序盤出遅れまさかの11位 5年ぶりにシード権落とす/全日本大学駅伝

2016.11.06
 三大駅伝の2戦目・全日本大学駅伝はよもやの11位に終わった。1区を任された阿部弘輝(政経1=学校法人石川)が17位と大きく出遅れると、2区江頭賢太郎(商4=浜松日体)も区間14位と不発。勝負の命運を握る前半2区間終了時で16位と低迷した。その後、5区中島大就(商1=世羅)が区間3位、6区射場雄太朗主将(政経4=大阪府私立明星)が区間4位とつなぎの区間で結果を出すも、大きく順位を上げるまでには至らず。エース格の坂口裕之(政経2=諫早)を欠いたことも響き、4年間守り抜いたシード権を失った。

 予想だにしない不振に終わった。距離が2番目に長く、トップランナーが顔をそろえる1区にルーキーの阿部を抜てき。序盤はスローペースで流れ、阿部は積極的に前へ位置付けた。だが、7.3km地点の給水ポイントで服部(東洋大)が仕掛けると、途端に集団がペースアップ。給水を失敗した阿部は反応し切れず、ズルズルとポジションは後方に。「急に足が動かなくなった」(阿部)と狂ったリズムは元には戻らず。中継点ではトップと1分40秒差の17位にまで落ちた。襷を受けた江頭も単独走となったこともあり、本来の走りが見られない。区間14位の凡走で、岐阜経大をかわすだけにとどまり、トップと3分12秒差の16位で襷リレー。序盤に主導権を握ることが主流となった大学駅伝において、この出遅れはあまりにも大きかった。後半区間は徐々に盛り返すも、時既に遅し。2008年以来、8年ぶりの2ケタ順位となる11位に沈んだ。

 チームが沈む中、期待のルーキーがその片りんを見せた。5区の中島は前を行く国学院大と1分56秒差、後ろの国士大と41秒差と前後に選手が見えないペースのつかみづらい単独走でスタート。しかし、全国高校駅伝の連覇を経験している男は崩れなかった。「緊張もしたが、1年生なので思い切り行きたいと思った」(中島)と積極的にレースを進め、順位こそ上げられなかったが、区間3位の好走を見せた。4区まで続いた2ケタの区間順位を止め、悪い流れを変えた。憧れの明大のユニフォームを着て臨んだ駅伝デビュー戦は上々の結果で終えた。

 主将がルーキーの力走に応えた。射場はこの日が3大駅伝デビュー戦。中島から襷を受けると、順位が低迷する中「自分は最上級生でありキャプテンであるので、もう一度籔下と磯口にいい流れを渡すことが自分としての役割だと思った」(射場)。序盤はゆっくり入り、徐々にペースアップしていく落ち着きのある走りを見せた。淡々と自分のペースを刻み、区間4位と快走。4年間地道に積んできた努力が、この大舞台で花開いた。「よく走ったし、冷静に対応した」と山本豪コーチも評価。意地の好走で存在感を見せた。

 惨敗に下を向いている暇はない。決戦の箱根まで既に2カ月を切っている。射場、阿部、中島に加え、3区の三輪軌道(理工1=愛知)、7区の磯口晋平(商3=西脇工)と5人もの選手が新たに駅伝を経験できたことは大きい。今回は吉田楓(営4=東海大山形)や坂口といった主力を欠いたことや、メンバー全員が20kmを走った箱根駅伝予選会から中3週だったことなど、不安材料も多かった。それでも「(崩れた時に)最低限の走りをすることが大事なところ」と西弘美駅伝監督は粘りの走りに奮起を促す。かつてない逆境に立たされたが、チーム一丸で箱根路での復活に懸ける。

[加藤真人]

試合後のコメント
西駅伝監督

「惨敗という結果ですけど、あと2ヶ月弱やることをしっかりやって、箱根駅伝ではシード権を取れるように頑張りたいと思います。物足りなさというか、全体的には40点くらい。こういったところでいかに最小限の走りをするというのが大事なところです。悪い時はどん底になってしまうのではなくね。1区については区間17位、2区については区間14位。ここで勝負あり、という感じになってしまいました。だからこういったことにならないように最低限の走りができるようにこれからの課題として箱根まで持っていきたいと思います。(1区、2区のブレーキ)原因が分かれば苦労しないです。調子がいいだけに飲まれてしまったのか。足が痛いというわけでもないし体調が悪いというわけでもないし。いい状態の中でスタートしたにも関わらず、こういう結果になってしまいました。(1番の課題は)これからちょっと考えなければいけないです。予選会が終わって3週間でのこの大会、あと50何日間の中で、どう立て直していくか。新しいことをやると選手たちも戸惑ってしまうので、今まで通りやれることをやることが必要になります。(中島の区間3位)5、6、7区っていうのはつなぎ区間ですからそこで、という計算だったんですけど、前半大きく出遅れて前とも空いてしまった中で区間3位、区間4位(射場)で走れました。でもその勢いでいかなきゃいけないのに、磯口は区間10位になってしまった。駅伝の中で1番大切な流れを断ち切ってしまいましたよね。それはもう箱根駅伝ではそういったことがないようにしていきたいと思います」

