
1点差で惜敗も実業団相手に爪痕残す/日本選手権
最後まで相手の実業団を苦しめた。初めにペースを握ったのは明大。海老原貴史(農3=藤代紫水)と門間優次郎(法2=法政二)の両サイドがうまく機能する。事前の分析で、両サイドからの失点が多いことを突いた作戦が功を奏した。その後、相手の反撃に遭い、1点ビハインドになった前半29分40秒。残り20秒で点は入らないものの、相手ファウルでノータイムフリースローとなり、任されたのは吉野樹主将(政経4=千葉県私立市川)。吉野とGKの間に6人の高い壁がある中、放った一投は壁の横を通りゴールへ。同点に加え相手にダメージを与えるシュートで前半を折り返した。
後半は残り10分となったところが勝負の分かれ目だった。後半中盤、これまで温めておいた作戦の一つである7人攻撃がはまり、常にリードする展開に持ち込むも徐々に足が止まり始める。体が自分より一回り大きい相手の当たりの強さが後半ラスト10分に効き始めた。後半23分からは吉野でさえも1点も入れることができず、逆転を許した。最後は果敢に相手ボールのカットを試みるも1点が遠く、29―30で敗れた。
試合に敗れるも、全てを出し切ったかのような充実した笑みを見せた。「学生でもこれだけ実業団に戦えるということが一人一人分かったと思う」(吉野)。今年を振り返れば、春と秋のリーグで優勝と2位、インカレでも準優勝と明大が強いということを象徴づけた1年だった。またその大躍進の裏にはOBや保護者の存在なしには語ることができない。試合前に出す差し入れと応援は選手たちの力を最大限に引き出した。照り焼きチキンやオレンジなど体にいいものをもてなし、試合中には愛情がこもった応援が一年通じて絶えなかった。4年生が抜ける来年に向けて早くも練習試合の話が出てきている。明大ハンドボール部の戦いはもう始まっている。
[吉田周平]
試合後のコメント
加藤良典コーチ
「最後足止まったのは、変則ディフェンスをやったことで足に疲労がきたのと、実業団のハードな当たりで後半オフェンスが当たり負けしたり攻めあぐんだら得点が止まってしまいました。7人攻撃はインカレ終わってからやろうと決めていてやっていたので、この日のために選手たちには豊田合成対策としてやっているとは日体大戦があったため言わなかったですけど、いい形で決まっていたのでそれが成果になったと思います。豊田合成はサイドの失点が多いのでそこを重点的に最後までボールを回してサイドで点を取ることを徹底して言ってきたので、それでしっかりサイドで点を取れていたのは本当によくできたと思います。樹とも話をしてシュートを狙うのに相手が必ず前に出てくるのでさばいてボールを回してサイドにいっていたのでそれがうまく機能したと思います。最後の10分が実業団のハードな当たりがジャブで後半効いてきて足が止まったのが大きいですね。練習でやってきたことを出せたのが一番ですし、本当に下級生はいい経験ができたと思います。後、4年生は今年たくさん記録をつくって春優勝、秋準優勝、インカレも準優勝で明治のハンド部に財産を残してくれたと思うので経験しているわけだからそこを来年はつなげてしっかりやっていってもらいたいですね。またOBとか保護者の方が来てくださったのが今年強かった要因の一つだと思います」
吉野
「最後は僕がミスしたりとかパスカットされたりとか、僕の責任をすごく感じてしまったので最後決め切れたら勝っていたのかもしれないです。そういう面では一緒に頑張った仲間で、誰のせいでもないですけど申し訳ない気持ちでいっぱいでした。(実業団との試合は)やってみてまだまだ自分がっていうふうになってしまったので周りをもっと生かせていればと思いました。課題がたくさん見つかったので、ポストを使ったプレーだったりとかそういうのを次のステージを意識してやっていきたいと思います。(収穫は)フィジカルが強い相手でもパス回しで崩したりとか間を割りに行ったりとかそういう戦い方も一つあるんだなと思いました。実業団で全然体つきも違うんですけど、戦い方によっては学生でもチーム力で戦えるということはすごく感じました。(豊田合成は)手を上げたその上から真っ向勝負というよりは、手が上がるちょっと前に間から打ったりというのを心掛けていたんですけど、もう少しでしたね。相手のスキを狙って打ったりとか、ずらしてずらしてサイドで勝負するというのが僕らの狙いだったので。そういうので最初は点が取れたのでそれがやっぱりこれだけ良い勝負ができた要因だと思います。(ディフェンスは)上から打たれるのが一番怖かったので、上から打ってその下のポストを下で2人で守るっていうのを心掛けたんですけどやっぱりポストにやられて。