
小川連覇達成! 学生柔道界の絶対王者に/全日本学生体重別選手権
この男は誰にも止められなかった。団体戦を含めた学生大会ではいまだ無敗の小川。この日も順調に勝ち上がり、2年連続で決勝に駒を進めた。相手は今年のアジア選手権で世界の猛者たちを打ち破り優勝した影浦(東海大)。昨年の全日本ジュニア体重別選手権でも指導差での勝利と苦戦した相手だ。この日もポイントが奪えず楽な展開にはならなかったが「思っていたような試合展開ができた」(小川)と積極的に攻める小川の柔道を貫き、相手に指導を取らせた。その後は、組み手で常に奥襟を持ち、反撃の余地を与えずに試合を進める。終盤は動きが鈍った影浦に対し「自分でもわかるくらいついてきていると思う」と小川自身も成長を感じるスタミナ面で差を見せつけ逃げ切った。相手に1ポイントも許さず大会を制し、絶対王者の真価を証明。「2連覇したことは今後頼もしく思っている」と猿渡琢海監督(平11営卒)も教え子の成長に目を細めた。今後はシニアとの戦いに挑戦する。8日より行われる国体にも出場し、今大会を制した勢いそのままにチームを優勝に導く。「世界選手権の代表になることを目標に頑張りたい」(小川)と見据える先は世界だ。学生の枠を超えた戦いを見せる小川がその名を世界にとどろかせる日は近い。
講道館杯行きをつかみ取ったが課題を残した。川田は3回戦までの全試合で指導を3つ以上取らせた。試合運びのうまさを見せ、自身初の全日本での入賞、講道館杯出場を決めた。だが、3回戦までで奪ったポイントは一つもなく「相手が下のクラスだと固くなってしまって全然技が出せなかった」(川田)と反省を口にした。準々決勝では思い切って攻めていったが、今大会を制したウルフ(東海大)に完敗。次のステージへの課題も残した。多くのものを得た今大会を糧に川田はさらに進化する。
古豪・明大の復活への戦いは続く。今月29日からは現メンバーで戦う最後の団体戦である全日本学生体重別選手権が尼崎で行われる。昨年は初戦で関西の雄・天理大を破るも、準決勝で東海大に敗れ、3位に終わった。同大会の優勝は海老沼匡選手(平24商卒・現パーク24)、上川大樹選手(平24営卒・京葉ガス)の2人のオリンピアンを擁した2008年から遠ざかっている。橋口祐葵主将(政経4=延岡学園)や野々内悠真(商3=崇徳)といった今大会で不本意に終わった選手の復活が命運を握る。また、個人戦では11月に講道館杯全日本体重別選手権が控え、国内トップクラスの選手に挑む。世界選手権の選考大会でもあり、優勝すれば世界への道が広がる。勝負の秋はこれからだ。
[加藤真人]
試合後のコメント
猿渡監督(1日目)
「西園は初出場で、1回戦で勝つには勝ったんだけど元気がなくて西園の良さが出ていなかったので少し大声を出して指摘した。1回戦という部分を油断して戦っていたところがあったのでもっとアグレッシブに戦うよう注意した。2回戦は昨年の学生王者ということで、そのままの戦い方をすればあっさりと負けてしまうというところがあったので、負けて当たり前じゃないということを伝えた。最初に技ありを取られてしまったけど、その後の戦い方は良かったし、今後明大柔道部の73kg級を背負って立つような選手になってもらいたい。水野は慎重姿勢で危なげない戦い方をしているなという印象で、個人戦ということで本人も結果が欲しかったと思うし、そういう戦い方で良かったとは思う。負けた田川選手は水野の一つ下の選手ではあるけれど、実力がある選手だしそこを一つ決勝戦だと思ってやってきなさいと伝えたが、もつれたところで有効を取られてしまった。一つの組み手のミスがあったので、そこを修正することを伝えて、戦い方自体は良かったと思うし、そこに技術が一つ足りなかったというところだと思う。橋口に関しては東京大会で優勝して、この全日本学生でタイトルを取っていないので本人も優勝したい大会の一つだった。初戦というところで体の硬さがあって、今練習から取り組んでいる柔道が出せなかった。この先は尼崎もあるし、講道館杯もあるので1回戦から自分の柔道が出せる準備をしなくてはいけないし、一番は精神面が橋口に足りていないところ。5分間をしっかりと集中して戦える力を付けないと、一つの油断で優位な場面を与えてしまう。そこは練習の時から集中力を高めた状態でやっていけるような環境づくり、そしてアドバイスをしながらやっていきたい。