(男子)大島総合優勝 大島・山隈が全日本出場を決める/東日本選手権
SP(ショートプログラム)に引き続きFS(フリースケーティング)が行われた。各自が健闘を見せ、総合順位では大島光翔(政経2=立教新座)が1位、山隈太一朗(営4=芦屋国際)が3位、松井努夢(政経3=関西)が7位、堀義正(商3=新渡戸文化)が17位に。大島と山隈が全日本選手権(以下、全日本)への切符を獲得した。
◆11・3~6 東日本選手権(ぐんまALSOKアイスアリーナ)
(写真:優勝した大島)
少し緊張した面持ちで登場した大島。両手を真っすぐ広げ『トップ・ガン』の飛行が静かに始まる。冒頭の3回転アクセルは乱れがあったものの着氷、続くコンビネーションジャンプはきれいに成功させた。そして、変化する曲調に合わせて表情も使い分け、明るくアップテンポな部分では持ち前のキラキラした笑顔を見せた。しかし、続くジャンプではミスを連発。ジャンプに備える姿勢から彼の緊張が伝わってくる。高く跳び上がるも着地がうまくいかない。「緊張しているつもりはなかったが、知らずのうちに体がこわばってしまった」と今回のFSには納得していない様子を見せた。前日のSPではノーミスの演技で、自己ベストとなる75.02を得点したからこそ、その悔しさは一段と大きい。
全日本に向け必要なのは「どんな状況でも決められるエレメンツ」。全日本では今回は入れなかった4回転ルッツも組み込む分、それ以外の要素でのミスは避けたい。今回の反省を生かしどこまで修正できるか。大舞台ではとびきりの笑顔を咲かせる。
(写真:3位の山隈)
6分間練習からジャンプを成功させるなど調子の良さをうかがわせていた山隈は、冒頭から3回転アクセル、ダブルトーループをきれいに着氷。音楽に合わせ緩急を付け、体の端まで感情を入れ込むことで、一人で何度もリンクの雰囲気を変化させる。さらに安定感や壮大さをも感じさせる滑りが、彼の演技を一層際立たせていた。しかし試合後のインタビューで開口一番に語ったのは「ショック」という言葉。引退を決め、スケート人生で最後となる東日本選手権(以下、東日本)に対する恐怖は想像よりも大きく、体への影響も強かった。「恐怖心と、パフォーマンスに集中しようという心」のうごめく二つの気持ちに挟まれて「明らかに集中し切れていなかった」。その心の苦しさが現れたのは演技後半。前半に比べて、ジャンプでのミスが目立つ。最後まで何とか滑り切ったものの、最後のポーズには悔しそうな、そしてどこか寂しそうな表情を浮かべた。
「全日本ではSPもFSも完璧に完成させた演技を」。特別な思いで挑む全日本。手にした大舞台への切符で、有終の美を飾ってみせる。
(写真:7位の松井)
「かなり緊張していた」と試合前に何度も深呼吸をしていた松井。SPを6位で通過し「全日本の4枠を狙えるという位置にあって少し期待していた部分があった」と緊張と焦りの中で演技に臨んだ。それでも冒頭の3回転ルッツをしっかり決め、不思議な音色と黒い衣装、そして凛とした表情で会場全体を魔法の世界へといざなう。アイスダンスで鍛えられたスケーティングを存分に発揮し、エレメンツとエレメンツとのつなぎ目を誰よりも滑らかに滑った。ジャンプ着地後のほんの一瞬の足元にも、上半身と同じくらいの丁寧さが現れる。繊細な美しさが光る『ファンタスティック・ビースト』だった。後半はいくつかジャンプに乱れがあったものの、スケーティング技術もあってかそこまで点数は落ち込まず総合順位7位に着地。内容に対して「まだまだ駄目だなという感じ」だと振り返った、スケーティングを評価されたことに「まだ伸びしろがあると思う」。シングルスでは惜しくも全日本出場とはならなかったものの、練習の成果は如実に表れている。この先も、もちろん全日本ではアイスダンスで、もっと高めた演技を見せるに違いない。
(写真:17位の堀)