うまくサイドで勝負できている時は良かったんですけど。でも今日はだいぶ良いディフェンスをしていたんじゃないかな。キーパーも良く止めてくれていたので。(父母会たちのサポートは差し入れで)照り焼きチキンとかの肉とか、タンパク質のものだったりオレンジだとか身体に良いものを差し入れしてもらいました。100%のジュースとか。そういうのは本当にありがたくて。そういうの一つで疲労とか変わってくると思うので、親の愛情とかも感じました。保護者の応援は本当に良いものだったので、これからも愛される明治大学でいてほしいなと思います。(応援に来ていた同期からは)『頑張れよ』って。やっぱり本当に良い同期を持って。僕が困った時は声を掛けてくれる仲間がいるので、僕もこの1年間伸び伸びやってこられたと思います。(改めて1年間を振り返って)僕にとっても幸せな1年間でした。チームメートに恵まれ、スタッフ陣にも恵まれて、保護者の方にも応援してもらえて支えてくれる方々がいて本当に幸せ者だなって。そして僕は次のステージでもやれるので、今までの経験もありますがこの1年間がすごく良い経験ができたのでそれはみんなのおかげなので、そういう感謝の思いも込めて次のステージでも頑張っていきたいと思います。(印象に残っている大会は)やっぱり全部ですね。春は優勝してすごいみんなも雰囲気良くて、練習に打ち込む姿勢から素晴らしくて僕もやりやすかったですし、改めてチームの雰囲気の大切さを学びました。秋は雰囲気だけでは駄目だということが分かったので戦術を加えて、ハンドボール面での勉強もさせてもらいました。それを最後にインカレにぶつけることができて、こうやって最後は実業団相手にここまで試合できるというのはこの1年間でチームが成長したなっていうのを僕は身に染みてかんじたので良かったです。(4年間を振り返って)無駄な年というのはなくて1年生の時もいろいろ先輩から学ぶことがありましたし。つまずいた時もありましたがそれを乗り越えて成長できました。4年間を振り返ったら本当僕はつまずいた時もありましたがすごい充実した成長できた4年間だったと思います。(次のステージでは)こういう良い形で(大学でのハンドボールを)終えて満足しちゃうのではなく、僕はこれからも長い目でやるのでひたすら努力して日々成長できたらなと思います。僕は日本代表にまだ全然選ばれていないので、取りあえず今目標としているのは日本代表に選ばれることですね。夢はオリンピックに出ることなのでそれに向けてひたすら頑張りたいなと思います。(後輩に向けて)学生でもこんだけ実業団に戦えるということが一人一人分かったと思うので。僕も世界大会とか経験して自信になったので、こういう機会って大切だと思うのでまた1段階成長したんじゃないかなって思います。この経験を生かしてこれからもそれを自信にして練習から頑張ってほしいです。本当に良い雰囲気でずっとまたこれからもやってほしいなと思います。あとは後輩には本当にありがとうって言いたいです」
瀧澤尚也(営4=群馬県立富岡)
「自分たちはもう残るものがなかったので、死にもの狂いでいって。やっぱり今日改めて思ったのは格上相手に戦っている自分たちは4年間で初めてハンドボール楽しいなと思いました。僅差で試合が進んでそんな中みんなでまとまって言い合えて、それが通用したっていうとこが良かったです。(結果は)悔しいと言えば悔しいがそれよりここまで戦えたことがうれしいです。ここ(豊田合成)が一応目標で倒すということをやってきて、やってきたことを全てぶつけようと思ったので。ふざけてか分からないんですけどコーチに(自身のディフェンスを)『良かったよ』と言われてうれしかったです。(1年間振り返って)仲間に恵まれたのが一番大きいです。自分も試合に出るたびに親だったり仲間だったりが支えてくれたので。(引退した同期が応援に来ていたが)すごくうれしいですね。『集中!集中!』って上から声掛けてくれたり。その声が結構届いて。前半終わった後、やっぱり格上相手に焦ったんでその時に声を掛けてくれたりして落ち着きました。(吉野とは)最後だからもう俺たちで締めくくろうじゃないけど、やりきろうと話しました。(社会人では)強豪チームにいくので、レギュラー争いに負けないぐらいしっかりやっていきたいです。(後輩たちに)日本選手権とか経験したので通用するプレーがあるのが多いですし、優秀なのでこれ以上にもっと仲良くやってほしいです」
海老原
