(女子)樋口SP2位通過 明大勢そろってFS進出へ/全日本選手権

 特別な年の全日本選手権が開幕した。北京五輪の最終選考会も兼ねる今大会。初日は女子SP(ショートプログラム)が行われた。五輪出場が懸かる樋口新葉(商3=開智日本橋学園)は、SPを2位で通過。佐藤伊吹(政経3=駒場学園)は15位、松原星(商3=武蔵野学院)は17位、本田真凜(政経2=青森山田)は23位でFS(フリースケーティング)への進出を決めた。

 

◆12・23~26 全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)

 

 スタンディングオベーションが会場を包んだ。「自分の中では100パーセントの演技ではない」と振り返るもノーミスの演技を披露してみせた。冒頭、ダブルアクセルを確実に着氷させ得点につなげる。力強さもあるまとまった3回転の連続ジャンプを決め、GOE1.35を記録した。3本目のトリプルフリップも見事に着氷させる。「スケートができて楽しい」という気持ちを乗せた『ユアソング』。強さもあれば透明感もある豊かな表現は見る者の目をくぎ付けにした。フィニッシュしたあと、小さくうなずいた樋口。そのうなずきにFSでのさらなる躍進の兆しを感じる。4年前はあとわずかで逃してしまった目標の舞台。五輪の切符をつかむべく今こそ全日本の表彰台へ。正真正銘の強さを見せつける。

 

 緊張が入り交じった面持ちだった佐藤だが、曲がかかるとリンクを一気に異世界へと導いた。冒頭、3回転の連続ジャンプを決め、続くトリプルフリップも着氷させる。曲のリズムに合わせた手拍子が起こり、その流れでダブルアクセルを成功させる。「ジャンプをそろえて、スピンやステップでも得点することを徹底し」目標の55点を大きく超える59・38点を記録。FS進出を決め、昨年度の雪辱を果たした。「うれしい気持ちと大舞台で滑ることに感謝して演技したい」。謙虚さも忘れずに、思う存分大舞台で躍動する。

 

 表現にも磨きをかけた演技を披露した松原。冒頭のトリプルルッツはバランスを崩しての着氷だったが、続くダブルアクセル、3回転の連続ジャンプをきれいに決める。演技後半、明るい表情に加え、手先までしなやかな動きを見せ、吸い込まれていくような美しさが光った。また、スピン、ステップともにレベル4を獲得。SPを通過できたことに対して「本当に安心した」とキスアンドクライでは笑顔を見せた。妥協せずに目標の実現を追求した松原。FSでも練習の成果を発揮できるか期待がかかる。

 

 東日本選手権とは異なるプログラムで挑んだ本田。3回転の連続ジャンプを見事に決める。1本目に「集中しすぎていた」ことも影響したのか、2本目のループは失敗。それでも演技後半に跳んだダブルアクセルは確実に着氷させた。終始、曲や歌声とマッチする魅惑の表情で「自分らしさをたくさん出せる」プログラムを滑り切り、FS進出を決めた。

 

 この舞台に立つまでに味わった思いはそれぞれ異なる。だが、一人一人が志を高く持ち前向きに挑んできたことが結果となって表われた。無事にFS進出を決めた明大勢。全ての思いを演技に込めて、悔いのない結果につなげたい。

 

[守屋沙弥香]

 

試合後のコメント

樋口

――演技を振り返っていかがですか。

 「本当にとりあえず1日目を無事にミスなく終えられて良かったなという気持ちです」 

 

――滑る前はどんな気持ちでしたか。 

 「緊張感もあったのですが、とにかくダブルアクセルで変な開き方をしないように、しっかりいいタイミングで降りられるようにということと、絶対にミスしないという気持ちで、緊張しながらも落ち着いて滑ることを目標に頑張りました」

 

――特に何に注意してこの全日本に臨みましたか。 

 「海外試合や隔離などもあって、いつもとは違うようなシーズンの過ごし方でしたが、その中で自分の体調管理だったり、ケガをしないことだったりにもとても気を遣いながら過ごしていて、そこも今日までつなげられたなと思います。調子が100パーセントではない時もありましたが、全日本までにどんな気持ちでどのような練習をしていくのかということを、良いところも悪いところも想像できていたので、それが今日までつなげられたなと思います」

 

佐藤

――得点が発表された時の表情が印象的でしたが気持ちを教えてください。 

 「55点を超えることを目標にしていたので、それを大きく超えて今シーズンの自己ベストを出すことができたので、そんなに出ると思っていなくてびっくりしました」

 

――今回は昨年逃したFS進出を決めましたが、FSではどのような演技をしたいですか。 

 「FSに進めたのはすごくうれしいので、そのうれしいという気持ちとこの大舞台で滑れることに感謝して、あとは思い切りやるだけだなと思っています」

 

――今シーズンは序盤から調子が上がってこなかった感じがしていたのですが、どのようにモチベーションを保ってきましたか。 

 「東京選手権であまり良くない演技で、そこでかなり自分の中に危機感があって。東日本選手権からの枠も少なかったので、そこでこのオフシーズンにやってきたことが無駄にならないように、このさいたまスーパーアリーナで滑りたかったので、とにかくそれを強く思ってやっていました」 

 

松原

――演技を振り返って、いかがですか。 

 「SP通過が今回の全日本での大きな目標だったので、終わった時点でQが付いたので本当に安心しています」

 

――全日本のためにやってきたと思いますが、どのような気持ちでリンクに入ったかを教えてください。 

 「全日本はやはり一番緊張する舞台でもあるし、本当に1年で一番楽しい試合でもあり『楽しんできて』と先生にも言われたので、楽しめたかなとは思っています」

  

――最後にFSへの意気込みをお願いします。 

 「SPばかりやってきたのでFSはすごく不安ですが、まとめられるように頑張ります」

 

本田

――SPを滑り終えて、振り返っていかがですか。 

 「まずはこの全日本に出場できたことをとてもうれしく思いますし、楽しく演技ができたのでよかったなと思います」

 

――2本目のジャンプのミスには原因はありますか。 

 「やはり最初のトリプルサルコウ―トリプルトーループを、久しぶりに試合で決めることができて、そこのジャンプを決めたいなと思っていたので、集中しすぎていたかなという風にも思いました。2本目のジャンプは完全に点数がない状態なので、それはすごくもったいないなとも感じますが、ジャンプから離れていて久しぶりにジャンプを再開した年明けに比べると、本当によくここまで戻すことができたなとも思うので、悔しさと、よかったなという半分半分くらいの気持ちです」