
(12)「フィットネスとFWを強みに戦う」 田中澄憲ヘッドコーチ
――夏合宿の振り返りをお願いします
菅平はどちらかというとゲームメインの合宿という形で、こちら側はそういう位置づけでした。夏合宿できつい練習をして強化するというよりは去年トップ4のチームのうち3チームとやれるので、その試合という意味で臨みました。結果としては帝京に負けて、あと東海、天理に勝てたということはすごくチームとして、選手としても自信になる合宿だったのかなと思います。一試合一試合すごく選手が成長したかなというふうに感じました。
――夏合宿で重点的に練習されたことは何ですか
夏合宿では「コミュニケーション」というのをテーマに挙げていました。やっぱりどうしても普段は良い悪いは別にして学年で固まると思いますが、せっかく2週間同じ宿舎で朝から晩まで一緒にいるので、そこで1年生からしたら4年生に言いにくいことがあったりもあるのではないかと感じました。なので食堂のご飯を食べる席だとかもいつもだったら4年生の席と1年生の席みたいなのがあるのですがそういうのを全部ポジションなどにして、とにかくコミュニケーションを多く取れるような環境づくりというか仕掛けを作りました。あとはチームソーシャルという、チームビルディングみたいなものを1週間終わった時点の中休みでやってみたりだとか。とにかくラグビーのこともオフフィールドのところもコミュニケーションを取ってほしいというのが一番だったので、そこをテーマに、コミュニケーションの向上というのを重点的に合宿ではやったつもりです。実際選手間でミーティングやったりだとか、グラウンドの中でもああだこうだというのを選手同士でもいろいろ話すようになりましたし、コミュニケーションは合宿中はかなり良かったと思います。
――夏合宿で得られたことは
たぶん選手としてはある程度自信になったのではないかと思いますね。東海大学と天理大学とやれたというのは自信になったと思いますし、帝京終わった後に「アティチュード」という話をしたのですが、要は態度とか姿勢です。そこの取り組む姿勢だとか試合に対する姿勢というのは、春マインドセットという話をしていましたけどそういうところも大事なのだなということをたぶん再認識したと思いますし、今でも選手の中でもアティチュードという話はゲーム中にも聞こえてくるようになってきました。まあそこは良くなっているなと、すごく成長したなと思います。
――チームの現状を教えてください
まだシーズン始まったばかりですしジュニアが始まったばかりで、まだまだどちらかというと選手間の競争をもっとやっていってほしいと。誰が出ても明治のラグビーを遂行できるというチームをつくり上げていきたいと思っています。それで10月の後半ぐらいからしっかりとファイナルで戦えるようなチームをつくっていこうかなと考えているので、今は春からやってきたことと夏合宿でやってきたこととをしっかりと積み上げている状態です。不安とかそういうのではなくて、予定通りには来ています。
――セットプレーの現状はどう見ていますか
スクラムに関しては、春は少ない武器で戦ってもらっていました。FWはスクラムしかなかったので、スクラムは全部押しましょうというメンタリティーでやっていたのですが、いろいろモールが入ってきたりだとか戦術的になってきたりだとかした時に、ボールを出せればいいという感覚になっているなというのは正直感じます。もちろん80分間の中でどこで相手に対して気を与えるかというのはこちらもしっかりと選手に落とし込みをしてやっていかないといけないと思います。あとモールはディフェンスが相手によって違うので、そこに対してうまく対応しないといけないなというのはすごく感じましたね。対応しないといけないですけれども、やっぱりモールでトライを取るというもう少し強いマインドがなければいけないのかなというのは感じます。
――春の時点での課題だった選手の「主体性」は今どうでしょうか
春に比べたらだいぶ良くなっていると思います。選手でミーティングやったりだとか、スモールグループで集まって話したりだとかもしていますし、春に比べたらやっぱりだいぶ成長しているなと思います。試合の中でも慶応ジュニア戦でもビデオで改めて見てみると、良くなったよねというのは出ていたので、良くなっていると思います。
――春に今季の方針として挙げられていたセットプレー、ディフェンス、攻守の切り替えは現時点でいかがですか
セットプレーはある程度見えている部分というのは春の時点であったので、ディフェンスのところですよね。ディフェンスのところはやっぱり春はほぼやっていないに近かったので、春が終わって夏合宿前くらいからやり始めたのですが、帝京こそトライはやっぱりたくさん取られましたけど、天理も二つで東海も三つですよね。だからそこに関してはある程度相手に対してプレッシャーかけるようになってきているので、ラインのスピードが上がるようになってきましたし、一人一人のタックル成功率も上がっています。でももう少し2人目がしっかりタックルいくというのをもっと意識しましょうというのを今やっています。
攻守の切り替えに関してもずっと春からやっているので、相手のミスに対して自分たちのアタックだという意識づけというのは少しずつできていると思います。ミスしてもすぐディフェンスに切り替えられるようになってきていますし、その部分ではそれもアティチュードと同じ部分だと思うので、良くなっていると思います。
――春からのチームの変化はどのように感じていますか
みんなスキルというところではかなり上がっていると思いますし、あとはやっぱりフィットネスの部分はすごく上がったなと思います。慶応のジュニアを見て思ったのですが、慶応ってたぶんどちらかというと明治よりも走り勝つというチームだと思います。ですがこの前のジュニアの試合を見て、慶応より明治の選手の方が疲れていなかったというか、慶応の選手の方が疲れていました。それを見た時に、ああやっぱり鍛え上げられてきたなと感じました。うちの選手は結構今肉体的に鍛えられて、強くなったと思います。それは強度の高い練習によってつくられたもので、それに尽きると思います。だから時間ではなくて強度だと思います。去年より練習時間は短い中で強度の高い練習をしているので、強度が高いということは試合に近いということですし。試合よりも高い強度で練習をしているので、やっぱり試合中はみんな選手は動いていると思います。そこが変わった部分としては一番だと思います。
――今年はどこを強みに戦っていきますか
一番はやっぱりフィットネスですよね。フィットネスも含めたフィジカル。そこが一番だと思います。あとは考えること、みんなが。考えるというのはコミュニケーションを含めて。ディシジョンメイキングですよね。あともう一つはFWですよね。もうFWです。これだけですね。それをずっとやってきたというか、もちろん強化の方針はセットプレーとディフェンス、トランジションというのはやっていますけど、ただやっぱり一番変えてきた部分ということだと思うので、そこは変わらずまだまだ選手に高いものを求めていきたいなと思っています。
――最後に、対抗戦に向けた意気込みをお願いします
今春から夏合宿というのを経て、ファンの皆さんも期待は結構していただいていると思うので、しっかり期待に応えるような結果を出せるように、もうそれだけです僕のやること、コーチ陣がやることというのは。あとはもう選手の成長です。選手がしっかりと成長したなと思ってもらえるように、そのサポートをしていきたいなと思います。まあでも、面白いシーズンになると思いますよ。僕もすごく楽しみなので。本当に選手が成長していると思うので、そこを信じて引き続きやっていきたいと思います。
――ありがとうございました
◆田中澄憲(たなか・きよのり)平10文卒
今年度よりヘッドコーチに就任。在学時の4年次には主将も務め、卒業後はサントリーに進み主将も任された。2005年には7人制日本代表に選出され、ワールドカップにも出場。2010年度に現役を引退し、2012年度からはサントリーのチームディレクターに就任する。2016年度にはトップリーグ、日本選手権と2冠達成を支えた。
[石塚真維]
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