「最初は実業団が相手っていうことで緊張していました。でも最初のシュートが決まってくれたので、そこから乗ることができて、実業団のキーパー相手でもシュート決められたっていうのは自分にとって自信になりました。チームとしても通用する部分が結構あって、まあ勝てた試合だったので悔しいですね。(7人オフェンス)かなり練習積んできたので、あの形で得点取れたのは良かったです。(得点の停滞)実業団の選手に当たられていて、体力面でも足が止まっちゃったっていうのはありますね。敗因という敗因はないと思うんですけど、やっぱりここ1本という時のシュートミスですね。(1年振り返って)春1位、秋2位、インカレも2位できて、正直明治に入った時はこんな成績残せるとは全く思ってなかったので、素直にうれしいですね。(吉野、瀧澤も引退)あの2人が抜けるってことでチームとしての不安はあります。吉野さんが抜けて点数が減っちゃうと思うんですけど、そこをみんなでカバーできるように練習中からやっていきたいです。(来年の目標)今年の成績を抜くっていうことでやっていきたいと思います」
門間
「(豊田合成は)フィジカルが強くて後半ラスト10分粘り切れなかったのが悔しいです。思い切りやろうとすることしかできないので相手が強くて。ラスト10分で2点差、3点差離すところで点を取り切れなかったのが敗因の一つだと思います。今年は春から成績が良く、1日1日楽しく練習ができたのでとても充実してよかったです。樹さんが残してくれた伝統を崩さないように次にどんどんつないでいって来年こそインカレで優勝できるようにまた1から頑張りたいと思います」
前原大輝(商1=横浜創学館)
「ここに来ること自体が目標で気持ち高めてやっていたので、まあ勝てるとは思ったんですけど。後半27分とか自分たちの方でミスがあって得点できなくなったので、そこは課題ですね。前半はやっぱり学生っていうことで体力面の勝負というか、どんどん速攻も出しました。頑張って止めたんですけどね(笑)。合成はかなり殺気立っていて、そういうところでミスしたり、シューターもそういう感じなので待っていれば当たるなという感じで、当たってよかったです。7人攻撃はずっと練習していたので、入ると確信していました。それがはまって良い展開に持ち込めたのは良かったです。今の4年生OBも来てくれていて、本当に負けられないなっていう気持ちが強かったです。まあ良い緊張感でした。(今季最後)終わっちゃいました。本当に短かったなと思います。春優勝で秋とインカレ準優勝で、すごいですね。すごかったです。1年目からこんな経験ができて、幸せですね。(同期)信也は経験あるので、心配してなかったです。翔太(中川・営1=法政二)は持っているものはすごいので、もっと期待できます。(吉野、瀧澤が最後)来年1月からまた練習する時に4年生がいないっていうのは、心配もありますけど正直ワクワクのほうが大きくて、下級生ですけどちゃんと盛り上げて、明治は樹さんだけのチームじゃないっていうのを証明したいですね」
山田信也(政経1=愛知)
「実業団が相手だったので、ディフェンスを思いっ切り当たりにいって、ポストでやられる分にはいいのでロング(シュート)を打たれないようにっていう話をしていました。最初からやることが決まっていたので、ディフェンスは思い切りできて自分の中では一番良かったです。ディフェンスはみんなの連携とかも良くて、そのおかげでオフェンスのリズムもできたので、立ち上がりはすごく良い雰囲気でできたかなと思います。(前半同点)やっぱりディフェンスが機能していて、オフェンスもサイドシュートがすごく決まっていて、回して回してサイドで攻めていました。同点で終われるとは思っていなかったので、流れ的にも吉野さんの7㍍は本当にすごく良かったです。(プレッシャー)実業団相手だったので、当たって砕けるじゃないですけど格上で失うものはないし、思い切り楽しんでやろうと思っていて、逆にいつもよりは緊張はしてなかったと思いますね。練習からずっと7人のオフェンスやってきていて、6人で攻めていて流れを変えたい場面でオフェンスのシステムを変えて、そこでうまく決められて自分たちのペースにできたので良かったです。(得点の停滞)実業団が本気出したなというか、まあ相手も後半すごく修正してきてどんどん得点できなくなっていって、7人も封じられてできることがなくなって。最初飛ばしすぎた部分もあって僕たちの足が止まったところでやられたという感じ。やっぱり実業団の修正力っていうとこですかね。でも完全燃焼できました。(吉野、瀧澤が最後)すごいリーダーシップでまとめていてくれていたので、次はみんなでそこを埋めていきたいなと思います。(来年の目標)春までに体力付けて、体も一回り大きくして、できれば優勝なんですけど、インカレに向けて春秋リーグ上位目指してやっていきたいです」
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