
(男子)佐藤あと一歩の表彰台 山隈、大島ら笑顔で全日本終える/全日本選手権
全日本選手権(以下、全日本)は競技最終日の25日、男子FS(フリースケーティング)が行われた。23日のSP(ショートプログラム)で5位につけていた佐藤駿(政経1=埼玉栄)が最終4位となり惜しくも表彰台を逃した。さらに今シーズン最後の全日本を迎えた山隈太一朗(営4=芦屋国際)は感情を乗せた滑りを見せ13位、大島光翔(政経2=立教新座)が個性あふれる演技で14位となった。また、この大会の結果から、佐藤は来年2月にアメリカで行われる四大陸選手権へ出場することが内定した。
果敢に挑んだ4回転ルッツだった。現地に来てから調子が上がらず調整に苦しみ続けた、佐藤の武器とも言えるジャンプ。当日練習でもミスが目立った。「不安を抱えたままだった」。それでも表彰台を目指した本番、決死の覚悟でルッツに挑戦。転倒とはなったものの、表彰台への強い執念を示し続けた。続く4回転トーループはいずれも飛び上がりから着氷まで美しい出来。SPでミスのあったトリプルアクセルも2本ともに成功させた。後半に3回転フリップからの連続ジャンプで惜しいミスがあったが、バイオリンの調べに乗せ、最後まで流れが途切れないスピード感あふれる滑りを披露。結果、FSでは3位の得点をマークし最終4位に。総合3位との差は1.2点と、あと一歩で表彰台には届かなかった。それでも、今シーズン遂げた確かな歩みもある。肩の手術とリハビリを乗り越え1年越しに帰ってきた舞台で、自己最高の4位となってみせた。シーズン開幕前から掲げ続けた目標の全日本表彰台。その達成は来年に持ち越されたが、確実に大きな一歩を踏み出した1年となったはずだ。次の全日本では、さらに強く大きく成長した佐藤の姿が見られることだろう。
最後の全日本のFSに選んだ曲は「母親が『いつか滑ってほしい』と言っていた曲」。楽曲の壮大なメロディーに万感の思いを込め、情感たっぷりの演技で観客の心を揺さぶった。途中にジャンプの乱れがありながらも、それを感じさせない世界観を作り上げた山隈。演技後、観客の温かい拍手が優しく山隈の花道を飾った。「お客さんと一体になれた。本当に幸せな4分間だった」とラスト全日本の演技をかみ締めた。大学卒業後は豪華客船のスケーターとして世界を回る生活が待っている。思いを込めて滑る山隈のスケーティングは次のステージでも輝き続けるに違いない。
(写真:13位に入った山隈)
演技後、やり切ったような表情で小さくガッツポーズを見せた大島。今回も見せ所たっぷりの滑りを披露した。全日本という大きな舞台の雰囲気や緊張感にのまれて本領発揮とならなかったSP。「(FSでは)後悔のないような演技をしたいと思っていた」。その言葉通りSPではミスのあったトリプルアクセルを2本とも高さのある加点付きで成功。さらに3回転ルッツの連続ジャンプを見事後半でリカバリーしてみせた。そして『トップガン』の疾走感あふれる音楽に乗せ、キレのあるステップで大観衆を沸かせる。時には観客に拍手を求める大島らしい場面も。まさに大島にしかできない滑りで、唯一無二の存在感を見せた。
(写真:14位に入った大島)
大混戦の熱戦が繰り広げられた男子FSは、一つのミスが順位を大きく変える熾烈(しれつ)な争いとなった。その中で明大の選手たちはそれぞれの目標を胸に渾身(こんしん)のFSの演技を披露。今回得た大舞台での経験は今後も歩み続ける彼らの道しるべとなるだろう。
[布袋和音]
試合後のコメント
佐藤
――F Sが得意とおっしゃっていましたが、その自信はどのようなところから来ていますか。
「F Sはミスがあっても後半に立て直せるところが得意な部分だと思っているので、ミスをしても後半に備えてしっかり滑ることができたのかなと思います」
――4回転ルッツのミスの後に心が揺らいだりすることはありましたか。
「ルッツは現地に来てから調子が良くなく、不安を抱えながらの演技になってしまいました。逆にミスをしてスッキリしたというか、気持ちをリセットして、その後いい演技ができたと思っています」
山隈
――今日の演技を振り返っていかがですか。
「本当に幸せでした。楽しかったですし、自分らしい演技だったと思います。こんなに気持ちよくスケートができているなんて信じられなかったですし、S Pとは違った一体感というか、みんなが自分の演技にのめり込んでくれているのを感じました。そういう雰囲気は自分の中で流れて気持ち良く演技することができて、滑りながら今日こそ自分がやりたかった演技だなと感じました。やはりフィギュアスケートというものはお客さんとあるものですし、お客さんと一体になって演じるからこそ最も良いものが出る。そしてそれを今日自分は体現できたと思いますし本当に幸せな4分間でした」
――幸せをかみ締めているように見えたのですが演技が終わった後かなり長い時間リンクにいました。
「離れたくなかったですね。ずっとあの空気を浴びていたかったですし、いつも通りドライにスッとといけるかなと思っていたのですが、やはり無理で(笑)。体が『まだいたい』と思っていて。本当に幸せで楽しくて、1秒でも長くそれを感じていたいという思いがあって、皆さんもすごく熱い気持ちを、拍手を通じて送ってくれているのを感じたから『少しでもその時間を長く』と思っていたら立ち上がることができなかったです」
――夏に、一片の悔いなしと思えるような年にしたいとおっしゃっていましたが、小学校1年生から始まったスケート人生はいかがでしたか。
「自分が思う理想の滑りが今日できたので悔いはないです。ジャンプの出来というのは正直二の次で、どのような滑りをするか、どのようにお客さんと一体になるか、それができるスケータ―になることが自分の理想で、今年度はその理想に近づけているのを非常に感じていました。本当にこの全日本のこのプログラムで皆さんと一体になるのを感じて、キスクラの時に流れた自分の表情が完全に世界に入れているな、これが自分のやりたかったことだなと感じました。それをここで完成させることができたので悔いはないです」
大島
――今日の演技を振り返っていかがですか。
「緊張と興奮で何をやったのか定かではありませんが、気持ちよく終わっているので納得のいく演技ができたのかなと思います」
――S Pの演技後に持ち味を発揮することができず後悔されていましたが、F Sでは発揮することができましたか。
「今回は本当に自分が後悔のないような演技がしたいと思って臨んでいたので、そうですね。何にも気負うことなく、いつも通りの思い描く演技ができたのかなと思っています」
――来年度に向けての目標を教えてください。
「S Pが終わった後に悔しい思いをしましたし、得点面でもまだまだ上に勝てるような点数ではありません。いろいろなところを基礎から全て強化していって、来年は胸を張って日本代表ですと言える選手になりたいと思っているのでそこまで一生懸命練習したいと思います」
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