寺田がラストフリーで準V! 有終の美飾る/全日本大学選手権

2016.11.14
 集大成で最高の結果を残した。大会2日目は3階級の試合が行われ、70㎏級の寺田靖也(農4=八千代松陰)が最後となるフリースタイルで2位に輝いた。前日の86㎏級の大山博貴主将(営4=仙台育英)の5位、97㎏級の二ノ宮寛斗(営1=岐南工)の3位に続く入賞でチームは団体順位を昨年の10位から8位に上げた。
 「4年間で今が一番強い」。最後の舞台、集中力はここ一番にさえていた。予備戦から準々決勝まで全てテクニカルフォール勝ちを決めると、準決勝の相手は昨年の天皇杯で逆転勝利を収めていた玉岡(福岡大)。2-0で前半を終了し、後半直後に同点に追い付かれるも「飛び込みがすごいくる選手なのでそこをひたすら守った」と守りの姿勢を貫いた。これが功を奏し、相手がスキを見せたところで積極的にタックル。体力勝負となった第2ピリオド後半で3回バックを取り、8-2で試合終了。くじ運の良さもあり、組み合わせが出た時点で目標にした決勝進出を有言実行した。決勝ではインカレ1位の藤波(山梨学大)に開始29秒でフォールを決められるも、後悔は「全くない」。昨年は入賞できなかった悔しさを胸に臨んだ今大会、自身の勝利で団体順位を上げられたことに一番の喜びを見せた。
 仲間がいたから、頑張れた。入学当初は同期6人の中で「一番弱かった」と振り返る寺田。それでも尻上がりに調子を上げ、全国の舞台で表彰台に上るまでに実力をつけた。支えとなった一人に主将の大山がいる。思い返せば、高校の引退試合で敗戦したのも当時同階級の大山だった。「大山よりいい成績を取ってやろうというモチベーションがいつの間にかできていた」。良きライバルとしてお互いを高め合ってきた4年間、試合に勝てば自分のことのように喜んだ。
 学生最後となった今大会に向けては、2人で毎日欠かさずスパーリングをしてきた。準決勝の第2ピリオド、試合中の寺田に「ここから守らないぞ!」。マットの外で叫ぶ大山の声が聞こえてきた。「それで取りにいけた。本当に大山のおかげだと思う」。チーム全体で目指してきた団体8位を達成した。今年の明治を作り上げた、強くて優しい主将と自他ともに厳しい副将。マット上の2人には最後まで笑顔が似合っていた。

 新たな時代が幕を開ける。試合後には代替わりをし、次期主将には本多正龍(営3=島原)が就任した。「来年の4年生は僕らよりも下に物を言える。きっと上手くやってくれると思う」(大山)と4年生たちは後輩たちに思いを託す。まず実戦の舞台となるのは12月初旬にある秋季新人戦と東日本学生オープン戦だ。「短時間でも内容のある練習ができるように仕上げていく、そういうチームにしていけと指示してある」(多賀恒雄副部長)。上位進出に向け、レスラーたちの戦いはこれからも続いていく。

[土屋あいり]

試合後のコメント
中出幹児監督

「結果は、表記のとおりであり、総合力においてはまだまだ上位校との開きがあり、さらに大学のトップを目指して競技力向上を図る必要がある。本大会をもって、4年生の役職を3年生に交代した。体育会は言うまでもなく最上級生の役割、特に主将のリーダーシップがチームに与える影響は大きい。その点、主将の大山は自ら率先して練習に励むとともに他の4年生をうまく活用しチームを明るい雰囲気を持っていってくれた。4年間の競技生活において競技成果を残せた選手もいれば怪我等で伸び悩んだ選手もいる。しかし4年間努力を継続してきたことは決して無駄ではない。社会人になっても大いにその実力を発揮できると期待してやまない。2020年東京オリンピックが開催されることから、更に勝利至上主義が加速していくことも予想されるが、日本オリンピック委員会は「人間力なくして競技力の向上なし」としている。大学の運動部においては、トップアスリートのみならず、学生の卒業後のキャリアについて責任がある。そのために知育、徳育、体育のバランスのとれた人間形成を図り社会に適応させることが必要である。今後も監督として、学生に対して目標を確立し努力を継続させるとともに、自ら考え自立した人間として社会で貢献できるよう育成してゆきたい」