ゆったりとした部分とアップテンポな部分が混じった曲で、表情の異なるステップを見せた堀。演技の初めは静かに鳴り響く単音から、すぐに何音も重ねたスケールの大きい音楽に移る。その変化に合わせ、下を向いていた堀が手を広げ、大きく踏み出した。スピードあるスケーティングで、迫力のある動き。その勢いのまま3回転ルッツへ入る。着氷こそ危うかったが転倒せずにしっかりとこらえた。しかし「高さがいつも以上に出てしまって変なところに気を遣ってしまった」という反省を見せる。3回転ルッツは今大会で久しぶりにプログラムに入れたこともあり、この後も彼にとって重要なジャンプになってくる。全日本出場とはならなかったが、一週間後に迫った都民体育大会(以下、都民大会)では絶対に決められるようにしたい。
全日本出場を懸け、白熱した戦いとなった今大会。各自の色を持ったスケートが見る人に感動を与えた。次のステップへ向けて、明大の選手の躍進はとどまることを知らない。
[新村百華]
試合後のコメント
大島
――演技を振り返ってみていかかですか。
「やはり悔しいという思いが1番強くて、自分の力を発揮できずに終わってしまった感じです。でも東日本は、あくまでも予選ですし、全日本に向けて新たな課題が見つかったという部分では少し前向きに考えようと思っています」
――SPでは1位FSでは3位という順位はどう捉えていますか。
「勝負の世界で1位は勝ちだと思いますが、SPが良かった分、FSで落ちてしまうのは良くないことだと思いました。SPとFSの両方をそろえてこそ実力だと思うので、やはり全日本で上を目指すにはどちらも良い演技をしないといけないと思いますし、そういう部分ではまだまだだなと思いました」
山隈
――今日を振り返っていかがですか。
「ショックですね。もっとできるというか、すごく練習してきたし体のコンディションも良かったのでもっと良い演技をして自信を深めたかったのですが、そううまくはいかないなと。あとは東日本で引退するシーズンの恐怖を感じました。今まであまり自分の引退について考えたことはありませんでしたが、『今年で終わりだ、次はない』ということを実感しました。ここまで実感したのは大きかったです」
――全日本に向けて意気込みをお願いします。
「やはり今年も全日本という素晴らしい舞台に立てることが本当に幸せなことですし、最後なのでしっかりいろいろな雰囲気をかみ締めたいです。なおかつ今年は体のコンディションもスケートの技術も、全てがピークだと思っています。全日本ではSPもFSも完璧に完成させた演技を見せて『これが僕だよ』と最後に見せられるようにしたいです」
松井
――演技を振り返ってみていかがですか。
「かなり緊張していました。順位的にも点数的にも全日本の4枠が狙える位置にあってちょっと期待していた部分が自分でもあって変に狙っているところがあったから気持ちが焦っていました。後半のジャンプは崩れたりしてしまいましたが、点数はそこまで悪くなく順位もそこまで落とさなかったのは良かったと思います。ただ内容を後から振り返ってみるとまだまだ駄目だなという感じです。まだまだの演技でこれだけ点数が出ているのはスケーティングを評価してもらえているということなので伸びしろがあるなと思いました」
――次戦に向けて意気込みをお願いします。
「リズムダンス(の振り付け)が1週間前にできたばかりで、どうにかまとめたという感じです。都民大会ではもう少し全日本へ向けて試合に合った演技ができるように頑張りたいと思います」
堀
――今日の演技を振り返ってみていかがですか。
「テンションが高すぎたかなと思います。自分の中で超えてはいけないところを超えてしまい抑制が効かなくなってしまいました。それでジャンプの高さがいつも以上に出て変なところに気を遣ってしまったので、そこのところが良くなかったかなと思います」
――次戦以降への課題は何ですか。
「来週都民大会で、あと1週間しかないのですが、コンディションとテンションと、モチベーションを持続させながら試合に臨むことが1番だと思っています。今大会で久しぶりに3回転ルッツが試合の構成に入ったのでそこのところはうまくこの1週間で固めていければ絶対つながると思います。ルッツはしっかり決めてフリップも手を着けられたらと思います」
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