
(男子)佐藤SP5位発進 山隈スタオベの好演技披露 大島も存在感示す/全日本選手権
全日本選手権(以下、全日本)2日目、男子SP(ショートプログラム)が行われた。明大からは山隈太一朗(営4=芦屋国際)、大島光翔(政経2=立教新座)、佐藤駿(政経1=埼玉栄)が出場。佐藤が明大勢トップの5位に入った。山隈は観客を引き込む演技で12位、大島が16位に入り全員が25日のFS(フリースケーティング)に進む。佐藤にとっては表彰台がかかる決死のFSとなる。
今シーズン鬼門としていたSP。その壁は今日も佐藤の前に立ちはだかった。冒頭の4回転トーループは流れるような着氷を見せ加点3.39点を引き出す。「4回転ルッツは入れられるような感じではなかった」と回避して跳んだ3回転ルッツのコンビネーションも成功。しかし公式練習から念入りに確認を行っていたトリプルアクセルで惜しくも転倒となった。「悪い意味で練習通りになってしまった」と悔しさの残るSPに。それでも今シーズン磨き上げてきたスケーティングの滑らかさには目を見張るものがあった。さらに1位の宇野昌磨(トヨタ自動車)を除く2位までの差はわずか5.91点と、順位ほど得点は離れていない。FSでここまで2戦連続完璧な演技を見せている佐藤。「明日明後日で切り替えてFSではノーミスの演技をしたい」。もちろん射程圏内の表彰台に向けて25日のFSに挑む。
(写真:12位に入った山隈)
演技終了後、思わず笑顔がこぼれた。スタンディングオベーションに包まれうなずきながら何度も繰り返したガッツポーズが、山隈の好演技を物語っていた。冒頭のトリプルアクセルは、高く舞い上がり幅のある大きなジャンプに。続く3回転ルッツからの連続ジャンプと3回転フリップも鮮やかに成功。演技後半のステップは観客と山隈が一体化した瞬間であった。徐々に疾走感の増す楽曲に合わせた、最初から最後まで流れが途切れない滑りを観客の手拍子が後押し。「ここまで会場を巻き込んで踊れたので最高に気持ちよかった」。最後は軸のきれいな高速スピンで最高の演技を締めくくった。
(写真:16位に入った大島)
唯一無二の存在感を全日本の舞台でも見せつけた大島は16位発進。大観衆を前に見事ロックスターを演じ切った。冒頭のトリプルアクセルには乱れがあり「久しぶりの有観客や初めての後半グループでの滑走で、自分で勝手にプレッシャーを感じていた」と振り返った。しかしそのままでは終わらせないのが大島。その後は「エレメンツの失敗を後悔しても仕方がない。自分の持ち味をフルで出そうと思った」と切り替えて大島らしいジャッジアピールも披露。3回転フリップ、3回転ルッツからの連続ジャンプも決めてみせた。後半のステップでも観客を魅了した大島。FSでもまた新しい唯一無二の演技が見られるに違いない。
表彰台と4回転ルッツの成功を目指す佐藤、最後の全日本で思いを込めたFSを滑る山隈、そして100パーセントを出し切り自分らしいFSを見せたい大島。それぞれの思い描く演技が全日本という大舞台で輝くことを期待したい。
[布袋和音]
試合後のコメント
佐藤
――予定通りの3回転3回転ですか。
「今日の朝の調子を見てルッツを入れるか判断しようと思ったのですが、4回転ルッツはあまりいい感じではなかったのでトリプルルッツトリプルトーループのコンビネーションにしました」
――3回転アクセルはどのような心境で入りましたか。
「大阪に来てからアクセルやトーループは降りているのに滑って転んでしまうというミスが多かったので、自分でもそういうミスは絶対しないようにしようと思ったのですが、悪い意味で練習通りになってしまった形です。明日でしっかりと氷の感触を戻していけたらいいかなと思っています」
――追う立場になりますが、FSに向けてどのような気持ちで挑みますか。
「FSは個人的に得意なFSだと思っているので、明日で4回転ルッツは調子を戻していけるようにして、しっかりルッツを入れてノーミスの演技をできるように頑張っていこうと思います」
山隈
――すごい手拍子でしたが聞こえましたか。
「もちろんです。最高にテンションも上がりましたし、多分ハイになっていました。この会場と一体になって、自分も楽しいしお客さんも楽しいという最高の空間をつくり出せたことが本当にうれしいですし、これを最後に味わいたかったので本当に幸せです」
――最後の全日本ということで、大会を通してのテーマやスローガンはご自身でありますか。
「心から楽しむということを唯一の目標にしています。苦しいことが多い競技生活ですが、その中で全日本出場が決まってからは、あの場所で自分がどんな演技をしても楽しかったと終われるように準備してきました。SPではそれを達成する事ができて、ようやくFSに進めるので、FSでももう一度心から楽しむという目標を持ってそこに向けてまたしっかり準備していきたいと思います」
――点数がかなり良かったと思いますがいかがですか。
「僕は70点を超えればいいなと思っていたのですが、今季の点数の出方を見ても厳しいかなと思っていました。今季はジュニアもすごくレベルが高く、経験した中で一番厳しいものになると思っていました。その中でいいパフォーマンスができて、自分で思っていたよりいい点数が出てくれたので、スケーティングや表現の部分がすごく伸びたのかなと感じています。それが形に現れて久しぶりに74点までもっていけたので、最後にしっかりまた戻ってくることができて良かったなと思います」
大島
――今日の演技を振り返っていかがですか。
「エレメンツがそろえられなかったこともそうなのですが、それ以上に自分の滑りや持ち味を100パーセント出し切ることができなかったのでそこが一番悔しいところです」
――原因はありますか。
「久しぶりの有観客ということや、自分の気持ちが高ぶっていたことだったり、初めての後半グループだったりということで自分が考えてもいないようなところで勝手にプレッシャーを感じてしまっていたところが原因かなと感じています」
――FSに向けて意気込みをお願いします。
「SPでこれだけ散々なことやっているので、FSも失うものはないと全力で滑り切ります。自分の100パーセントを出したら結果はついてくると思うので、とにかく自分を信じて滑り切るのみだと思います」
――キスクラで「大島光翔です!」と言っていたのはテレビを意識していたのですか。
「名前を知らない人ばかりだと思うので、そういう方々に名前だけでも覚えてもらえればなと思ってそうしました(笑)」
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