
(7)鬼木祐輔フィジカルコーチインタビュー
そこで今回はチーム離脱に際して、ユース・ジュニア世代で主に活動してきた鬼木フィジカルコーチに、初めて送った大学サッカーとの1年半をうかがってみた。なお、この取材は第13節対専大戦の9月24日に行われた。
――フィジカルコーチ就任の経緯を教えてください
僕の友達の山本剛(平19法卒)から「藤枝東が明大に練習試合で来るから見に来る?」と声を掛けてもらい、2015年12月15日に行きました。その時に栗田(大輔監督)さんや三浦(佑介元ヘッドコーチ)さんに挨拶しました。その2週間後に栗田さんからお話をいただきました。もし、練習試合に見に来ていなかったら、そのお話はなかったです。今まで大学生を見たことありませんでしたが、やりたいと言ってやれるようなものではないので「興味はあります」と伝えました。その後、もう一回栗田さんと会って話をし、次の日にはご連絡をいただいて就任に至りました。
――週にどれくらい来られていますか
週3回と土日のゲームに来ています。他のチームでもフィジカルコーチをやっていますが、明大の練習は朝なのでどこのチームとも被りません。
――トレーナーとの違いは何でしょうか
トレーナーは、ケガの予防や選手を復帰させることが主だと思います。僕はパフォーマンスを上げるために、どのように体を動かしたらいいか、どのように鍛えたりすればいいかを教えています。
――フィジカルコーチという存在についてどのようにお考えでしょうか
上手くなりたいと思っている子はたくさんいるので、そういう子たちのきっかけになれるように僕みたいな仕事がスペシャルではなく当たり前になってほしいです。それが長期的な自分の目標でもあります。明大以外の学生から質問を受けたり、講習会をやっても他の大学の学生の子たちが来てくれるので、本当に大学サッカーからフィジカルは当たり前になってくれたらいいと思います。
――明大の『ノビシロ』はいかがですか
今までは小中高校生をずっと見ていたので、「こういうことをしないとプロになれないのではないか」と仮説を立てた上で色々やっていました。ですが、明大で「こういう選手がプロにいくのか、逆にこれできなくてもプロにいけるのか」と感じることができました。Jリーグの選手や海外の選手と比べてみると、まだまだやれることはあるという印象です。みんな真面目で一生懸命にやってくれるので、逆に勉強になっています。
――明大は紙一重でプロになれなかった選手が多いです
今、高校卒業後にプロになれなかった選手と、小さい年代の子たちを見ているので「将来こういうことができないとプロのステージにはいけないのか」と感じることができました。体を無理させずいかに省エネで動けるかというのを彼らから教わりました。
――マネジャー日記にもユニークなトレーニングが掲載されています。具体的に取り入れたトレーニングとその目的とは何でしょうか
なるべくスムーズに動くための準備や、動き方、減速、自分のスピードを無駄に使わないでコントロールする練習です。サッカーは見て判断しないといけないので、見るところの感覚を上げることや、他には筋肉が硬いので、なるべくしなやかに動けるような練習を取り入れています。みんな真面目なので、リラックスしてほしいという思いも含めつつ取り入れました。
――テクニカルな話の前に、まずはトレーニングの意図を理解してほしいとお考えでしょうか
選手たちは上手いので、感覚でやれてしまうことがあります。でも「なぜそのプレーが成功したのか、失敗したのか」が分からないと彼らは真面目なので一生懸命練習するんですが、結局上手くいかなくて、空回りしてしまっている印象があります。こういう時は、成功か失敗かを伝えることと技術的なのことも含めて体の入れ方を理解して成功しているのを知ってもらいたいと思いながらやっています。
――栗田監督から、守備のスピード感や球際の向上をオーダーされていたそうですが、どのように練習に取り入れましたか
明大の選手は速くて強いですが、日本トップレベルの選手と比べると、無駄に体力を使って気合いで片付けられていました。そこで、日本のトップレベルの人たちの動きと明治の選手たちの動きの映像を見せて「いかに今より省エネさせ、より強くできるか」を伝えました。2016年の3月末には合宿があり、栗田さんの許可を得てそこで映像を見せたら、選手がイメージとマッチして、そこからグンと伸びた気がしています。
――就任初年度では2冠を達成しました
去年は逆になんであんなに勝ったのだろうという印象です。去年と今年の大きな違いは、点取るところで点が取れていました。内容は悪くないですが、肝心なところで取れなくて押し込まれてやられてしまう試合が多いです。今年の4年生は本当に真面目なので、それぞれが背負い過ぎてしまっています。皓貴(木戸皓貴主将・文4=東福岡)以外のアタッカー陣が、それぞれのチャンスをものにしないと、彼らの将来までものにできないと思います。
――真面目というと、今年の4年生は真面目と言われています
黙々とやるのが今年の4年生ですね。根が真面目です。去年の4年生も真面目ですが「ノリでいこうぜ!」と言っている感じの真面目です(笑)。今年は背負いすぎてしまって空回りしている気もします。
――その中で木戸選手はどのような選手でしょうか
能力が高いです。無茶が効いてしまうので、気合いが空回りして3年生の時のケガは、そこまで頑張らなくていいところでケガしてしまったところがあります。能力が高いだけに、無事ステージで活躍してほしいです。
――1年半を振り返ってみていかがでしょうか
僕自身が成長させていただきました。感謝しかないです。こんな景色を見させてもらい、2015年はお金払ってチケット買って明治のリーグ戦見ていた場所でした。まさかこんなに関わって、初年度から2冠を経験させてもらえるなんて思ってもいなかったです。あの日、2015年12月15日がなかったらこうなってないので本当に感謝です。選手に質問してもらって、僕自身も勉強させてもらい感謝しかないです。いい組織なので、明治から日本サッカーを変えてほしいです。
――これからの明大サッカーに期待することは何でしょうか
いい選手が多いです。おごることなく、自分のサッカーを追求してほしいです。日本サッカーで活躍している選手は本当の一握りです。そういうステージで、最前線でプレーする選手が、明大からもっと増えてきてほしいです。卒業した後も、就職しても、明大サッカー部だったことを誇りに、今ここで鍛えてほしいです。
[臼井美理亜]
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