山本コーチ
「駅伝はスタートで出遅れたら苦戦すると言っていたのだが、そうなってしまいました。結果的にはすごく残念なんだけど、その中でも後半区間の選手はよく頑張ってくれました。前も何も見えないし、本当に走りづらい状況で、よく頑張ったと思います。1区の阿部に関しては、1年生で予選会で20km経験したあとに、重要区間の1区というのは身体的にもきつかったのかなと思います。駅伝はみんなでやるものだし、阿部一人を責めるわけにはいかないです。(当初のレースプランは)とにかく1区の出遅れは避けたいから、そこで阿部を起用しました。なんとかそこで僅差で行けていれば、アンカーはヤブ(籔下)だしなんとかなるかなという予想ではいました。(阿部について)今後はエースになってほしい存在。本人もわかっていると思うけど、日々の練習をしっかりやっていくというのが、一番の改善策かなと思います。(江頭について)もう少し行けるかなという気持ちはあったけれど、襷を貰う位置が後ろすぎて、走りづらい状況ではあったかなと思います。周りの選手の流れに乗って行けたら、大丈夫だろうと思っていたが、それがなかなか叶いませんでした。(中島について)単独走で区間3位になれたのは価値があります。春のシーズンはなかなかうまくいかなかったけど、最近は練習もできてきて、本来の状態に戻ってきていますが、本来は重要区間を走らなければいけない存在です。(射場について)よく走ったし、冷静に対応したと思います。自分の体調も分かっているし、自分の走りをしっかりしてくれました。(5人駅伝デビューの選手を入れた)1回ビッグレースを経験するのとしないのでは違うと思うので、そういった面では彼らにとってはいい経験になったと思います。(箱根までのチーム)今回ダメだったからまた目新しいことをやるかと言ったらそれは違くて、今やっていることの精度を上げていくということが、結果に繋がります」

1区 阿部
「全部自分のせいでシード権を落としてしまったので、自分が本来の力を出ていればシード権はしっかり取れたのに本当に自分のせいで負けたと自分の中で思っています。それくらい自分にプレッシャーを当てないと箱根では勝てないと思うので、本当に先輩たちには申し訳ないことをしました。調子も悪くなかったからいけると思っていたけど、自分でも走れなかった原因が分からなかったです。中盤まで先頭に付いていけて余裕もあったけど、急に足が動かなくなりました。なんかよく分からない結果で結果的にすごいブレーキをしてしまいました。悔しいって思いもそうだけど、なんでこんな走れないのかって気持ちが強いです。これでもし箱根でも同じ失敗をしたら全然変われていないってことになるので、この大会でこの失敗は終わりにして次からしっかりチームに貢献したいです。実力的には絶対いけたと思っていたけど、籔下さんが11位でゴールした時に本当に自分の中で情けなくなりました。『何やってんだろう俺』って。せっかく主要区間を任せてもらったのに、何も期待に応えられず、順位も下げてしまい、シード落ちもさせたってことは周りからの自分の評価もかなり下がっていると思います。(1区という主要区間を任された時の気持ち)1区でいけるという自信もあったので、それほど緊張もせずにいつも通りのレースをすれば自ずと結果が付いてくると思っていました。最低でも昨年の坂口さんくらいは走れって言われていました。次こそはどの区間を任されてもお前に任せてよかったって言われるように力をつけていきたいです」

