
小川が全7戦中6戦で一本勝ちの圧巻V 全日本選手権へ弾み/東京都選手権
文句なしのスタートを切った。今年最初の公式戦となった今大会。順調に勝ち上がった小川に試練が訪れたのは、2015年の講道館杯81kg級王者の海老泰博(旭化成)と対戦した5回戦。開始早々に右手親指を負傷すると、満足な試合運びができない。しかし「つかめなかったので」(小川)と臨機応変に対応して繰り出した投げ技で豪快に一本勝ち。全日本選手権の出場権を手にすると、昨年敗れた準々決勝を危なげなく突破。準決勝は優勝候補筆頭と目された先月のグランドスラム・パリの100kg級優勝者の飯田健太郎(国士舘高)を破った丸山剛毅(パーク24)と対戦。一緒に練習をする機会も多く、戦術も知られている丸山に一時技ありを先行される苦しい展開となる。それでも「焦りはなかった」(小川)と50kg近い体格差を生かし、逆転の一本勝ち。迎えた決勝でも同級生の香川(東海大)を旗判定で下し、初優勝。猿渡琢海監督(平11営卒)も「よくやった」と健闘をねぎらった。

得意の寝技で一本勝ちを重ねた
屈辱をばねに進化を見せた。昨年11月の講道館杯では上位進出、優勝も期待された中でまさかの3回戦敗退。「自分の中でも大きかった」(小川)とライバルたちに後れを取った事実は小川を変えた。その結果を如実に表したのが寝技の強さ。今大会では4試合で寝技で一本勝ち。丸山との準決勝でも一度抑え込まれたがすぐに解き、ポイントを奪わせなかった。攻守で持ち味の寝技の強さが発揮された結果に、応援に駆け付けた父・直也氏も「そこ(寝技)をしっかりやれていたのはよかった」と愛息の奮闘に目を細めた。出場権を手にした全日本選手権に加え、来月2日には福岡で全日本選抜体重別選手権が行われる。既に組み合わせが発表されており、1回戦の相手はリオデジャネイロ五輪銀メダリストの原沢久喜(日本中央競馬会)に決まった。「気合の入る組み合わせ」(小川)と闘志を燃やす。シニア日本一へ小川の挑戦はこれからだ。
小川の活躍が目立った一方、その他の選手は出場権を得られなかった。金山天地(政経3=柳ヶ浦)が4勝を挙げ、成長を見せるなど収穫もあったが寂しい結果に終わったことは間違いない。「それぞれの意識改革をしなければならない」と猿渡監督も奮起を促す。野々内悠真新主将(商3=崇徳)の下、一丸となって古豪復活へ挑む。
[加藤真人]
試合後のコメント
猿渡監督
「小川はよくやったと思います。決勝まで7試合という数が多い戦いになったが、意地とプライドを持って戦い抜いたし、本選に向けていい経験がつめた。東京都選手権で優勝できたことは自身にもつながったと思う。一番のヤマ場は代表決定戦。決定戦で想定していた影浦(東海大)が上がってこなかったので小川も気が楽になったと思う。影浦は先週ドイツで原沢(JRA)にも勝った実績があるので対策もしていたが、その分気が楽になって自分の動きができて展開もよかった。決定戦後に指を突き指したと行って少し弱気な部分も出たが、もう一試合やって様子を見ようと思ったら意外と力が出ていたので『決勝まで頑張れ。決勝で勝って来年を楽にしろ』ということを伝えた。それで結果残してくれたので良かった。決勝の相手の香川は同い年で同世代で過去、高校選手権と全日本ジュニアで戦って1回も負けていない。香川はインターハイチャンピオンだけど小川はやりやすいタイプの選手。研究もされていたけど、小川は負けないという自信もあったし心配なく見ていました。(講道館杯から)地力が付いて自身もついて堂々とした戦い方ができるようになった。焦らずに自分の形をつくることや組み勝つことができるようになった。ただ、そこでまだ足りないのが相手を投げて勝つこと。投げ方、投げるタイミングを強化していきたい。今日収穫があったので、寝技への移行。相手を押さえ込んで一本を取るということがこの試合で出せたので、練習でやってきた成果が現れた。技術的には講道館杯から若干の成長が見られた。組み手とスタミナはかなり成長した。けどもっともっとパワーアップを求めていきたい。