多賀恒雄副部長
「(今大会を振り返って)まず、二ノ宮はどんな組み合わせだろうが3位以内には入るだろうと。寺田と大山はベスト8〜4ぐらいの選手だから組み合わせ次第で決勝、または1、2回戦敗退ということもあり得た。そんな中でよく頑張ってくれたと思う。(チームの底上げについて)そこが今のうちの一番の課題。8階級ある中の全階級は揃わない、結果残せるのが3、4階級かな。全部の階級で入賞できるような実力を付けてもらいたい。各々がベスト8までに入る力があれば、今回のような大会で団体の得点を取ることは簡単だからね。(今回は3年生の出場がありませんでしたが)やはり上級生が強い年はチームが強いからね。気合い入れて頑張ってもらいたい。(2年生の活躍は)奥田がちょっと情けなかったな。もっと上にいける選手だから。平嶋(礼智・文2=玉名工)はレスリング自体は悪くないんだけど、少し大人しすぎるというか相手に対しての威圧感が足りない。綺麗すぎるよね。もうちょっと荒々しさを身に付けてほしい。仲田(滉・法2=花咲徳栄)はね、攻め方としては悪くない。タックル主体のレスリングができるようになってきてるから。でも、力とタックルに入った後の処理、粘りがまだ足りない。でも、あれは伸びますよ。米川(優人・農2=八千代松蔭)はもう少し力を付けなきゃね。重量級はポイントを取りづらいから。試合を有利に進めるような体力を付けなきゃいけない。あの階級にしては小さいのはあるけど、不利な試合の進め方をしているとは感じた。(来年の主将は)本多だね。(求めることは)やっぱり厳しさかね。質の高い練習をすれば練習時間は短くても全然問題ないけど、高い質の練習ができなければ量でカバーするしかない。最初は練習時間が長くてもしょうがないけど、短時間でも内容のある練習ができるように仕上げていく、そういうチームにしていけと指示してある。(今年の4年生は)本当に頑張っていたよ。喜多(雄介・政経4=三井)は得点には絡まなかったけど、結果的にそうなっただけで得点に絡むだけの力はあった。リーグ戦の時に痛めた膝の影響があったけど、頑張ってくれた。(12月の秋季新人戦、そして同日に行われるオープン戦で選手たちに期待することは)やっぱり3年生がどういう戦いをするかだよね。4年生は引退して試合に出るかどうかも分からないけど。1、2年生は良い結果を残して来年に向けて良いスタートを切れるように。勝って結果を残す、そういう経験をしてもらいたい」

安西信昌コーチ
「(寺田は)決勝は負けたけど、しっかり勝つためのレスリングができていたと思う。本人が一番感じてるんじゃないかな。(2年生の二人について)仲田は段々と成長してきているので、もっと経験を積んで勝てるようになってほしい。奥田はポテンシャルが高いんで、しっかりそれを生かせるように。(チームとしては団体8位ですが)7位に青学がいて来年からはリーグ戦で当たるので、そういうところで来年の春も競るのかなというふうな気持ちで見ていた。(新体制に移行しますが、これからのチームに求めることは)勝ちを追い求め続けることは当たり前だけど、勝つために何をすべきかを真っ先に考えられるチームになってほしい。この試合を見ても分かるように、今年のチームは上級生がしっかり引っ張っていけるチームだったので、そういう部分のおかげで後輩たちもレスリングはもちろん寮生活がしやすかったと思うので、上級生が『何をすべきか』を後輩に態度で示せるようになってほしい。(チーム力とは)拮抗(きっこう)した試合で『競り勝てる』ように、取り合いに勝てるようにするにはやはりモチベーションが必要。同じ目標を持って戦っていかないとなかなかチームとしての意識を持つことは難しいので、日頃の練習から何を目標に向かっていくかということを意識してほしい。(4年生に向けて)まずは『お疲れ様でした』。今年の4年生は稀に見る優しさで、良い意味でね。先輩が後輩の面倒をきちんと見て、後輩は先輩をしっかりと敬っていたし、本当に良い代だったと思う。いろんな気持ちを込めて『お疲れ様でした』の一言に尽きる。(3年生に対して)上の学年になって初めて分かることも、成長していくこともたくさんある。今の4年生もそうだったしね。3年生が4年生になったときに、しっかり4年生として成長して戦っていってくれればと思う」

