(女子)前回王者・江川がSP1位発進 明大から5人がFS進出/東京選手権

 本格的なシーズンが幕を開け、明大からも6人がシニア女子SP(ショートプログラム)に出場した。曲調に合わせ、流れるような演技を見せた江川マリア(政経2=香椎)は、68.80点で首位発進。4位に住吉りをん(商2=駒場学園)、9位に元榮愛子(商1=目黒日大)、17位に本田真凜(政経4=青森山田)、23位に堀見華那(商3=愛知みずほ大瑞穂)、36位に岡部季枝(法4=新渡戸文化)がつけた。

 

9・22~24 東京選手権(ダイドードリンコアイスアリーナ)

 昨年の東京選手権(以下、東京ブロック)で優勝を果たした江川。「自分の中で昨年はたまたまだと思っていて、今年は自分の本当の実力が試される感じがした」。そんな不安をものともせず『River Flows In You』の優美な旋律に乗せた圧巻の演技を見せた。昨年からの課題であった3回転ルッツを冒頭に美しく決めると、そのままの流れで高さのあるダイナミックなダブルアクセルを見事着氷させる。その後の連続ジャンプもしっかりと決め、全てのジャンプを成功させた。そして評価されたのはジャンプばかりではない。伸びやかでメリハリのあるステップと軸のぶれないきれいなスピンは、繊細な曲調をより魅力的に表現した。前回王者としての期待に応え、強者の集う東京ブロックでSP1位につけた。

 

(写真:流れるように舞う住吉)

 全日本選手権(以下、全日本)に照準を合わせ、昨シーズンの悔しさから飛躍を誓う住吉。赤を基調とした衣装にゴールドの飾りをまとい『Blood In the Water』のもと、オリエンタルな雰囲気で観客を魅了した。予定構成から大きなミスなく、出だしの3回転フリップ、3回転トーループの連続ジャンプを軽やかに決めるなど安定感のある滑りを見せる。だが直前期に腰を痛めた影響でレイバックスピンを回避し、スピンの構成に若干の変更を加えていた。その影響で「もう少し元気よくやりたかった」と抑え気味になったというステップ。それでも「手拍子のおかげで最後のひと踏ん張りができる」と、疲れが出る後半には観客の後押しを力に変えてみせる。手足を自在に操り、指先まで繊細さが光るスケーティングで、目指すインドらしさのある演技に磨きをかけた。アクシデントがありながらもまとまった演技を披露した住吉は、点数に伸びしろを感じつつ4位の好位置につけFS(フリースケーティング)に臨む。

 

(写真:ジャンプに入る元榮)

 長い間ケガに悩まされ、久々の東京ブロック出場となった元榮。シニアとして挑む初めてのシーズンでもある。「かなり緊張もあった中で、自分のできることをやろうと思った」。『ピアノ協奏曲第2番』の繊細な曲調に乗せ、滑り出しからその見事なスケーティングで魅せた。冒頭の連続ジャンプをきれいに着氷させ、続くルッツでは足が開いてしまい回転が抜けてしまったものの、最後のダブルアクセルをしっかりと決めた。何より目を引いたのは重力を感じさせない軽やかなスピン。長い手足を使ったダイナミックな動きで観衆を魅了し、9位でFSへの進出を決めた。

 

(写真:華麗に演技する本田)

 アイスショーへの出演など、さまざまな挑戦を経て今シーズンに臨むこととなった本田。水色を基調とした無数のビジューがあしらわれた衣装をまとって登場した。今シーズンのSPはシェイリーン・ボーンさん振り付けの『Faded』。1本目の3回転サルコウは転倒してしまったものの、その後の3回転トーループとダブルトーループの連続ジャンプはしっかりと成功させた。緊張からその後もミスはあったものの「不安な部分はあったが、最後まで丁寧に滑ることができた」。抜きん出た表現力と体いっぱいを使った大きな動きで美しく舞い、FSへと駒を進めた。

 

(写真:ポーズを決める堀見)

 日本学生氷上選手権出場を目指し今シーズンに臨む堀見。SPでは華やかで自由な『The Lady is the tramp』を継続する中で、表現面にさらに磨きをかけている。迎えた初戦は冒頭のコンビネーションジャンプがシングルループになり得点がつかず、悔しいスタートとなる。これには「思い切りが足りなかった」と反省した。だが切り替えて次のダブルアクセルを着氷すると、後半からは落ち着いたスケーティングを披露。明るく元気なイメージがあるという曲の流れに身を任せたステップや、右回転のスピンなどで会場を湧かす。ジャンプ失敗の影響で納得の演技とはならなかったが、序盤からの修正力を発揮し、23位で翌日のFSに進出を決めた。