明日は小川が2連覇を達成できる実力を持っているので小川に優勝を期待する反面、同じ階級の田中、名垣浦は成長しているのでね。田中は東京大会2年連続2位という悔しさを跳ね返して戦ってもらいたいし、名垣浦に関しても最近強くなってきているなと感じるし、メンタルの部分だけだと思うので自分がどれだけ勝ちたいんだということを全面に出して戦ってもらいたい。順調にいけば田中と名垣浦が準決勝で当たるし、勝った方が決勝で小川とやる組み合わせになっているので頑張ってもらいたいなと思う。100kgも3人が東京でベスト4に入っているので、自分の柔道、勝ちたい気持ちを出せたやつが上にいけると思うので、優勝してもらいたい。90kgは野々内が昨年3位に入っているので、少し慎重な戦い方をするのかなと思ったけど、思い切りの良さが強さの一つであるので試合前にはそれを伝えたいと思うし、神鳥はこの間の全日本ジュニアで優勝して自信も付いたと思うけど、ジュニアレベルと学生レベルはまた別だからこのレベルでどれだけ通用するのかを確かめてもらいたいし、気持ちが強いタイプの選手なので、気持ちが高ぶりすぎて空回りしないようにアドバイスをしながら明日戦っていきたいと思います」
猿渡監督(2日目)
「小川が優勝したことは率直にうれしいし、2連覇したことは今後頼もしく思っている。2連覇したことで学生レベルを抜け出して次のシニアで戦っていかないといけないので、今日の内容だとまだまだ厳しい戦いになってくる。相手を投げて勝つ柔道を教えていきたい。第一シードで有力選手も欠場してことで、小川に有利な展開になったけどその中でも小川の柔道を貫いた結果として優勝がついてきたので、それはそれで満足しています。試合前は全部出し切れと伝えた。今年が最後だと考えていたし、世界を目指していかないといけないので、今までやってきた成果を出し切ってやってこいと声をかけました。影浦は全日本ジュニアでも練習でもやっているので特別な対策はしていない。勝つだろうなと思っていたので、いかに勝ちやすい戦い方をさせるかを伝えた。試合前は田中と小川は練習しているし、影浦は田中と指導1つ差、小川と影浦も指導1つ差でこの3人はほとんど差がない。組み手の形がしっかりしている小川が有利かなと。小川自身も自信を持って試合で来たと思うし、これでさらあに自信もついてレベルアップすると思う。次は国体、尼崎前講道館杯前で社会人と試合できるいい機会なので、緊張もせずに試合できる場なので実力試しにはいい機会。尼崎では去年の大黒柱の上田を越えられるような戦いぶりを見せてほしい。(この1年間の成長点)走るのが速くなった。総合的にレベルアップしている。精神的な部分。俺が一番強いというモチベーションが自信につながっていると思う。その中でこれから技、投げ方を伸ばしていかないといけないと思う。(他の選手たちの戦いぶり)三村と安田に関してはまず負ける相手ではないというところに情けなさを感じている。川田はウルフとやった時に思い切りの良さが出ていたけど、初戦から体が固まった状態でゴールデンスコアにいくまでいった。そこまでいかなくても川田が持っている思い切りの良さ、技を出せれば勝てたと思う。全体的に勝ち方、戦い方を知らない。自分たちで考えた勝ち方を確認しながら教えていきたい。神鳥はまだ1年生で思い切り良く試合をしていたと思う。今日負けたチャンピオンの向ともほとんど差がないレベル。技ありとられてから有効取り返して指導も3つ取ってという内容的には勝ってもおかしくない。気持ちは強いので、ここでの経験を生かして次の大会で頑張ってほしい。田中は指導1つ差が優勝するかしないかの分かれ目だった。やはり戦い方をしっかり指導していきたいと思う。名垣浦も気持ちの弱さが出てしまっていたので、練習では強くて小川を投げたりもしているのに試合になるとそれが出せていない。練習方法をもう一度考えながら強さを出せるように頑張っていきたい。(体重別団体へ向けて)この時期学校も始まって時間も制限されるので、効率のいい練習を考えながらやっていきたと思う」
水野隆介(営3=愛知県私立大成)
