(男子)明大から2人SP通過 FSで巻き返しなるか/全日本選手権

 昨日の女子SP(ショートプログラム)に引き続き行われた男子SP。北京五輪の最終選考として白熱した試合となった。明大からは大島光翔(政経1=立教新座)が18位、山隈太一朗(営3=芦屋国際)が22位でFS(フリースケーティング)に駒を進め、堀義正(商2=新渡戸文化)は32位にとどまった。

 

◆12・23~26 全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)


 少し緊張した面持ちでリンクに登場した大島。出だしのトリプルアクセルとトリプルフリップを力強く着氷したものの、続くコンビネーションジャンプは失敗。スピンもレベル4を獲得できたのは一つだけだった。全日本ジュニア選手権後は練習量も増やしたが、「力を出し切れなかった」と悔しい表情を見せた。「SPは最近ノーミスの演技ができていなくて自信がなかった」。しかし、有観客の会場で「楽しく滑れたのは間違いない」と持ち前の“スタァ性”も発揮。「体を120パーセント使ってアピールできた」。リズミカルな音楽に乗った笑顔で、会場いっぱいに入った観客をロックオンした。地元埼玉で行われている今大会。「温かい歓声」を味方に、FSでは本領発揮を狙う。

 

 22日の公式練習でもジャンプの抜けを見せていた山隈。冒頭ゆったりとした音楽に合わせた動きで滑りだし、心のこもった表現を披露。初めのトリプルアクセルもしっかり踏み込み、成功させるかのように思われた。しかし跳びあがった足が開いてしまい、無得点に。その後スピンは全てレベル4を獲得するも、ジャンプの抜けが致命傷となった。音が重なりテンポも上がるチェロの音色。勢いよく流れる水のようなその迫力が、今日は彼の心の焦りを表しているかのようだった。事前インタビューで、楽しみでもあるが怖いと語った今大会。昨年度の全日本でFSに進めなかったトラウマが強く「今日に至るまで本当に苦しかった。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった」。しかしFS進出が決まった今日、記録は新たに塗り替えられた。「FSは楽しめると思うので気負いなく会場の雰囲気を楽しんで滑れたら」と意気込む。苦しいSPを乗り越え、本来の強さを再び見せられるか。FSの舞台からも目が離せない。

 

 シニアとしては初めて出場した堀は、冒頭2つのジャンプを跳び切れなかった。ノービスのころから全日本で跳ぶことを夢見ていたトリプルアクセルも「間に合わなかった」とプログラムに入れることを断念。FS進出は叶わなかったものの、世界で活躍するトップスケーターと同じ舞台に立つことは堀にとって刺激となった。更衣室では大きな舞台独特の空気を感じたと語り「自分もその空気感の一員になれるようにここから再スタートで頑張っていきたい」と躍進を誓った。

 

 それぞれの想いを乗せたSPはどの演技も見ている人の心に響くものだった。全日本という大きな舞台はまだ始まったばかりだ。それぞれの努力が実りますように。FSにも期待が高まる。

 

[新村百華]

 

試合後のコメント

大島

――地元でもある大きな会場での試合ですが、いかがですか。

 「埼玉での開催ということで、歓声が温かく聞こえてホームにいるみたいでした。広い会場で、お客さんが味方してくれている中で滑らせてもらって、楽しく滑れたのですが、演技の内容が悪かったので悔しい気持ちが強いです。自分の体が追い付いていなかったかなと思います」

 

――五輪シーズンの全日本ということで、出場してみていかがですか。

 「目立つことは大好きなので、その点では自分に得なことしかないと思っています。自分目当てでなくても、たくさんのお客さんが入っているので、それだけ多くのお客さんに自分をアピールできるチャンスだと思っていて、自分の長所がアピールできたらいいなと思いながら臨みました。体を120パーセント使って演技できたと思うので、その点においては悔いなくできたと思います」

 

山隈

――演技を振り返ってみていかがですか。

 「ジャンプが2個抜けてしまったので結果としては良くなかったです。今日に至るまでが本当に苦しくて逃げ出したい気持ちでいっぱいでしたが、よく最後まで逃げずに戦ったなと思います。演技に関しては、ジャンプ以外は良かったかなと思います」

 

――東日本選手権ではジャンプを取り戻して前向きな印象がありましたが、そこから落ちてしまったのですか。

 「全日本というものがとにかく重くて、いい思いもしてその後どん底に落とされたし、今までで一番つらい思いをした試合です。正直なところ、今年はユニバーシアードに全精力を向けていて、それをきっかけにして全日本に向き合おうと思っていたので、ユニバーシアードがなくなったことでいきなり高い壁が急接近してきたような感じでした。この会場に入ってから体の動きが明らかにおかしくなっていたり、前を向こうと思ってぱっと前を向けるような簡単な試合ではないので、そこは難しいです」

 

――演技を振り返ってみていかがですか。

 「何もできなかったというのが率直な感想ですが、この大舞台を経験したことで、次からの試合に臨む姿勢など全て変わってくると思うので、いい経験だったと思います」

 

――有観客での試合はいかがでしたか。

 「6分間練習の時に名前がコールされたあと拍手をいただけて、大勢の方たちの応援を感じることができたのはとてもうれしかったです。大きな拍手をもらえたことで、練習中にジャンプがいつもよりも高くなったような感じもしました。演技する前も良い状態のモチベーションを保てていたので、お客さんがいる方がいいなと改めて感じました」