【瓦版】渡部 復活V/全日本大学対抗選手権

2022.09.27

 大舞台で鮮やかな復活を遂げた。渡部春雅(政経2=駒大高)は今年度かつてないほど勝てない日々が続いていた。そんな中で迎えた全日本大学対抗選手権(以下、インカレ)で歓喜のロード優勝。そして2冠にも輝き〝カスガスマイル〟を見せた。

 

 「勝てたらいいですけれど……」。大会前に口にした不安を払拭するかのように、渡部はインカレ初日からトラック競技で好調ぶりを発揮した。インディヴィデュアルパーシュートでは最終組で登場すると圧巻の走りを披露。2位との差を1秒以上つけ、1位に輝いた。好成績を残したトラック競技から中1日。自転車競技で最も注目が集まるロードレースは本州最南端の地・南大隅町で行われた。アップダウンの激しいコースを3周回、計76.2㌔で勝負を決める。雨が降りしきる中、18人がスタートした。スタート直後からこのレースの過酷さを物語るように棄権者が続出。2周目の時点で残ったのはわずか7人のみとなった。そのような状況でも「天気に不安はなかった。コース自体もアップダウンがあって走りやすい」と渡部は全く動じない。最終周回に入ると「ゴール前のスプリントでは勝ち目がない」と上りで仕掛ける。飛び出したのは渡部と日体大の2人。数的不利だが、渡部の圧倒的な力は2人をねじ伏せる。果敢にアタックすると、下りで独走態勢に。その後も最後までペダルを踏み続け、1着でゴールイン。満面の笑顔で拳を突き上げた。

 

 〝ゴールデンルーキー〟。まさにその言葉通りの新人が昨年度の渡部だった。明大17年ぶりの女子部員。期待が集まる中で1年生ながら三つの全日本大会で優勝し、その強さを存分に発揮した。しかし今年度の優勝はわずか一つ。自信を失い、彼女から笑顔がなくなっていた。その状況下で支えとなったのは、吉井功治コーチやマネジャーなど、多くの人からの応援の声。「サポートしてくれるみんながいるから自信を持ってスタートラインに立てた」。そして自信を取り戻した渡部は最高の舞台に最高の結果で恩返しを果たした。

「インカレから帰ってきても踏めているので復活してきた」。スランプを見事に抜け出した渡部。彼女の視線の先は常に世界だ。2年後、夢の五輪に向かって。渡部の真価はここからだ。

[中村謙吾]