
佐藤優勝! 大島、山隈も圧巻の演技で万雷の拍手に包まれる/特別国民体育大会冬季大会
SP(ショートプログラム)から一夜明け行われた成年男子FS(フリースケーティング)。3選手とも、心震わす圧巻の演技を見せた。佐藤駿(政経1=埼玉栄)はFSトップの点数を出し、個人優勝を果たした。大島光翔(政経2=立教新座)は目標としていたFS140点台を達成し7位。山隈太一朗(営4=芦屋国際)は最後の競技会を自身にとって最高の形で締めくくった。
都道府県別の成績では、大島と佐藤が代表の埼玉県は2位、山隈と吉岡希(法大)が代表の兵庫県は4位に入った。
◆1・27~31 特別国民体育大会冬季大会(FLAT HACHINOHE)
響き渡る選手たちの声と会場の温かい拍手。見る人々に言葉にならないほどの感動を与えたに違いない。そう思わせるほど圧巻の演技を3選手とも見せてくれた。
(写真:個人優勝を果たした佐藤)
冒頭から圧倒的な強さを見せつけた佐藤。4回転ルッツを含む3本の4回転ジャンプを全て決め、成功の度にオーディエンスが沸き上がった。後半では予定構成通りには跳べなかったジャンプもあるが、たくさんの仲間たちに見守られ柔らかな表情で演技を続ける。7本目にはリカバリーを図るべく、体力の厳しさも伴う中でトリプルアクセルを決めた。最後のポーズを決め切ると、大きな拍手に包まれ、仲間の方を向いて握りこぶしを上げた。「四大陸選手権に向けてすごくいい試合ができたと思っている」。大差をつけFS1位に躍り出て、個人優勝。四大陸選手権本番まであと約1週間、課題であるSPの練習を多く行う見通しである。今までを上回る結果を残し、世界を席巻してみせる。
(写真:FS140点台をたたき出した大島)
今大会を大いに盛り上げてきた大島。自身の演技前には緊張を感じたものの、こわばることなく演技に臨んだ。序盤にトリプルアクセルとコンビネーションジャンプをきれいに決めると『Danger Zone』に合わせた手拍子が起こる。楽曲ごとの雰囲気をモノにし、観客を引き込んでいく。中盤では着氷が乱れ惜しいジャンプもあったが、集中力を保ち大きなミスを生むことはなかった。7本目にトリプルルッツを降りると笑顔で氷上を駆け抜け、自らの手で観客の手拍子を誘う。緊張に負けず自分の力を発揮し「間違いなく今シーズン最高の滑りだった」と振り返った。結果も140点台に乗る出来の良さだった。やり切った表情でガッツポーズする大島に、多くの観客が立ち上がって拍手を送る。去り際には仲間に向かって敬礼し、最後まで大島らしく氷上を明るくした。
(写真:最後のFSを終えた山隈)
瞬きするのも惜しまれる4分間。競技者・山隈太一朗は見る者の心を震わせた。冒頭からトリプルアクセルとダブルトーループの連続ジャンプを見事に跳び、その後も着氷を決めていく。曲調が一転しピアノの心温まるような旋律が流れ、山隈の思いが演技にあふれ出る。「僕を見てくれている全ての人がすごくのめり込んでくれているのを感じた」。後半でルッツの回転が抜けた時には、リンクサイドから「頑張れ」の声掛けが響いた。終盤に入ると無我夢中に表現し尽くし、一つ一つの所作に拍手が送られるほど、会場全体が温かな空気に包まれる。最後のポーズを決めた後には、晴れやかな表情で幸せをかみしめる山隈の姿があった。鳴りやまないスタンディングオベーション、コーチとの熱い抱擁、埋め尽くすほど集まった仲間たち。演技の素晴らしさもさることながら、みんなから愛される選手であることを物語る光景が広がっていた。
(写真:演技後、リンクサイドでたくさんの人に迎えられた山隈)
内容の良さにとどまらず、見る人の心を熱くするような演技としての良さも光ったFS。今大会への思いに加え、選手同士の声援がそれぞれの力になり、最後まで見応えのある演技につながった。フィールドは違っても、明大勢はこの先も人々に感動を与えてくれるに違いない。個々の活躍に期待が高まるばかりだ。
[守屋沙弥香]
試合後のコメント
佐藤
――ルッツの調子が本調子ではない中で、FSにルッツを入れた最終的な要因はありますか。
「今シーズンは4回転3本構成でやっていますし、ルッツをなくしてフリップをやるのもいいと思いますが、それだと自分のためにもならないかなと感じているので、ケガなども怖いですがルッツは続けていけたらいいかなと思います」
大島
――今後、4回転ジャンプはルッツ以外も練習していきますか。
「種類は問わず自分の苦手なジャンルにも全て挑戦して、できたものがあればそれを突き詰めていくという感じです」
――小さい頃から仲良くされてきて大学の先輩でもある山隈選手の演技を見届けていました。山隈選手はどんな方でしたか。
「僕が小学校1、2年生の頃に中野先生の合宿に参加させてもらったのが最初の出会いで、その時は坂本選手(坂本花織・神戸学大)、三原選手(三原舞依・甲南大大学院)と山隈選手が中野先生のチームを引っ張っていってくれた存在で、ずっと僕としても憧れの先輩で、大学でまさか一緒になるとは思っていなかったですが、本当に小さい頃からずっとかわいがってもらってきた存在なので、やはり自分の胸にグッと来るものがありました。その一方で引退されるという実感がないままあっという間の4分間だったなと思いました」
山隈
――FSの曲はお母様が使ってほしいとお話しされていた曲だと思いますが、このプログラムに対してお母様から何か言葉をもらったりしましたか。
「それが特にあまりなくてですね。サロメ(サロメ・ブルナー)が作ってくれて、それを見せた時に『プログラムは本当に素晴らしいからあとはあなた次第』みたいな、少しプレッシャーを与えられました。でも幼い頃に車の中でその音楽を流しながら口ずさみながらリンクに送り迎えしてくれている画をいまだに覚えているので、それだけ母親にとってすごく心の奥にあるいろいろな感情がこもっている曲なのだなと思います。それを少しでも僕がフィギュアスケートを通して伝えられていたらいいなと思うし、さすがに引退したのでこれで褒めてもらえるかなと思うけど(笑)。すごく僕の演技自体に感動したというのは毎試合言ってくれるし、全日本選手権が終わった後も僕が今まで練習してきたことがすごくいい形でこのプログラムに出ていて『もう私はこのプログラム好きだな』と言ってくれていたので、それはうれしかったなと思います。少しでも母親にとって素晴らしい演技になってくれたらいいなと思いながら今シーズンは滑り切りました」
――苦しい時期もあったと思いますが、競技人生を戦い抜いた自分に対して言葉を掛けるとしたらどのような言葉を掛けますか。
「『よく頑張った』かな。辞めたいと思うことがたくさんあったし、今考えてもよくここで『もういいや』とならずに『どうしたらもっと俺は上にいけるんだろう』とか『どうすればもっと良くなるんだろう』とかそういう考えにシフトして常に前向きにやり続けた、これは本当に簡単にできることではないと思うし、それを環境が変わっても周りが変わっても常にやり続けて、それを最後まで貫き通せたことが自分にとって一番誇らしいことなので『本当によく頑張ったね、お疲れ様』と本当にシンプルにその言葉を掛けたいです」
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