寺田
「最高です、もう最後。くじ引いて多胡島くん(早大)と藤波くんと逆の山にいったって聞いた瞬間に決勝行くしかないなと思った。(運も実力のうち)ちょこっと(笑)。(準々決勝まで全てテクニカルフォール)完全に気持ちだった。天皇杯はグレコで出ることが決まって、フリー最後の試合だからなるべく多くしたいという気持ちで。今日は色々さえてた。4年間で今が一番強い。攻撃はいつも通りだったけど、守りが安定していたのが大きかったし、守りが今までで一番良かったからここまで来れたと思う。いつにも増して相手に向き合えたので、集中力の違いかと。(準決勝)去年の天皇杯の1回戦でやってて、ラスト10秒で逆転したのを覚えてて。とりあえず飛び込みがすごいくる選手なのでそこをひたすら守って、多賀先生が『我慢した後』ってよく言うんですけど、とりあえずまずは徹底的に我慢して守ろうと思っていた。それで相手の来た後を狙って攻める感じだった。(第2ピリオドで)相手が完全にバテて、集中力が切れていたので僕がそこを詰められたと思う。(決勝は)もうちょっと長生きしようと思ってたけど、一瞬で。彼はもう今年3回目なんですけど、無理っす(笑)。たぶん東京オリンピックに出るので、彼は。自分が2番になったことでずっと目標にしていた団体8番に入れたことが本当にうれしくて、去年は僕が0点のせいで8番以内に入れなかったので自分の勝ちで8番を決められたのがすごいうれしい。(後悔は)全くない。(今大会に向けてやってきたこと)特にはないけど、上位進出を狙って大山と毎日スパーリングをしてた。ここ2週間くらいは大山とは絶対一本やるようにはしてた。やっぱり大山とやると試合みたいな感じで集中できていたので、それがやっぱり準決勝での集中力につながった。準決勝に『ここから守らないぞ!』っていう大山の声が聞こえて。2ー2になったところからで、それで取りにいけた。本当に大山のおかげだと思う。(現役最後の練習だった)僕はそんなに気にしてなかったけど、大山が『ラストだよ、これで最後だよ』って言っていて。やっぱりそれに影響されて、最後なんだなって自覚が沸いてきた。(一番苦しかった時期は)僕はない。成績的にも尻上がりに伸びていて、あんまりコケることなくいいレスリング生活だったと思う。最初入学して6人の中で一番弱かった。50kgの悟士(金子・法4=館林)とかとやっても負けちゃうんじゃないなぐらいの実力だった。1年生は1回戦を勝てたことがうれしくて、2年生は新人戦で春秋決勝行けたのがすごいうれしくて、3年はインカレの3番と全グレの2番、最後は内閣で2番…いい4年間だった(笑)。(大山主将の存在は)高校の引退試合で大山に負けて、大学入って大山がいて。こいつに負けたくないとずっと言っていた。大山よりいい成績を取ってやろうというモチベーションがいつの間にかできていた。やっぱりあいつがキャプテンになった時は『自分らの代でリーグ戦8番、内閣も8番以内に入ろう』って結構真剣な目で言っていたのが印象深かった。自分はそれを支えようと思ってやっていた。(当初のチームと比べて)全体的にレベルが上がってきた。確実に去年よりは強いメンバーになっていると思う。取り組む姿勢がやっぱり大山が真剣にやってるからやらなきゃみたいなムードが練習中もあった。あいつがキャプテンをやったのはでかかったと思う。1年間キャプテンお疲れ様と言いたい。大山が優しくて強いキャプテンだから僕が好き勝手に後輩に言ったりしても、ちゃんとフォローしてくれてチームが成り立っていた。(学べたことは)同期の大切さ。苦しい時も大山なり、喜多なり、中村の試合中の声かけとか、練習中もあいつらの声が聞けて頑張れていた。一人じゃここまでは伸びれなかった。明治で良かったと思えたのは最初から最後までで、他の大学だったら1年の頃から内閣、全グレは出れなかっただろうし、経験が積めてなかったら強くなかったと思う。ずっと明治で良かったなと思っている。(中量級の底上げをやってきた)やっぱり気持ちの面を、明治は気持ち強い選手が全然いないので。ラストの苦しいところで一ついけるか、一つ守れるかというのを中量級にはやらせていた。さっきの代替わりで本多が抱負で8番を目指すって言ってたんで、厳しい戦いにはなると思うけど青学に何としても勝ってほしいし、その青学を倒すカギに65、70、74の中量級だと思うので頑張ってほしい。特に今の2年生には頑張ってほしいなって思ってて、奥田、永井(基生・営2=八千代松陰)、仲田、平嶋、米川…たぶん5人がレギュラー獲ると思うのでしっかりやってほしい。僕らが成し遂げらなかった7番を、結構苦しくなるとは思うけど目指していってほしい」