健闘見せたFS 松原19年の競技生活締めくくる/特別国民体育大会冬季大会

 スケート競技会最終日には成年女子FS(フリースケーティング)が行われた。総合結果では住吉りをん(商1=駒場学園)が5位、江川マリア(政経1=香椎)が6位につけ、松原星(商4=武蔵野学院)は9位でスケート人生最後の競技会を終えた。

 都道府県別の順位では、住吉と松原が代表の東京都が3位、江川と竹野比奈(福岡大大学院)が代表の福岡県が5位入賞となった。

 

◆1・27~31 特別国民体育大会冬季大会(FLAT HACHINOHE)

 

 果敢に挑み続ける住吉の姿は今大会も健在していた。冒頭の4回転トーループは転倒となったものの、演技後には「思い切りは良かったと思う」と冷静に自己評価。その後の3回転ループとコンビネーションジャンプでは加点をしっかりと引き出した。「課題だったルッツがここ最近ずっと試合ではまらなくなってしまっていたのがまた出てしまった」と、ルッツでの転倒に悔しさをにじませる。その中でも丁寧な身のこなしで滑り切り、全てのスピンとステップでレベル4を取った。住吉は、来シーズン以降も4回転トーループを跳ぶ意欲を見せている。その強い気持ちを胸に、今後も練習を積み重ねていく。


 (写真:総合5位の住吉)


 自身の中で一番好きなプログラム『レ・ミゼラブル』を滑り切った江川。冒頭の連続ジャンプは、SP(ショートプログラム)でミスのあったルッツを降りてまとめ上げた。公式練習で不安があったフリップは「斜めになって派手に失敗してしまった」と転倒してしまう。しかし、ミスを引きずらずに続くジャンプを着氷させていった。得意なダブルアクセルと3回転トーループの連続ジャンプを2本とも決め、クライマックスに向かっていく。『夢やぶれて』では情感たっぷりに、続く『民衆の歌』では観客の手拍子も相まって生き生きと踊った。思い入れのあるプログラムも今大会で最後に。来シーズンのプログラムは「全然違った感じにしようと思っている」。明大に入学した4月から継続的に試合に出場し、さまざまな経験を積んだこの1年。来シーズンのさらなる活躍に期待がかかる。

 

(写真:総合6位の江川)


 「最後はノーミスのつもりだったのですが、あれ?おかしいな(笑)」。完璧とはいかなかったが、最後まで健闘した松原。自身の一番の武器である3回転サルコウと3回転トーループの連続ジャンプを冒頭から予定していたが、セカンドジャンプが1回転に。「前半、震えてしまったりもしたが『いやいやここまでやってきたじゃん、震えている場合ではないぞ』とループの前に切り替えることができた」。中盤以降、気合で巻き返しを見せる。3回転ループに3回転トーループを付けてリカバリーし、拍手が沸き起こった。二度目のサルコウではトーループを付けられなかったものの、次のコンビネーションジャンプで再びリカバリー。明るく盛り上がる音楽に乗り、力をみなぎらせて氷上を駆ける。自身のスケート人生を表したプログラム『フォレスト・ガンプ』を滑り切った松原。最後は笑顔で観客に手を振り、リンクを後にした。

 

(写真:最後のFSを滑り切った松原)


 3選手それぞれが駆け抜けた今シーズン。4回転トーループに挑み続け、全日本選手権(以下、全日本)の舞台で着氷させた住吉。着実に点数を伸ばし、予選トップで全日本出場をつかみ取った江川。二度の捻挫に苦しみながらも妥協せず戦い抜いた松原。毎回のインタビューで語られる言葉からは、真剣に自身と向き合っている姿を思い浮かべることができた。日々の積み重ねが大きな成長をもたらすことを、シーズンを通じて体現した。

 

[守屋沙弥香]

 