小川が目指しているところは世界である五輪なので、そこを目指すためにはまだまだ倒さなければいけない相手がたくさんいるし、ここで満足する訳にはいかない。モチベーションの部分では貪欲で強さを目指している。まだ3年生なので、4年生になったら下級生の面倒も見てほしいけど今はしっかり自分のことを考えてほしい。原沢だったり七戸(九州電力)、王子谷(旭化成)、上川(平24営卒・現京葉ガス)を倒しに行かなきゃいけないという考え方は持っていると思う。まだまだ挑戦者なので。(全日本体重別選抜選手権までに強化したいこと)パワーとスタミナ。まだまだ足りない。(今日の全体的な評価)練習でやっていることが試合に出せていない。なんのための練習かと。技、打ち込み、投げるための動作が全く試合に生かされていない。監督しては『もっと勇気を持って技に入りなさい』と言っている。そのために練習している。もっと積極的な柔道をしていればみんな上位にいけた。もったいない、自分自身の不甲斐なさが跳返ってきた。金山に関してはよく戦ったと思うし、代表決定戦のラスト30秒で弱気な部分が出て優劣をつけられたと思う。技には入っているけど投げるところもまでやっていかないと金山が攻めていると見てくれない。判定の試合ではイメージも大事。投げる技術は持っているのでそれを出せなかった金山の失敗。野々内は1回戦で東海大の選手に判定勝ち波に乗るかと思ったけどパーク24の選手に技術的に負けてしまった。もっと相手のことを研究して勝ってほしい。三村は影浦とやって負けてしまったけど自分から積極的に攻めていく柔道をやったけど、得意の返し技をやろうとしたときに相手の形をつくらせてしまった。なので、まずは相手をしっかり見てどういう時に何の技で投げられるのかを研究して覚えること。(団体として)それぞれの意識を変えていかないと厳しい。小川一人が高い意識をもって戦っていてもダメ。それぞれが自分が勝つという気持ちを持たないと団体戦は勝てないので意識改革をしながらやっていきたい」
小川直也氏
「内容はともかく、代表決定戦の時にちょっと痛めたんだよね。そういったアクシデントは彼の中では過去あんまりなかったからそこで結果を出せたのはよかった。(一本勝ちが続いたことは)予選っていうのは緊張するもんなんだけど、その中で自分の持ち味出して戦えたのはよかったんじゃないかな。(抑え込みでの一本が多かったが)それはもう彼の得意分野だから。そこをちゃんとやってたのはよかったんじゃないかな。(100kg超級以外の選手との対戦も多かったが)彼の場合は体の小さい選手でも大きい選手でも万能にやれる。それは小さい頃からやってきてたので。そこは他の選手と違うところなんじゃないかな。(自分の背中に近づいてきている感覚はあったか)近づいてきてるのかはまだわからない。鈍感だね。(1ヶ月後には選抜体重別が控えるが)まずそこだね。いいスタートが切れたんじゃないかな。(この冬の間は成長が見れたか)頑張ってたね。(今後へ向けての期待)今日はただいいスタートが切れたというところ。2017年いいスタートが切れたんで、そこから福岡の体重別、全日本選手権、この2つが大きな目標じゃないかな」
小川
「とりあえず本戦に出場することが目標だったので、その目標を達成することができて、良かったと思います。(コンディションは)普通でしたね(笑)。(試合内容は)ケガしたりとか色々ありましたけど、その中でも優勝できたことは良かったです。(準決勝まですべて一本勝ちだったが)一本勝ちで勝てたというところは自分の中でも大きかったと思います。(負傷した試合は)海老さんとのとこですね。右手の親指を突き指しました。(どの段階で負傷しましたか)開始すぐですね。相手の背負いを手で受けに行った時です。(投げの一本は狙い通りか)あれは持てなかったので。臨機応変に対応した結果です。(準決勝では先行される展開だったが焦りはなかったか)なかったですね。(丸山選手は階級も下の選手だったがやりにくさはあったか)まあいつも練習一緒にしてるんで、技がキレるのは知ってました。