
明大スポーツ第530号 明大文学部齋藤孝教授インタビュー拡大版
8月1日発行の明大スポーツ第530号の1面で、受験生をはじめとした皆さんに力強いアドバイスを語ってくださった明大文学部の齋藤孝教授。今回は、紙面ではやむなく割愛した齋藤教授のインタビュー内容に加え、齋藤教授の授業を受ける学生の方のインタビューを、拡大版として掲載いたします。
(この取材は7月3日に行われたものです)
齋藤孝教授
――明大生についてどのような印象をお持ちですか。
「気持ちのいい学生が多いですね。すっきりしていてやる気があって、人間として大変優れているなと。中高時代に部活が好きでやってきたとか、人と一緒に何かをするのが好きとかね。勉強や遊びを含めた総合的なバランスがいいんじゃないかなと思います。また、授業の中でいろいろな課題をこなしてもらうと、すごい才能を持っていることに驚きます。ある時、英語の三人称単数現在について分かりやすく教えると仮定して、コントのように発表してもらいました。そうしたら、宅配便でSをお届けするというコントがあったんです。最初に届けるPlayさんのお宅はSだけで良いのですが、Goさんのお宅はESでなくてはダメで、最後に届けるStudyさんの家にはIESを届けなければいけない。そういった内容のコントをその場で作れるんですね。この才能はすごい、明治恐るべし、と言うか(笑)。そんな訳で僕は明大の学生が非常に好きなので、授業をしている時の方が調子が良いんです。未だに僕は海外でも国内でもサバティカルな休みを取っていないんですよね。夏休みの間にも夏期講習を必ず入れて、授業をすることで一息つくという感じです」
――授業内でコントをはじめとした取り組みをする理由は何ですか。
「協力して一つの作品を作ることが一番お互いにクリエイティブな関係性になりやすいんですね。新しい指導要領では学力について思考力、判断力、表現力を三本柱としています。その中でも表現力を高めるために、演劇やショートコントを通して、知性を基盤にして教科の内容を笑いのあるものにまとめていくことを目指しています」
――学生時代にやっておいて良かったと思うことはありますか。
「毎週のように友達と読書会をやっていました。4人くらいで同じ本を読んできて語り合い、その後飲みに行くとか。大学生らしくて楽しかったですね。集まる時間と読む本を書いた貼り紙をして、その空間に集まった知らない人同士で仲良くなるということもしていました」
――逆に、大学時代でやっておけばよかったと後悔していることはありますか。
「サークルにたくさん入れば良かったなと思います。1、2年の頃はサークルに入るよりも教養を高めたいと思っていて、入るきっかけを失っていました。クラスで友達はできましたが、中高時代と違って運動をしなくなったのですっきりしないことが続いていたんです。3年生になってテニスサークルに入ったらそこで人間関係の幅も広がりました。その時にできた友達とは今でも年に数回会います。ですから、サークルがなかったら大学生活は寂しいものだったなと思いますね。サークルは学部外の人とも知り合えますし、とりあえず最初は入っておくのが人間関係を広げる意味でも良いと思います」
――大学全入時代とも言われる今、大学に通う意味についていかがお考えですか。
「総合的に知性を向上させていくために、大学は素晴らしい場所です。授業とか仲間同士の研究会などがあって、知らないうちに知力が上がっています。もう一つは、学問を中心として若い人が集まって切磋琢磨(せっさたくま)するいい空間だと思います。社会に出てもいろいろな経験を積む機会はありますが、大学生は仕事とは違い自由に自分で選べる面があります。そういう自由な空気感は生きていく上で大事だと思います。好きな勉強をして好きなように大学生活を謳歌する経験があると、その後の人生において大きな裾野ができますからね。」
――学部の選び方についてはどのようにお考えですか。
「やりたいことに合った学問を選べれば良いのですが、その後の就職のことも考えますよね。ただ、学部によってその後の人生を縛られることはほとんどありません。たとえ自分のやりたいことと違っていたとしても、深く悩まずに単位を取って卒業することが重要です。僕自身も法律家を志して法学部に進みましたが、途中で法律家になるという道を諦めました。それでも、きちんと卒業したのでその後の人生で学部選びがマイナスに働くことは特にありませんでした。学部選びに失敗したと悩まなくてもいいし、大学院に進むなどの軌道修正もできるので、その時点でベストだと思う道を選ぶということに尽きますね。あとは履修の仕方を工夫するのがいいと思います。明大も授業によっては他学部の科目も受けられます。そうすればできることの幅が広がり、自由も利くのではないでしょうか」
(写真:インタビューに応じる齋藤教授)
――受験生は時間との戦いでもあります。教授の考える上手な時間の使いを教えてください。
「1時間半くらいの時間をひとまとめにするのが良いんじゃないかな。僕は時間をブロックに分けて仕事をしています。あとは、とにかく勉強するきっかけを掴むことが大切です。とりあえず10分で終わりにするというくらいにハードルを下げて勉強モードに入ることが大事だと思います。場所とか飲み物を選んだりストップウォッチを使うなど工夫してスイッチを入れることが効果的です」
――受験勉強において量と質の両立はどのようにすべきでしょうか。
「勉強は人によってスタイルがあると思います。なので、最初から質だけ追求してもなかなか集中力が続かないので、とりあえず量を確保することがいいんじゃないかなと思います。あとは、ある程度の量をこなすと無駄な作業が分かってきます。無駄な作業を省いていって効果のある勉強をする。どの大学に進んだとしても、そのように工夫して勉強をした時間は無駄にならないと思います。」
――普段の授業で、何を生徒に伝えたいと考えていますか。