試合後のコメント

住吉

――今シーズンを振り返っていかがですか。

 「GP(グランプリシリーズ)で2戦ともいい結果をもらうことができて、そこから少し調子が落ちたり試合だけうまくいかないことがあったりして、今回4回転とルッツでミスはありましたが自分なりにはこれでもまとめられたなと思っているので、半分くらいは納得できる出来で仕上げられたかなと思っています。今シーズン、メンタル面での課題が出てきてそれにだいぶ惑わされることが多かったですし、今回も気持ちの部分が大きく出たかなと思っています。そうは言ってもそれを少しずつ克服してこられた期間だと思うので、オフの間にまたどれだけ心を強くできるかが来シーズンにつながるかなと思います」

 

江川

――2シーズン続けて滑ってきた『レ・ミゼラブル』はご自身にとってどのようなプログラムですか。

 「このFSは自分の演技をいろいろな人に知ってもらえるきっかけになったプログラムでもありますし、今回で滑るのが最後で来シーズンは変えてしまうので、最後なのだなという気持ちを持って滑り切ろうと思っていました。『レ・ミゼラブル』は、これまで滑ってきたプログラムの中でも一番好きなプログラムで、昨年度も今年度もお客さんが入る試合が少なくて、最初の方は、最後のステップで一番盛り上がりたいのにそれができないのが寂しいなと思っていたのですが、最近は有観客になってきてお客さんの前で滑る機会も増えて、いいプログラムだなと思いながら滑っていました」

 

――今シーズンを通して得たことはありますか。

 「全日本は、シーズンの中で一番良くない演技だったのが悔しいのですが、コンスタントにまとまった演技を毎回できているのは成長だなと思いました。元からアクセルとトーループのコンビネーションが得意なジャンプで、今シーズンはさらに成功率がほぼ100パーセントになっていて自分の中で安心して跳べるジャンプという感じでした。それを2本入れることが自信になったのが良かったのではないかなと思います」

 

――これからどのような選手になっていきたいですか。  

 「来シーズン、どのようなプログラムを使うかというのは決まっていないですが『レ・ミゼラブル』はかなり自分の中でも印象に残るといいますか、また見たいと思ってくれる人もいるようなプログラムだと思うので、ジャンプの精度ももちろん上げたいですが、単純に見ていて楽しかったり記憶に残ったりする演技をできたらいいなと思います。今は4回転トーループなど少しだけ練習しているのですが、大きな大会も終わったので、試合に入れるだけでなく降りることができるくらい跳べるようにするために、まずは練習という感じですね」

 

松原

――最後の競技会を終えた今どのようなことを感じていますか。

 「次がないのかという実感はあまりないのですが、ないということで、引退なのだなと思っています」

 

――妥協しない選手という印象がありますが、ここまでやってきたご自身にはどのような言葉を掛けますか。

 「『こんなもんでしたね』という感じですね。最後、今日はノーミスのつもりだったのですが、あれ、おかしいな(笑)」

 

――今日の演技を振り返ってみていかがですか。

 「自分の一番の武器であるサルコウトーがまさかの両方付けられないという失態を犯してしまって。ループにトーループを付けることができてびっくりですが、一応2回転トーループも後半に付けられたので、妥協します」

 

――最後のシーズンが始まってから、支えてくださった人に感謝を伝えられるようなプログラムにしたいとおっしゃっていましたが、それは達成できましたか。

 「自分の中で技がどんどん落ちこぼれていっているので、そういう感謝の伝え方しかないのかと最初の方は思っていましたが、今回みたいにサルコウトーを付けられなくてもループでリカバリーするなど、そのような部分で培ってきたものを出すことができて、それがしっかりと感謝として伝えられている部分なのかなと思っています」

 

――支えてくださった方々に伝えたいことはありますか。

 「19年間、両親はもちろんですが、たくさんのコーチの方、スタッフの方、応援してくださる方、本当にたくさんの人たちに支えられてここまで来られたと思っています。本当にここまでありがとうございましたと伝えたいです」

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