
(女子)住吉、江川、松原がFS進出 〝魔物〟に苦しんだSP/全日本選手権
全日本選手権(以下、全日本)が開幕した。22日は女子SP(ショートプログラム)が行われ、明大からは5人の選手が出場した。日本で一番大きなこの舞台で、やり直しのきかないただ1度の演技に懸ける思いはそれぞれだ。国内トップレベルの選手がひしめき合う中、住吉りをん(商1=駒場学園)、江川マリア(政経1=香椎)、松原星(商4=武蔵野学院)がFS(フリースケーティング)への進出を決めた。
◆12・21~25 全日本選手権(東和薬品RACTABドーム)
グランプリシリーズで2大会連続表彰台に上がり、世界で自信をつけた住吉が挑む全日本。最初のダブルアクセルを流れるように決めたものの、2本目のトリプルフリップでは着氷が乱れる。「クロスが上手く押せず、足に力が入らない感じがした」。持ち前の豊かな表現力で伸びやかな滑りを見せた一方で、その後もジャンプの調子が上がらず悔しさをにじませリンクを後にした。4回転を組み込んだFSで巻き返しを図りたい。
(写真:23位の江川)
東日本女王として臨む初出場の江川。前日の公式練習ではジャンプの調整がうまくいかない部分があった。緊張した面持ちでリンクに入り、最初のトリプルルッツで着氷が乱れてしまう。その後はトリプルトーループの連続ジャンプでリカバリーしたものの、アクセルは跳び切れず本来の実力とはかけ離れた演技となった。それでもスピンとステップ全てでレベル4を獲得し、安定した力を見せた。FSは「今日のことは忘れるくらいの勢いで、『やってやる!』という強い気持ちで頑張りたい」。
(写真:24位の松原)
深呼吸してスタンバイした松原。冒頭のトリプルサルコウとトリプルトーループの連続ジャンプをきれいに着氷し、続くダブルアクセルも着実に決めた。特に力を入れていたトリプルループでは転倒してしまったが、軸のブレない美しいスピンで魅せた。「最後の最後までループ決めるぞという気持ちできたので失敗してしまって悔しい」。ラストシーズン、最後の全日本の舞台で悔いのないFSにしたい。
(写真:25位の佐藤伊)
大きなミスなく最後まで駆け抜けた佐藤伊吹(政経4=駒場学園)。壮大な音楽に乗せて、体全体を大きく使って表現した。冒頭のトリプルサルコウとトリプルトーループの連続ジャンプを決めると、勢いに乗ってその後のジャンプも流れるように決めた。明るいスカーレットの衣装がリンクに映え、雄大な大地を駆けるヒロインを演じた。ラストシーズンで最後となる全日本。「惜しかった部分はあったが、最後まで気持ちよく滑れて幸せだなという気持ちが大きかった」。
(写真:26位の本田)
全日本には8回目の出場となった本田真凜(政経3=青森山田)。前日の公式練習ではジャンプに不安の残る部分があったものの、冒頭のトリプルサルコウとダブルトーループの連続ジャンプを危なげなく決めた。続くトリプルフリップでは転倒してしまったものの、美しい身のこなしで魅了した。「ジャンプは悔しい部分があるが、それ以外は丁寧に滑れた」。8回目の全日本にして初めてFSに進めなかった悔しさをバネに、より高みを目指したい。
全日本という大舞台の厳しさが詰まった女子SPとなった。リンクに潜む魔物に打ち勝つのは至難の業だ。FSでは気持ちを切り替えて、それぞれがベストを尽くせることを期待したい。
[増田杏]
試合後のコメント
住吉
――今日の演技を振り返っていかがですか。
「練習の時とはあまりにも違って、信じられないというか、集中できていなかったと思います。体の動きが悪くて全体的にスケーティングも伸びていなかったと思いますし、それが原因でジャンプもはまらなかったのかなと思うので、体の動きが硬かったのが一番悪かったところかなと思っています」
――気持ちの面ではいかがでしたか。
「緊張し過ぎるということもなく、いい集中で入れたのではないかと思っていたのですが、自分が感じているだけで演技中いろいろな無駄な考えのようなものがあったというのは感じたので、それが集中の妨げになったんだろうなというのはあります」
――FSに向けて意気込みをお願いします。
「今までの人生で一番と言っていいほど練習してきたという自信はあるので、FSではそれを無駄にしないという気持ちで全力でやりたいと思います。今日のことは無かったことにしてSPが悪かったからFSで巻き返そうとかそういう気持ちよりも、ただ練習してきたものを出す。それだけかなと思います」
江川
――悔しい演技になってしまった要因は何だと思いますか。
「こういった舞台であまりに緊張して体が動かなかったわけではなかったのですが、少しメンタル的にいけなかった部分があるのではないのかなと思います」
――東日本選手権(以下、東日本)1位で迎える全日本、10位以内を目指す中でプレッシャーなどはありましたか。
