(男子)佐藤がSP2位発進 シーズン開幕戦/東京選手権

 本格的なシーズン開幕戦である東京選手権(以下、東京ブロック)2日目、シニア男子ではSP(ショートプログラム)が行われた。多くの観客の存在もありより緊張感のある試合になったが、それぞれ全力の演技を見せ、佐藤駿(政経2=埼玉栄)は2位、大島光翔(政経3=立教新座)は5位、松井努夢(政経4=関西)は12位、堀義正(商4=新渡戸文化)は23位につけた。

 

◆9・22~24 東京選手権(ダイドードリンコアイスアリーナ)

 佐藤の名前が呼ばれると会場は大きな歓声に包まれた。大勢の観客の中でもひときわ目立った大島の声援を受け、位置についた佐藤は真剣な表情で滑り出す。キレの良い動きで躍動感のあるスケーティングを披露。「ジャンプよりもスケーティングを練習している」と大きく成長した姿を見せた。言葉通り、速いスピードにも軸がぶれない上半身の安定感と踏み込みの深さが迫力を生み出す。そして緩急をつけた体の動きで華麗にタンゴのリズムに乗った。1、2本目に組み込まれた4回転ジャンプを着氷させると会場に大きな拍手と歓声が上がった。ジャッジスコアでは完全な判定とはならなかったものの、武器である4回転ジャンプで確かな実力を示した佐藤。2位の好発進で翌日のFS(フリースケーティング)に臨む。実力が拮抗(きっこう)する男子の中で、これから待ち受ける全日本選手権(以下、全日本)の舞台を見据え真っすぐ進んでいく。

 

(写真:会場を沸かせた大島)

 今シーズンから新プログラム『The Super Mario Bros. Movie』に挑む大島。げんさんサマーカップで着用した深紅の衣装とは異なり、胸元の『スーパースター』のワンポイントが印象的な黒を基調とした衣装で、演技前から観客の期待を膨らませる。演技序盤はゆったりとした曲調に乗りながら、のびのびかつダイナミックなスケーティングで観客を魅了。「緊張と不安でいっぱいだった」と語る中でも、冒頭のトリプルアクセル、3回転ルッツと3回転トーループの連続ジャンプを鮮やかに決め、徐々にペースをつかんでいく。そして演技中盤、曲調の変化からおなじみのポーズとともに、キレのあるステップを刻んでいく。序盤の大人びた表情とは一転し、笑顔で氷上を舞う大島の演技に観客の視線はくぎ付けに。演技終盤には、衣装に隠された『1UPキノコ』を解禁。最後まで観客を楽しませ続けた〝スタァ〟の演技に会場全体からは割れんばかりの拍手が送られた。

 

(写真:ポーズをとる松井)

 観覧席が埋まるほどの大勢の観客を前に「緊張した」と振り返った松井は『This is Mine』を披露した。緊張感の原因には継続のプログラムのため「昨年度よりクオリティの高いものを見せないと」という気持ちもあったという。本人は「全体的に詰めが甘かった」と演技に納得のいかない様子を見せたが、スケーティングの滑らかさや全体の表現からは昨年度よりも上達していることがうかがえる。特に安定感と、曲調に合わせた表情の変化など表現力において、昨年度までの努力を感じさせた。しかし、緊張から足に力が入り切らなかったと、オーバーターンしてしまうジャンプも。悔しさを感じたジャンプに対しては「何が何でも全て締める」という強い気持ちでFSに臨む。

 

 松井には、全日本と日本学生氷上選手権(インカレ)に出場したいという、最終学年だからこそより強く思い描く目標がある。まずはSPよりも体力との勝負になってくるFSで本領発揮を狙う。そしてこれから立て続く試合ごとにより良い演技になっていく姿に注目だ。

 

(写真:高さのあるジャンプを見せた堀)

 

 ラストシーズンに挑む堀はシニア男子SPの15番滑走で登場した。大きく息をつき、リンク中央に向かい、思い入れのある曲、ジプシー・キングスの『My Way』を披露。軽快なリズムとともに、生き生きとしたステップを踏んでいく。「練習で失敗が少なかった」と語る冒頭の3回転サルコウは惜しくも転倒。2本目の3回転トーループにもミスは出るが、3本目では高さのあるダブルアクセルをきれいに着氷した。「失敗が目立った中でも、パンクなしで滑り切れたことが今日の収穫」。思い通りの演技とはならなかったものの、収穫点と課題点が明確となった。SPは苦しい出だしとなったが、目標とする全日本進出に向け、覚悟を持ってFSに挑んでいく。

 

 シーズン開幕戦とも言える今大会。オフシーズンに練習した成果を出せるかが勝負になる。一つずつ駒を進め本命の大会へ近づく姿や、実力発揮に向けて練習を重ね成長を見せる明大勢にくぎ付けの季節がやってくる。

 

[新村百華、冨川航平]

 

試合後のコメント

佐藤

――演技を振り返っていかがですか。

 「最初ジャンプにミスがありましたがしっかりとまとめ上げることができたかなと思っているので一応シーズン最初の試合としては、良かったのではないかなと思っています」

 

――『リベルタンゴ』をここまで滑ってみて、いかがですか。

 「滑っていて、気持ちいい振り付けというか滑って楽しい振り付けだなと思っています。すごく滑りやすいです。しっかりとタンゴを演じ切れるように、これから頑張っていこうと思っています」

 

大島

――衣装のこだわりについて教えてください。

 「毎年折原さん(折原志津子さん)に衣装をお願いしていて、今年もどういう衣装で臨むかという話し合いになった時に、今回マリオの曲を使っているんですけど、前半後半で主役のキャラクターが違うということで、すごく衣装さんに悩んでもらって。最終的に最初クッパで、後マリオだから本当そのままできれば最高だよねというお話になって。途中で衣装が変わったりしたら面白いんじゃないかということになって、こういう衣装に仕上げていただきました」

 

――プログラムを滑ってみた感想をお願いします。

 「自信を持って臨めたかといったら緊張もあり、正直練習もそこまでいい練習が積めてはいなかったので、緊張と不安でいっぱいだったんですけど、とにかくジャンプ三つ、スピン三つしかないと思っていたので。そこはもうほんと、最低限のミスで抑えようと思って、集中して臨めたかなという風に思います」

 

松井

――今日は緊張していたのですか。

 「緊張していました。プレッシャーというか、同じ曲を2年目として使っているから昨年度よりもクオリティの高いものを見せないとやはり点数も伸びてこないというのもあるし、今年からこれだけお客さんが入ったというのもあるし、久しぶりにお客さんいる前で滑ったこともあって、かなり緊張しました」

 

――FSの意気込みをお願いします。

 「とにかくジャンプを全て締めて最後までバテずにやり切るように頑張りたいです。それに尽きます。それがあった上での順位なので、誰に勝つとかではなく、自分ととにかく戦います」

 

――緊張などはされましたか。

 「特別緊張していたからどうこうというわけではないんですけど、やっぱりこのシーズン初戦としての緊張感みたいなのは、常に感じながら滑ってはいました」

 

――FSに向けての意気込みをお願いいたします。

 「FSはもう今シーズン決まると言っても過言ではないので、できることを全力でやるというのは第一に置いておいて、やっぱりラストシーズンということで楽しみながら滑って感謝の気持ちを伝えながら、滑り切れればいいかなと思います」