会場を魅了した。試合後は「自分がしたい演技とは少し離れたものだったが、途中までの滑り自体はすごく夏季(東京夏季大会)から成長できたと思う」と滑りの進化に手応えも。技術点が近い昨年度の試合と比べてみると、昨年度東日本では合計114.15点で今回の115.15点と大きく差はないが、演技構成点は今回3項目全てで7点台を獲得し58.28点。昨年度の55.14点から約3点分多く獲得した。「点数自体は昨年度と同じぐらい。でも、内容自体は昨年度より下の点が上がっていると思うので、まだまだ伸び代がたくさんある」。スピンも今大会全てレベル4をそろえた。今後も総合力が江川の大きな強みとなりそうだ。

 

(写真:安定感ある滑りを見せた元榮)

 9位に入った元榮。持ち味のダイナミックなジャンプと重厚感ある滑りで『Black Swan』を華麗にそして力強く舞った。冒頭の3回転サルコウからの連続ジャンプは安定感ある着氷で成功。今大会組み込んだ3回転ルッツで惜しくも転倒となるもその後のジャンプは大きく鮮やかに決めた。最後は「夏の間にいつもより多く練習した」と話すスピンで演技を締めくくる。手足を美しく使った高速スピンには観客から大きな拍手が起こった。「東日本は今日の演技よりもレベルアップできるように、サルコウとルッツで今日は失敗してしまったので、曲かけで跳べるように頑張りたい」と続く東日本を見据えた。

(写真:スパイラルで魅せた本田)

 のびやかに『リトルマーメイド』を滑り切った後、晴れやかな表情を見せた本田。「久しぶりに自分らしい演技ができた」。ジャンプを全て着氷させると、曲の盛り上がりが最高潮になる場面で姿勢の美しいスパイラルを披露し観客を魅了した。「自分で滑っていてもすごく楽しくキラキラしたプログラムになっているのかなと思うので、そこにジャンプが加わるように頑張りたい」。今回は体調に合わせたジャンプ構成だというが、次なる試合ではさらに進化した新たな『リトルマーメイド』が見られるに違いない。

 

(写真:レイバックスピンを美しく披露した堀見)

 最後まで生き生きとした表情で躍動感ある演技を披露した堀見。リンクを大きく使い、流れるようなスケーティングで『ラ・ラ・ランド』を滑り切った。中盤にジャンプのミスがあり「今までの練習がまだまだ自分に甘いところがあって、本番という気持ちでの練習がまだ足りていなかった」と悔しさをのぞかせるも、最後のステップは笑顔で会場を沸かせる滑りを見せる。観客の手拍子も後押しし「(ステップは)やっていてもとても楽しいし大好きな部分なので、それが伝わるようにと思い切り表情まで楽しんでやれた」と振り返った。

 

 シーズンが開幕し迎えた今大会。明大女子からは5人が東日本への出場権を獲得した。どの選手も持ち味を存分に発揮する演技で観客を魅了。またその一方で、それぞれが得た課題に悔しい思いも見せた。まだ始まったばかりの今シーズン。これから続く大会ではより一層彼女たちの思い描く演技に近づいていくはずだ。

 

[布袋和音]

 

試合後のコメント

住吉

――今回の試合を経て、力を発揮して優勝まで持ち込む、勝ち切るといった面で今後に糧になるような気づきはありましたか。

 「今回の試合では優勝できたことはすごくうれしいですが、自分の中ではもったいないミス、トリプルループの事故的なミスがあったり、4回転も少し弱気になってしまったところがあったりしたのでその辺りをもっと強い心でいかないといけないと思いました。今回はたまたま優勝できましたが、これ以降の試合で勝ち切っていくためには、まだまだこれでは足りないなというところで、今回は収穫もありましたけれど悔しい気持ちの方が大きいかなと思います」

 

江川

――2連覇のプレッシャーはありましたか。

 「あまりそこは意識しないようにしていたのですが、2連覇以上に最終滑走というのが自分の中でまだ慣れないものがありました。でも、すごくいい経験になったので良かったかなと思っています」

 

――2位という結果についてはいかがですか。

 「自分の中ですごく悔しい演技だったのであまり順位は気にしていないというか、良くても悪くてもあまり気にしないという感じです。点数自体は昨年度と同じくらいで、前より少し低いですが、内容自体は昨年度より下の点が上がっていると思うので、まだまだ伸び代がたくさんあるなという感じです」

 

元榮

――今回のブロック大会にはどのような目標を持って臨みましたか。

 「あまり調子が良くなかったのですがFSに行きたいと思っていたらFSに進めたので、今日(FS)は東日本に行けるようにと思ってやりました」

 

――スピンが速く、観客からも拍手がありましたが、今のスピンはご自身ではどのように捉えていますか。

 「スピンがけっこう最後の方に入っているので体力的にもヘトヘトであまりうまくはできなかったのですが、スピンはジャンプよりは失敗しにくいから頑張ろうと思っています」

 

本田

――FSのテーマを教えてください。

 「『リトルマーメイド』の曲で、もともとは昨年度のプログラムを引き続き練習していたのですが、この曲で滑ってみたいなと思って振り付けの(宮本)賢二先生と相談してお願いしました。振り付けをしている時や練習から楽しく、キャラクターになり切って滑ることができているので久しぶりに自分らしい演技ができたと思います。ジャンプは、今日は駄目でしたが、それ以外の部分は久しぶりに良かったと思います」

 

堀見

――最後のステップではいい表情が見られました。

 「ステップ前までの丁寧で柔らかい滑りと、最後のステップの弾ける部分のメリハリを大事にして練習をしています。やっていてもとても楽しいし大好きな部分なので、それが伝わるようにと思い切り表情まで楽しんでやれたと思います」

 

――東日本に向けて意気込みをお願いします。

 「東日本では、しっかり自分の実力が出せるように、これから1カ月、毎日本番のつもりで練習を積み重ねていきたいです」