3区 三輪
「後ろから追いあげるという形だったのですが、西さんからはオーバーペースにならず自分のペースを守ってしっかり前を追っていけという指示だったので、自分のペースを守る走りはできたと思います。ただ、前を追っていく姿勢はあったのですが、前が見えなくて辛い部分がありました。区間で見ると11位だったんですけど、区間3位を狙っていたのでそこは悔しいです。(3人抜いたが)あまり強いチームではなかったので。やはり3位を取りたかったです。向かい風が吹いていて、自分は向かい風が強いのが苦手なのでちょっと苦しかったです。(初めての大学駅伝)特に緊張とかはなかったです。いつも通りのアップをしていつも通りの走りをするだけでした。(メンバーに選ばれて)前から行くかもしれないということは言われていたので、しっかり行く気持ちで準備していました。(当日の調子)良かったです。ただ自分の思った走りはできなかったです。(具体的には)向かい風が苦手というのもそうだったんですが、3区はアップダウンが激しいコースなので、しっかりクロスカントリーとか、起伏のあるコースを走って、アップダウンに対応できるようにすることです。(来年は予選会からだが)自分としてはそんなに悲観していません。逆に、1万mを走れるということをプラスに考えてしっかりと調整していきたいです。(箱根駅伝に向けての調整)箱根では各区間最低でも20km走るので、朝からしっかり距離を踏んでいきたいです。(意気込み)まずは10人のメンバーに入って、区間1ケタの順位で走れるように、これから練習を頑張っていきたいと思います」

4区 末次慶太(理工3=山口県立西京高)
「自分の力のなさ。前が全然見えない位置で襷をもらって、自分の一人になってからの弱さというのか、単独走でまだ自分が力を発揮できない状態にいるというのが、しっかりとこのレースで分かった気がします。(本日のレースプラン)予想としては前が見えるという位置というか、遅くとも7、8番では来るというイメージで臨んでいて、目標タイムとしては41分30くらいで走れると思っていたのですが、だいぶそれより遅い感じになってしまいました。(結果について)このままだと箱根では通用しないと痛感したというか、他大の選手も単独走で自分より速く走っている人もたくさんいるので、そういう単独走の意識というのは箱根を走る上で絶対必要になってくると思うので、これからそういう力もつけていけたらいいなと思いました。3年になってチームをけん引しなければならない立場になっていると思うし、1区阿部が出遅れたのですが、そういうのも阿部にそういう重要区間を走らせている自分たちの責任というかがあると思うので、箱根では下級生が安心して走れる状況を作っていきたいと思います。(箱根にむけて)まずは距離に慣れる。箱根は全区間20km以上あるので、そうなってくると、全日本の自分の走りでは同じことを繰り返してしまうので、今年のチームの5位以内というのを掲げているので最低でも区間5番以内では走れている力というのが、そうですね。これから各自練習をやるにしても距離を延ばすとか、そういうことを意識していきたいです」 

5区 中島
「駅伝の初デビューということで緊張もしたのですが、1年生なので思い切りいきたいと思っていました。ただ、実際走ってみて納得のいく走りではなかったです。5区では区間賞をとって流れを変えるというのが自分の役目だったんですけどできず、コンディションも良くなかったです。アップの時に足の重さを感じてちょっと不安だなと思っていたらやはり1キロに入ったら重かったです。今日やばいなと思ったのですがここで諦めていたら試合になりません。常に区間賞狙うというつもりで走りました。(区間3位)1区の3位はまあ合格かなという感じだがつなぎの5区で仕事を果たすには区間賞だったのかなと思います。この区は前後に誰もおらずこの位置で襷をもらうのは自分的にも苦しかったです。少しでも前が見えていたら相手を追えましたが、ペース的に中だるみをしてしまいました。力があればどこでも区間賞取れるのでしっかり反省したいです。(気持ち)。チームとしての悪い順位だったんですけど結果なので仕方ないです。それを自分が左右されていたら選手として負けでチームが持ってきた結果なら受け止めて自分の走りをしたいなと思っていたので悪い順位で回ってきたことに関してはとくに響かなかったです。ぼくは前が見えたら走れるというタイプなので前が見えないのだけは本当に辛かったです。ただ、後半になってくると仕方ないことなのでそんなこと考えずにどうやったら粘れるかなどいろいろ考えて腕を振ったりしました。次渡す人への責任感もあります。後半のラップの方が早いと思います。自分的には前半は追い込めていなかったです。ここでしっかり動かせていたなら区間賞も取れました。(これから)箱根では大事な区間を任せられるような力をつけてしっかり1年生として果敢に攻めて行っていい結果を残し、明大に貢献できたらと思います」