「ミスをしてしまったら10位以内に入れないかなとうすうす感じてはいました。それでも初出場ということもあって伸び伸びと滑ろうという気持ちでやっていたので、あまりそういうプレッシャーのようなものは感じていませんでした」
――「(全日本の)ドラマの主人公になりたい」と以前話していましたがどんなドラマを起こしたいですか。
「SPでこういった演技をしてしまったので、いい出だしではないですけども、FSこそ自分らしさを出せるプログラムになっていると思うので、FSで滑れることに感謝して、自分の力を全て出し切りたいです」
松原
――頑張ることができた点をあげるとしたらどこでしょうか。
「ずっとケガをしていてサルコウとループしか練習できませんでした。サルコウトーもうまくいかなかったり、ケガして休んだ分、どんな姿勢でも付けられたセカンドトーループも崩れてしまっていたりしました。それがすごく不安だったのですが、こっちに入って少しずつトーループなどの調子も上がってきていたので、そこは自信を持って臨めたかなと思います」
――ケガをして練習できなかったのはどのくらいですか。
「東京選手権が終わってから捻挫してしまって、東日本が終わってまた捻挫してしまいました。とりあえず全日本に入る2週間前からジャンプを跳ぶという感じで計算してやっていたので、常にぎりぎりでやってきても合わせることができたのかなとは思っています」
――最後の全日本、どんな気持ちで臨みましたか。
「全日本でそんな恥さらしな演技見せるのかという状態だったので、最後だから気持ちを込めてとかそういうのではなくて、とにかく合わせなきゃという感じでした。こんな大勢の前でテレビとかが来てくださる中で、最後の最後にそんな演技見せるのかという葛藤などが大きかったので、無事滑り終えることができて本当に良かったです」
佐藤
――今シーズンが最後ですが、準備の段階ではどのような気持ちでしたか。
「最後のシーズンだから特別頑張るということはなくて、今までの毎シーズン、前のシーズンを超えるという気持ちで練習してきたので、それは変わりなかったかなと思っています。どんな結果であれ、後悔しないような練習ができたと思います。寂しい気持ちは少しはあるのですが、それよりもたくさんのお客さんの前で滑ることはこの先あまりないと思うので、応援してくださってる人たちの視線を感じながらやりたいなという気持ちが一番大きかったです」
――スケートを完全にやめる葛藤はありましたか。
「スパッと決めました。(もったいないという声も聞こえてきそうですが)そう言ってくださる方もいたのですが、自分の中では17年半やってきて、十分やったというか、ちょうどここが節目だとしたら次はスケートではない新しい世界を見てみたいなという気持ちがかなり大きかったので、ここを節目に次のステージにいこうとすぐ思いました」
――振り返ってスケート人生はどういうものでしたか。
「最後まで難しかったなと思っています。結果だけ見れば、全日本には6年間毎年出ることができたのですが、そんなに簡単に結果は出ないなというのは何度も思いました。これが難しいなと思った理由です。でも頑張っていればいつか絶対形になるなというのもスケートを通してすごく強く思いましたし、自分を信じることができましたし、そこは難しかった部分も含めて、好きだったし、楽しかったと思います」
本田
――以前と比べてプラスに考えられるようになったきっかけは何ですか。
「自分がとてもつらいと思った時に偶然おすすめに流れてきた動画があって、大まかに言うと、人生は思い込みで、いい方向にも悪い方向にも進むというものでした。それを見てから、全てプラスに捉えるようにして楽しく過ごせるようになったかなと思います。自信を失った時期とかもあったのですが、スケートも普段もいい方向に進んでいるのではないかと思います」
――練習から本番にうまくもっていくことができた精神的な要素はありますか。
「何度も出てきたこの全日本では、6分間練習が終わってから『もう本当に嫌だ』と思うことがあったりして、8回のうちにいろいろな思い出があります。同じこの会場で、2018年はすごく苦しくてつらいなと思っていたのですが、その時と比べたら自分自身楽しんでできているのではないかと思います。やってて良かったなと思える演技をしたいというのが今一番の目標なので、頑張ります」
――最近の調子についてはいかがですか。
「どこが噛み合わないかというのは分からなくて、試合に向けての緊張だったり、長くやっていてもここというのは分からないです。こっちに来てリンクに入ってからは慣れるのにすごく時間がかかった印象で、今日はこのジャンプは思い切りやろう、スピンステップは丁寧にやろう、というのは心掛けていました」
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