最初取られたのは完全に自分のミスだったんですけど、それでもしっかり返せたのでよかったのかなと。(決勝は同級生の香川が相手だったが)試合自体は2回目だったんですけど、まあ同級生なので絶対負けないという気持ちで戦いました。(ポイントは奪えなかったが試合内容は満足しているか)団体戦の時はまた違う戦い方をしたいと思いますし、とりあえず勝ったってことはよかったですね。(棄権せずにやりきった理由は)監督にやるかどうか自分で決めろと言われていた。でもここで辞めたら本戦にも繋がらないなと思って、最後まで試合はやりました。(自信はついたか)この予選で優勝したことが本戦にもつながってくると思うので、この結果は自信にもつながります。(優勝して本戦に進むことは気持ちの面でも違いがあるか)優勝したこともそうですし、怪我しても最後までやり切れたって言うのは自分の中でもいい評価がつけられる大会でした。(父の直也氏もこの大会は優勝しているが)親父は本戦も優勝してるので、まだまだハードルは高いですね。自分もそこに行けるよう頑張りたいです。(直也氏はスタミナ抜群だったが)去年はバテバテでしたけど、今日はしっかり最後までやりきることができたので、スタミナは去年よりはだいぶ付いてきたかなと思います。(直也氏がまだ体が大きくなると言っていたが、その感覚はあるか)あまり実感はないですね(笑)。(柔道のスタイルがよく似ているが)よく言われますね。まあ教えてもらった人なので(笑)。(昨年の講道館杯では悔しい結果に終わったが、そこからどう消化していったか)講道館杯で負けて同じ階級の人たちと差がついてしまったと感じました。あの試合を勝ち切れなかったと言うのは自分の中でも本当に大きくて、そこから練習して今日優勝できてよかったです。(冬の間やったことは)スタミナ強化、技のポイント、寝技で決めきるところの3つをやってきました。(その成果は今日でましたか)そうですね。決勝まで戦えたって言うのは一本が多かったって言うのもありますので。その点においては寝技は良くできていたと思います。(国際大会で同じ階級の選手が活躍したが)焦っても仕方ないので、この大会はこの大会でしっかりやろうと臨みました。(東京五輪へ向けて激しい争いになって来たが)かなり厳しい戦いになっていくと思うんですけど、ここから大会も始まっていきますし、一つ一つ頑張りたい。(そこで勝ち抜ける自分の武器は)スタミナの部分。トップとやっていく上では今日の試合は投げられたりもしましたし、反省していかなきゃいけない課題もたくさんありましたし、そこからまずやっていきます。(具体的にスタミナを積むためにやっている練習は)冬の練習で乱取りを追い込んだりしてやりました。(全日本選手権の目標は)優勝以外ないと思うので、そこを目指して頑張りたいです。(来月には体重別もあるが)まずはそこなので、しっかり調整していきたい。気合の入る組み合わせにもなってますし、気合い入れて頑張りたいです。(初戦がいきなり原沢だが)1回戦でやるのも決勝でやるのも一緒ですし、優勝する上ではどこで当たるとかそう言うのはないです。チャレンジャーの気持ちでぶつかっていきたいです。(新ルールも導入されるが)しっかり投げてポイントを取らなきゃいけなくなったので、そういった面では今日は良かったと思います。(組み手の反則が緩和された点は)そんなに気にはしてないです。今までとそこまで変わらないです。(明大では小川しか出場権を手にできなかったが明大全体として強化したい面)東海大が大きな相手になると思いますし、その中で戦っていくには個人能力の高さだったりを伸ばしていきたいです。(今年はどんな目標にしたいか)去年は大事なとこで取りこぼすことも多かったので、大きな大会でしっかり勝つということを目標に頑張りたいです(全日本選手権への意気込み)優勝だけを目指して頑張ります」
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