(女子)住吉4回転着氷 全員が迫真の演技で魅せる/全日本選手権

 全日本選手権(以下、全日本)3日目。明大からは住吉りをん(商1=駒場学園)、江川マリア(政経1=香椎)、松原星(商4=武蔵野学院)の3人が悔しさの残る演技となったS P(ショートプログラム)の雪辱を果たすべくF S(フリースケーティング)に挑んだ。総合で住吉が14位、江川が22位、松原が23位と3人全員が順位を上げ、今大会を終えた。

12・21〜25 全日本選手権(東和薬品R A C T A Bドーム)

 自身の挑戦が実を結んだ瞬間だった。S Pではミスが相次ぎまさかの17位に終わった住吉。プレッシャーのある中で迎えたF Sとなったが決して攻めの姿勢は崩さなかった。今シーズンの実戦で果敢に挑戦し続けてきたもののいずれも転倒してきた冒頭の4回転トーループ。本番で成功させることの難しさ、悔しさを痛感し続けてきたが決して逃げることはなく今回も挑戦。惜しくも完璧なジャンプとはならずQマークが付いてしまうもこの大舞台で降りきったことは「自分の中で大きな成長」と大きな自信となった。しかしその後のジャンプでミスが続き、演技終了後には思わず頭を抱える場面も。「もったいないミスが目立ち集中が切れてしまった」。一つ壁を乗り越えたことでまた新たな壁が自身に立ちはだかる。しかしこの壁を乗り越えることができれば、住吉の目の前には新たな景色が広がるだろう。

 

 (写真:東日本女王としての意地を見せた江川)

 初の全日本となった江川。緊張もあり序盤のジャンプではミスが続いてしまう。しかしここから東日本女王としての意地を見せる。得意のアクセルトウを立て続けにきれいに着氷。その後もレベル4を獲得したスピンを生かしながら、持ち味である表現力を存分に発揮した。演技後半には『民衆の歌』の力強く壮大なメロディとともにのびのあるスケーティングで会場を一つにし、初めての大舞台を滑り終えた。シニアデビューを果たし初めての事に挑戦し続けてきたこの一年。「予選で良かったとしても全日本でいい演技ができるとは限らない」。東京選手権、東日本選手権と優勝を収め順風満帆の状態で全日本に挑んだ江川にとってこの結果は悔しいものとなった。この悔しさを胸に、強くなってまた来年この大舞台に戻ってきたい。

 

      (写真:有終の美を見せた松原)

 女子F Sの一番滑走として登場した松原。会場が全日本特有の独特な緊張感に包まれる中『フォレスト・ガンプ』の優しげなメロディーと共に、自身の世界観をつくり出していく。冒頭のトリプルサルコーでは着氷が乱れるも、2本目のダブルアクセル、トリプルトーループの連続ジャンプを成功させると波に乗った。スピンではいずれもレベル4を獲得。演技後半のトリプルサルコーとトリプルトーループの連続ジャンプ。代名詞とも言えるこのジャンプの復活には演技に懸ける強い気持ちがこもっていた。このF Sが松原にとっての最後の全日本での演技。「この舞台に最後に立てて幸せ」。19年間分の思いを一歩一歩かみしめながら氷上を舞う。万全な状態での演技とはならなかった。しかし、全日本デビューの時と同じ舞台となった思い入れのあるこの地に、松原のスケート人生の軌跡を残した。

 

 3度目の全日本、初めての全日本、最後の全日本。3人がそれぞれ違う立場で、違う思いを持って挑んだ今大会。なかなか自分たちの思うような演技とはならなかったが、大舞台で躍動する姿は確実に見る者の心を震わせた。この経験を力に変え3人はまた新たなステップへと歩んでいく。

 

[冨川航平]

 

試合後のコメント

住吉

――今日の演技振り返ってみていかがですか。

 「4回転ジャンプを初めて降りられたというのは、Qマークは付いてしまいましたが、自分では一つ大きな一歩、成長だと思っています。でもそれ以外でもったいないミスが目立ったので集中が途切れてしまったというのがすごく悔しい部分です」

 

――4回転トーループではどのあたりがイメージ通りできたのですか。

 「現地入りしてからすごく調子が良くて、今までの練習でずっと力んでいたのが取れて力まず跳べていたので、現地に来てからの練習の感覚通りに入れたかなと思います」

 

――4回転ジャンプを降りた後、集中が切れたというのはどのような状態だったのですか。

 「今までは失敗の原因が『跳べないかもしれない』という不安から来るものでしたが、今回は『跳ぶぞ!』という気合いが空回りしてしまったところがありました。『4回転ジャンプを降りたからこそ跳びたい』みたいな気持ちではなく、ただ無心で跳ぶようにしなければいけないと思いました。(気持ちが焦ってしまったのですか。)気持ちが先走って、体が力んでしまったという感じです」

 

江川

――演技を振り返ってみていかがですか。

 「やはり緊張してしまう舞台ではありますが、その中でメンタルの部分が今回課題だったなと、FSもSPも合わせて思いました。もう少し落ち着いてやりたかったのですが、やはり焦ってしまった部分や冷静になれない部分で少しジャンプが崩れてしまったりして、悔しい演技になってしまったのかなと思います」

 

――最後のステップは見せどころとおっしゃっていましたが、今日はどのようなことを考えながら滑っていましたか。

 「ステップを踏んでいる時はお客さんの顔も見られました。手拍子があってこそのステップだと思うので、今シーズン初めてそういう雰囲気で滑れたのでうれしかったです」

 

松原

――今日の演技を振り返ってみていかがですか。

 「最初、3回転の連続ジャンプ、2回転と3回転の連続ジャンプの予定でこのFSを締めるというか、一番大事な部分だったのですが、そこで最初ミスをしてしまって『やばい』と思いました。でもこれはもう後半に3回転3回転の連続ジャンプを着けるしかないなと思って、これまでケガをする前にやっていた3回転の連続ジャンプが跳べたのは良かったなと思います」

 

――何度か全日本に出られてきましたが、今年度の全日本を終えてどのような気持ちですか。

 「初めて出た時は少しでも上にという気持ちがあり、また新人賞を取りたくてこの舞台に来て『もしかして10位以内に入れば海外に行けるかもしれない』などという思いでした。でも、歳を重ねるごとにレベルが下がっていく自分がふがいないというか『こんなものになってしまったのだな』と思っていたのですが、昨日、永井優香(令3早大卒)ちゃんが来てくれて『最後をきれいに終えられる人はなかなかいない』と言っていたので結構不安だったのですが、ここの舞台に最後に立てたことを幸せに思います」

 

――最後のシーズンで最後の全日本ですが、悔いなく終わることはできましたか。

 「悔いしかないですね。やり切るぞと思って4年生を始めたつもりでしたが、こんな風になってしまって悔しいです。でも自分が今できることをしっかりと取り組んでここまで来られたので悔いがないといったらうそになりますが、やれることはやり切ってここまで来られたかなと思います」