「クリエイティブであるのは面白いということです。クリエイティブとは新しい意味が生まれることを指すのですが、そのような関係性を作っていく楽しみを授業で味わってほしいですね。例えば4人で協力して課題をこなしている時に誰かがアイデアを出すとすれば、それがまさに新しい意味が生まれた瞬間です。明大に通って、その場に自分がいることでクリエイティブな関係性を築くことができた。それを授業で体験してもらうことが僕にとっても楽しいことです。
僕は教員養成をしているのですが、教える学生が教師になった場合には彼らもまた、かなりの人数を教えることになります。例えば1年間で250人の生徒を担当するとして、それを40年続けると1万人に対して直接教えることになります。すなわち、この授業で仮に20人が教員になるとすれば僕は20万人の未来の中高生を相手に喋っているということですね。教員はすごく責任のある仕事であると同時に喜びも感じられます。そういったメッセージを伝えることで学生自身に自分の価値に気づいてもらい、自己肯定感を上げていくということを目指しています」
――最後に、受験生へメッセージをお願いします。
「今ではいろいろな学部ができた上に校舎もきれいになり、大学生活を送るための最高の環境が整っています。明大に来たら大学生活を満喫できるんじゃないかな。また、明大のカラーとして周囲との関わりの中で自然と個性が磨かれていく空気感があります。その中でぜひ豊かな人間関係を築いてほしいと思います。大学時代の友人はその後も付き合いの続く人が多いです。私の授業で出会って結婚したとか、何年経ってもみんなで集まっている話も聞きます。また、どこに行っても明大の卒業生とつながり合えます。つまりはいい人間関係を築ける場所だと思います。皆さん、ぜひ明治大学へ! 」
――ありがとうございました。
(写真:齋藤教授と学生たち)
◆齋藤 孝(さいとう・たかし)1960年10月31日生まれ、静岡県出身。東大大学院教育学研究科博士課程を経て現在明大文学部教授。著書『声に出して読みたい日本語』はシリーズ260万部のベストセラーを記録。フジテレビ『全力!脱力タイムズ』、『LiveNewsイット!』等出演。NHKEテレ『にほんごであそぼ』総合指導を務める。
授業を受ける学生の皆さん
――この授業を取ろうと思ったきっかけを教えてください。
「昨年度の夏期集中講座で受けなければいけない授業があり、その時に齋藤先生の授業を受講しました。その内容がすごく面白かったのでもう一度受けようと思いました」
――どのようなところが面白いと思いましたか。
「良く言えばとにかく自由なんです。悪く言えば癖が強い(笑)。コミュニケ―ション力とか一見するとどうでもいいことをやっている感じを受ける一方で、大事な考えを教わることの多い、良い授業だと思います」
――授業内でコントなどを作る目的はについてはどのように考えていますか。
「自分は2つあると思っています。まず、教師としていかなる時でも人の前に立って何でもできるようになること。もう一つは齋藤教授もよく言っているのですが、受け手の能力を高めることです。このことは実際に教師になったときに、学生がどんなことを言ってきたとしても真摯に答えてあげるということにつながると思います。なので、発信と受信の2つの能力を高める目的がきっとあるんじゃないかな」
――皆さんにとって齋藤先生の授業はどのような存在ですか。
「明大に来る意味です」
「明大に来て齋藤先生の授業を受けてないのはもったいない。そのくらい受けに来てほしいと言いたいです」
「大学の授業はインプットが基本だと思うのですが、ここではアウトプットをする機会が多いので思考訓練をしているような感じです」
――齋藤教授の授業を受ける前と後で変わったと思うことは何かありますか。
「人とよく目を合わせるようになりました。あとは、人前で何かをすることに対してあまり抵抗がなくな ってきました」
「いい意味で空気を読まなくなった気がします」
――どのような教師になりたいですか。
「齋藤先生の授業を受けていて感じることは一人一人全員に気を配っているということです。私もそんな教師になりたいなと思います」
「教師になりたいと思ったきっかけは、世界史を担当してくれた先生が『教師はまだまだ男女差別もありますし、給料も低いので仕事内容に見合いません』と言っていたことです。そんな状況の中でも誰かがやらなければいけない仕事を一生懸命にできる人はすごいですし、教師もそんな仕事の一つだと思います。自分がそれをやることで、私が教師になりたいと思ったように誰かにとって一生懸命やりたいと思えるものに出会わせられるような人になりたいです」
――受験生にメッセージをお願いします。
「受験を終えた今になってみると、受験を経た過程が生きていると感じます。努力した経験は絶対に無駄になりません。なので、今は後悔のないように『とりあえず』やってみることが大切だと思います。でも、高校生でいられる期間は限られているので、勉強と同じくらいに学校生活も悔いなく楽しんでほしいです!」
「私はコロナ禍真っただ中の年に入学しました。特に1年次はオンデマンドの授業が多く、大学に行く回数も週1、2回程度だったので、同じ学部の友達すらできませんでした。想像していた大学生活とはあまりにもかけ離れていて『明大に入学して良かったのかな』と思ったこともありました。しかし、3年生になった今は『明大に入学してよかった』と心から思っています。そう思わせてくれたのは、紛れもなく授業で出会った仲間です。特に斎藤教授の授業は学部や専攻を越えた交流が多いため、授業を受けるたびに仲間の新しい一面や素晴らしい才能を発見することができ、とても刺激的で楽しいです。私がこれに気付くことができたのは制限なく活動できるようになってきた3年次でしたが、これから明大を目指すみなさんは1年次からこの楽しさを経験できると思うと、とても羨ましいです。今はとても大変な時期で辛くなってしまうことがあると思いますが、大学には本当に楽しい生活と最高の仲間が待っています。しんどくなってしまった時は入学後の自分を想像して最後まで諦めずに頑張ってください。明大でお待ちしています!」
――ありがとうございました。
(写真:談笑する生徒たち)
[七海千紗、松原輝]
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