6区 射場
「緊張はしていなかったです。予選会のときの方が緊張していました。この2週間、体の状態が非常に調子のいい感じでコンディションを上げてくることができたので、スタート前の不安はなかったです。 (13位で襷をもらって)諦めてはいけない気持ちはあった。よしいくぞ!とはなったけど1キロ2キロは慎重に入ろうと。2キロ以降は非常にいいリズムはできていたので中間地点まではイーブンでいって、中間すぎ給水受けてからはギアをいれようと、自分で組み立てることができました。 (主将として)流れを変えるのはつなぎ区間で、自分が最上級生でキャプテンでもあるがそこでもう一度籔下と磯口にいい流れを渡すことが自分としての役割で、今日きていないBチームの選手たちにも刺激を与えられるレースをしたいと思っていました。(2桁順位は8年ぶり)今年はやはりエースがいないという中で、ひとつエースが欠けてしまうと去年のときと変わらない、チームの弱点としてあります。箱根に向けては10人が欠けることなくベストなレースをしないと、10位には遠いと思います。 (箱根までチームとしてはどういう期間に)残り50日くらい、取りこぼしのないように、予選会のときもそうだったが箱根も本戦までに万全な状態で全員がスタートラインに襷を受け取る状態にするということを改めてみんなに投げかけながら一人一人が高い意識を持ってやっていきたいです。(個人としては)僕は最初で引退レースになるのでいろいろ重なって、もちろんキャプテンとしてもチームを引っ張っていく走りを最後にしないといけないし、競技生活の集大成として今までで一番いい走りをしたいと思います」

7区 磯口
「前半ちょっと突っ込み過ぎて、後半タレてしまったけど、この経験を生かして箱根で頑張りたいです。3日前くらいまで自分が出るか三輪が出るか分からなかったけど、西さんが信用して使ってくれたので期待には応えたかったです。レース後は『お前の区間一番弱いんだから区間3番には入んなきゃ』って怒られました。緊張は意外としなかったけど、結果は全然納得いくものではないです。予選会の方が一発目だったので、全然緊張しました。前の2人が流れすごい作ってくれたのに、自分のところで途絶えさせてしまいました。日体に追い付こうと思っていたけど、向こうもペースが速くて追いつけませんでした。1人抜いたけど、あれは3秒くらいしか差がなかったし、さすがに負けていられませんでした。流れを作れるように力をつけていかなきゃいけません。(序盤の流れは悪かったが)まずチーム状況的に1年生に任せなきゃいけないことが上級生として情けないです。だから、僕たちは阿部を責めることは決してできないです。(どういうレースプランで臨んだか)前との差があったので、本当に詰めなきゃいけないなって良い位置で籔下さんにつなげたかったけど、気持ちが高ぶり過ぎました。そこからの登り下りでまたペースが落ちてしまって、悪循環にはいってしまい全然実力が足りません。後半あのペースを維持できれば区間上位には確実に入っていたので、箱根で距離に対応するためにももっと練習していきたいです。(箱根に向けて )箱根がこの結果でもシード落とすことになるので、結果の振るわなかった3年生をもっと底上げして1年生の勢いとともに上を目指していきたいです」

8区 籔下響大(営4=須磨学園)
「駅伝は初戦ということで、予選会からの流れとしてもチーム状況は良かったんですが、阿部が出遅れたところでその悪い流れを、今までだったら途中で誰かがもう一回上位に食い込むという走りができていたが、その走りをする人が今の明治に足りないところだと思いました。シード権は狙っていたし取るべきだと思っていたが、取れなかったことよりもその方が課題だと思います。ゲームを作れる、試合の流れを作れる選手がまだいないとすごく感じました。そういうのを僕であったり阿部であったり江頭がしていかないとダメだが、それをしっかり発揮できなかった試合でした。 (目標は)中間点までは29分20後半くらいで、59分30秒切りを目標にしてたのでいい流れだったが、それからダメでした。そこが結構課題だと感じています。(風も?)そうですね。17キロくらいまではリズムよく走れていたんですけどラスト3キロくらいから向かい風が強くて、プラス登りで、タイムが落ちてしまいました。 (数少ない全日本経験者としては)みんなやっぱり初めてということもあって緊張してたと思うが、逆にそのほうが怖さを知れずに挑めるかなと思っていて、予選会が終わってから勢いもあったのでいいかなと思っていたがちょっと悪く出ちゃったかなという感じです。 (箱根までの過ごし方)最後の試合として、自分自身去年箱根で失敗していろんな人に迷惑をかけて、でもいろんな人が支えてくれて、なのでやっぱり恩返しのできる走りがしたいです。後輩にしっかりシード権を取って残していきたいので、悔いのないあと二ヶ月を過ごしたいです」