(13)ルーキー特集 ユースの背中を越えていく 伊予から来た男の挑戦 野井辰真

2017.04.11
 新たな歴史をつくる。創部93年の歴史を誇る明大ホッケー部はインカレ優勝12回の実績を持つ古豪である。1987年以降全国大会での優勝から遠ざかっており、昨季はインカレ初戦敗退と屈辱のシーズンを過ごした。今季は川村敬亮(政経4=今市)を主将とし、古豪復活に向け『超攻撃型』を合言葉にチームを変革する。本特集は挑戦を続けるホッケー部の活動に迫っていく。
 今年も7人の期待のホープが加わった。いよいよ数日後に迫った春季リーグでの活躍も楽しみだ。今回はそんなルーキーたちを一人ずつ取り上げる。
 

 下克上物語の幕開けだ。野井辰真(法1=伊予)は高校からホッケーを始めたばかりのGK。同期、一つ上にはU―18(18歳以下)でGKを務めたライバルがいる。技術面での差はまだあるが、宮田知監督も「身体能力は一番高い」と期待は十分。そのポテンシャルは計り知れない。

 スティックを握ったのは運命だろう。中学の先輩に誘われて、愛媛の高校で唯一のホッケー部に入った野井。入部当初からGKを志願するも、防具が一つしかなく、本格的に始めたのは1年生の秋ごろだった。試合に出られるようになっても相手のほとんどは経験者。試合では負けが続き悪戦苦闘の日々だった。それでも限られた時間の中でひたすら練習。最後の全国大会であった国体1回戦では1―11で大敗したが、前半は2失点にとどめた。成長を実感できるようになり「ホッケーは楽しい」と思うように。大学でホッケーを続けるのに理由は要らなかった。

 ただうまくなりたい。その一心で明大に進んだ。だが周りを見渡せば代表経験者ばかり。「なかなか簡単にはいきません…」。同期の中川蒼生(理工1=伊吹)からも駄目出しの連続。一学年上にもユースで正GKだった塚田駿(文2=今市)の存在がある。でもそこで腐るような男ではない。「負けたら終わりですよ」。差があるのならこの4年間で抜けばいい。血眼で二人のプレーを盗んで自分の糧にしている。「うまい人にすがらないと生きていく道ないです」。今はレベルアップに必要な準備期間。「日本代表を4年間で抜きます」。静かに闘志を燃やす野井の逆襲はここから始まる。

◆野井 辰真 のい たつま 法1 伊予高出 180㎝・72kg ポジションはGK 背番号25

次回のルーキー特集は久保庭昌太郎(営1=天理)です。お楽しみに!

[浜崎結衣]