「(ベスト16という結果について)情けなかった。講道館杯こそ、決勝で橋口さんと戦いたい。(橋口さんが負けてしまった後での試合でしたが)橋口さんよりも上に行きたいと思った。(1、2試合目は安定した試合運びだったが)体が動かないなりには、いい試合運びができたと思う。(敗退してしまった3試合目は)自分の柔道を貫くことを意識した。また、相手が自分より上だということが分かっていたので、チャレンジャー精神で臨んだが、相手にペースを握られてしまった状態で、試合が終わってしまった。自分のペースになるまで我慢できなかったのが反省点。(反省点は)自分のペースに持って行けなかったことと組手。試合中に組み手を改善できなかったことは、これからの課題になった。(これからの目標は)尼崎と講道館杯で結果を残すこと」
小川
「結果については満足している。本当は出るのに迷ったけど監督と話して、この先勝つためには学生の試合に出た方がいいと話して出ることに決めました。今日の内容は、やっぱり簡単に試合を考えていたところがあった。残り何秒で指導取られるとか。そういった点でこの先の試合に向けていい収穫はあった。決勝戦は積極的に攻めるようにしていた。準決勝も組み勝ってはいたけどそこからの一本がないので、今後の練習でやっていきたい。組み手、技、体力は自分でもわかるくらいついてきていると思う。高校時代の先生は精神的な部分を教えてくれる先生だったので、大学に入ってからはそれにプラス柔道の技術、組み手、技の入りを学んで上達したと思う。組み手については組み負けることは少なくなった。(父からのアドバイス)最後は自分が絶対勝つんだという気持ちでいけと。(体重の増減)増えて今は140㎏くらい。入学当初は132㎏。(リオ五輪)同じ日本人選手が五輪で結果を残したことは刺激にはなりました。この先、国体、団体戦と講道館杯と続くので、また力をつけて挑みたい世界選手権争いになってくると思うので、そこに自分が食い込んで原澤選手に勝って世界選手権の代表になることを目標に頑張りたい。リオが終わってから勝負だと思っているので頑張りたい」
川田
「(今日の試合の感想)今日はとりあえずベスト8に進むことを目標にしていたので、講道館杯につながる結果になったと思う。(勝利した試合全てが指導差でしたが)相手が下のクラスだと固くなってしまって全然技が出せなかった。そこは練習していきたい。(講道館杯出場をかけた3回戦では延長戦にもつれたが)次戦がウルフ選手との対戦というのが分かっていたので、対戦したいという気持ちで勝利しました。(ウルフ選手との試合の敗因)パワーと技と試合展開の上手さに負けました。(シニア大会である講道館杯の出場権を得ましたが)普段から実業団の選手の方などと練習をしているので、練習通りに試合ができるように頑張りたい。(同級生の田中選手、小川選手も講道館杯に出場するが)小川選手は自分と田中より頭一つ抜けているので、追いつかないといけない。(これから行われる体重別団体戦、講道館杯への意気込み)体重別団体はまだ出場するかわからないので、とりあえず講道館杯はベスト8以上の結果を出したい。できれば、優勝してグランドスラム東京に出場したい」
西園航太(法1=長崎日大)
「初めての学生の全国大会だったが、東京予選とは違い、差を見せつけられたというか、差を感じました。(初戦のプランは)1回戦だったんで本当緊張してて、最初押されてたんですけど、ポイントリードされてから攻めることができて、ポイントも取れたし、指導も取れたのかなと思う。(スイッチが入った場面)残り1分になってから監督に「攻めろ」と言われて、やっと攻めるスイッチが入って、返されてもいいから攻めに行こうという気持ちになりました。(全国大会で1勝を挙げられたことについて)そこに関してはポジティブに捉えて、勝てたことについては次に活かしていきたいと思う。(続く試合では実力者の福岡(日大)が相手だったが)まず組んで、先に攻めるというのを意識してやっていったが、組手の差とか相手の勢いに押されて下がってしまったので、ポイント取られてしまって負けたかなと思う。(ポイントを取られてからの心境の変化)かつぎにいって積極的に攻めて行こうと思ったが、やっぱり全然自分の柔道ができてなくて中途半端だったのがダメだった気がします。(差を感じた部分)組み手とやっぱり気持ちも差が出ていた気がする。(明治に入ってからのこれまで)入って来た時よりも実力がついたと思うし、全国でも一つ勝てたので、来年はもう少し勝てるようにしていきたい。(今後の目標)東京学生で優勝を目指して、全国大会でベスト8以上に入って、講道館杯とかに出られるようになりたい」
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