 

(写真:演技を終えた岡部)

 大学院に進学し、より忙しくなった学業と両立しながらのラストイヤーを迎える岡部。昨シーズンに引き続き『フォレスト・ガンプ』の曲調に乗せ、SPに臨んだ。「練習ではサルコウやトーループが決まり、ノーミスも出ていたので悔しい」と振り返るように序盤のジャンプでは惜しくも着氷には至らず、得点を重ねられない。冒頭のジャンプの転倒が大きく響き、全体36位でFS進出とはならなかった。それでも「楽しむことが一番の目標」とし、演技後には悔しさの一方で充実感のある表情も見せる。久々の実践で終始笑顔を絶やさず演じ切り、伸びのあるスケーティングで観客の声援に応えた。

 

 シーズン開幕の緊張の中で、SPの演技を終えた選手たち。大きな声援や手拍子が久々にリンクに戻り、選手たちの背中を押す光景が多くあった。氷上の数分間に懸け、さまざまな思いを表現する選手の姿には今後も目が離せない。

 

[橋本太陽、増田杏]

 

試合後のコメント

江川

――演技を終えた感想を聞かせていただけますか。

 「率直な感想としては、ほっとしたという感じです。練習通りの演技ができたので、すごく良かったかなと思います」

 

――昨年悔しい思いをした全日本への意気込みはありますか。

 「やはり全日本はこの東京ブロックと東日本選手権とは全く別物というか。雰囲気ももちろんですし、違うものと思っています。でもやはりやる内容自体は変わらないので、こうやって一試合一試合着実に、丁寧に演技していけたらいいなと思っています」

 

住吉

――演技の振り返りをお願いします。

 「ひとまず大きなミスなくできたことは安心です。それでもいろいろと伸びしろはあると思います。70点台に乗せたかったので、そこに向けてはまだ伸びしろがあるなという気持ちです」

 

――試合を経て仕上がり具合は良くなっていますか。

 「昨年の課題としていた、試合でメンタルの問題でジャンプが決まらないというところがだいぶ解消できていて、やはり試合数を重ねるごとに試合の中での自信だったり、試合の臨み方だったりが自分の中で確立してきたというか安定してきたので、それはやはりここまでたくさん試合に出てきて良かったなと思うところです」

 

元榮

――今日の演技で良かった点を挙げるとしたらどこですか。

 「この数日ステップとかがあまり乗れていない感じだったのですが、本番では最近にしては結構しっかりステップとスピンをできたところがいいところかなと思います。朝の練習ではステップで失敗してしまったり不安もありましたが、ルッツをパンクしてしまってからかなりまずいと思ったのか、そこから少しうまくできたかなと思います」

 

本田

――全日本はどのような位置付けの試合ですか。

 「ジュニア1年目の頃から、自分で全日本の舞台を勝ち進んできました。今年は学生としては最後の挑戦になるので、今年も絶対に全日本に出て、自分に対してもそうですし、応援してくださっているたくさんの方に向けても、自分の周りのみんなに向けても、感謝の気持ちをスケートで返せるようにというのを今一番考えています。(それができるのが)やはり全日本の舞台であり、自分の求める場所なので、まずは勝ち取りたいなと思います」

 

堀見

――演技の改善点を教えてください。

 「やはり曲が明るいので、曲に乗って楽しみたいと思っていました。ジャンプばかりを考えてしまうので、他のところも大事にしたいなと思ってやってきたのですが、やはり今回は跳ばないといけないというのを考え過ぎてしまいしました。ステップはお客さんもたくさんいましたし楽しんでやれたのですが、やっぱりジャンプの失敗を考え過ぎてしまっていたので、思い切り曲を聞いて楽しむというのをこれから一番大事にしていきたいかなと思います」

 

岡部

――1カ月前から練習を始めたそうですが、短い間でどんな準備をしてきましたか。

 「やはり何も跳べない状態だったので、そこをまず一つずつジャンプを跳べるようにしようと、ダブル、トリプルと進めてきました。陸上トレーニングなどもして体力をつけて、曲の中で跳ぶというのを意識して練習し始めました。つい1、2週間前ぐらいにやっと曲の中でも入るようになってきて、調子が上がってきたという感じです」